元国有企業の幹部だったおじさんの家に招待されている。
みやげの酒はいたく感激したらしく、早速自分で按配をしはじめた。
同行の女性Zは、どうやら青菜に僕の好物である豆苗ともやし(豆芽)のハーフ&ハーフをニンニク風味で作るつもりらしい。芳しいにおいが漂ってくる。
持参の打包も、いやこんな料理はとんと食べていない。ということで喜んでいただけたようだ。そりゃ、そうだ。今日の昼飯は全部で670元かかってるんだから・・・普通4人で昼ごはんなんて、そこそこの店でも350元どまりだ。
着いてから30分位は、ザーサイと塩豆をつまみに、おじさんの酒を酌み交わす。
国有企業時代の話、共産党の話、文化大革命のときの話など、興味のままに質問する僕によどみなく答えてくれる。 文化大革命の時は、特にひどかったらしく、それこそ親を裏切り、兄弟を売るということが平気で行われていた時代だと。仲の良かった数人は今でも連絡が取れない人がいるらしいし、連絡がとれても、既に戸籍が上海にないので、戻るに戻れない人が沢山いるらしい。 おじさんも親戚が上海に残っていたので、からがら戻ってこれたと。どこで何をしていたのか?聞いてみても、盃を顔の前にあげて、頭を振るだけだ。相当つらい、思い出したくない出来事があったに違いない。
おじさんの奥さんと、同行のZが料理を運んでくる。
みやげ物ももう一度火を通すと、それなりじゃないの?あとは上海料理たる土鍋の料理。
僕の好きな、雪菜と豚肉の煮込みも用意しておいてくれたらしい。おじさんに好物だということを話していたのを覚えていてくれたんだなあ。
おじさんもおばさんも本当に客好きで、初対面のZにも居心地が悪くならないよう、いろいろ質問したり、住んでいる場所を聞いたりしてくれて、本当に助かる。
Zも、「たーさん、本当にいい人達だわ。上海人て本当はこうよ。守銭奴みたいに言われているけど、皆人が良すぎるの。だから、その反動がでたりするんでしょうね。」
「うん、Zは別にして、彼らが本当にいい人だということは疑いないね。」
「ちょっと、私は別ってどういうこと?」
「冗談、冗談。しかしこの土鍋料理はすごくおいしいんだけど・・・こんなの食べたことないよ。」
「そりゃあ、そうでしょ。正真正銘の家庭料理だもの。」
「作れるの?」
「作れるけど、時間がかかるわよ。」
「有難いねえ。」
たった4人ではあるけれど、宴は11時過ぎまで続いた。帰ろうとするのだが、酒がなくなるまで、帰れないというのが訪客の流儀ではあるらしい。こんなことなら、酒は少なめにするのだったが。
途中でおばさんが酒ビンを小さなものに変えてくれたので助かった。
「すいませんねえ。いつもこうなんですよ。酒を呑んでれば幸せみたい。」
「いや、愛すべき人物です、おじさんは。」
「ここのところ、たーさんが来る、たーさんが来ると言って、すごく楽しみにしていたんですよ。」
「有難いことです。」
「でも、日本人はこんなところには普通来ないでしょう?」
「そんなこともないでしょう。僕は田舎で窓のない寝台だけの旅館に泊まったこともあるので、どこでも行きますよ。」
「日本の人もたーさんみたいな人が多いと、中国人ともっと仲良くなれるのにねえ。」
「日本人は、こういっちゃ失礼だけれど、数十年前に同じ生活をしていたことを忘れてしまってるんじゃない?」
「そうなの?」
「僕は知らないけれど、古い人に聞くとそうらしいよ。家の中で豚を飼ってたり、蚕を飼っていたりしてたらしい。」
「今でも田舎のほうはそうよ。中国も。」
「でしょ。だから気にならない。」
おじさんはすっかり出来上がってしまっていて、寝台に転がり込んでいる。
Zと二人で家を辞すときにも、おばさんは、また来てね。また来てね。たーさんがいなくてもZだけでもいいのよ。と
何度も言ってくれた。
本当の本物の上海人のお宅での食事と会話。
忘れられない思い出が、またひとつ加わった。
元国有企業の幹部だったおじさんの家に招待されている。
みやげの酒はいたく感激したらしく、早速自分で按配をしはじめた。
同行の女性Zは、どうやら青菜に僕の好物である豆苗ともやし(豆芽)のハーフ&ハーフをニンニク風味で作るつもりらしい。芳しいにおいが漂ってくる。
持参の打包も、いやこんな料理はとんと食べていない。ということで喜んでいただけたようだ。そりゃ、そうだ。今日の昼飯は全部で670元かかってるんだから・・・普通4人で昼ごはんなんて、そこそこの店でも350元どまりだ。
着いてから30分位は、ザーサイと塩豆をつまみに、おじさんの酒を酌み交わす。
国有企業時代の話、共産党の話、文化大革命のときの話など、興味のままに質問する僕によどみなく答えてくれる。 文化大革命の時は、特にひどかったらしく、それこそ親を裏切り、兄弟を売るということが平気で行われていた時代だと。仲の良かった数人は今でも連絡が取れない人がいるらしいし、連絡がとれても、既に戸籍が上海にないので、戻るに戻れない人が沢山いるらしい。 おじさんも親戚が上海に残っていたので、からがら戻ってこれたと。どこで何をしていたのか?聞いてみても、盃を顔の前にあげて、頭を振るだけだ。相当つらい、思い出したくない出来事があったに違いない。
おじさんの奥さんと、同行のZが料理を運んでくる。
みやげ物ももう一度火を通すと、それなりじゃないの?あとは上海料理たる土鍋の料理。
僕の好きな、雪菜と豚肉の煮込みも用意しておいてくれたらしい。おじさんに好物だということを話していたのを覚えていてくれたんだなあ。
おじさんもおばさんも本当に客好きで、初対面のZにも居心地が悪くならないよう、いろいろ質問したり、住んでいる場所を聞いたりしてくれて、本当に助かる。
Zも、「たーさん、本当にいい人達だわ。上海人て本当はこうよ。守銭奴みたいに言われているけど、皆人が良すぎるの。だから、その反動がでたりするんでしょうね。」
「うん、Zは別にして、彼らが本当にいい人だということは疑いないね。」
「ちょっと、私は別ってどういうこと?」
「冗談、冗談。しかしこの土鍋料理はすごくおいしいんだけど・・・こんなの食べたことないよ。」
「そりゃあ、そうでしょ。正真正銘の家庭料理だもの。」
「作れるの?」
「作れるけど、時間がかかるわよ。」
「有難いねえ。」
たった4人ではあるけれど、宴は11時過ぎまで続いた。帰ろうとするのだが、酒がなくなるまで、帰れないというのが訪客の流儀ではあるらしい。こんなことなら、酒は少なめにするのだったが。
途中でおばさんが酒ビンを小さなものに変えてくれたので助かった。
「すいませんねえ。いつもこうなんですよ。酒を呑んでれば幸せみたい。」
「いや、愛すべき人物です、おじさんは。」
「ここのところ、たーさんが来る、たーさんが来ると言って、すごく楽しみにしていたんですよ。」
「有難いことです。」
「でも、日本人はこんなところには普通来ないでしょう?」
「そんなこともないでしょう。僕は田舎で窓のない寝台だけの旅館に泊まったこともあるので、どこでも行きますよ。」
「日本の人もたーさんみたいな人が多いと、中国人ともっと仲良くなれるのにねえ。」
「日本人は、こういっちゃ失礼だけれど、数十年前に同じ生活をしていたことを忘れてしまってるんじゃない?」
「そうなの?」
「僕は知らないけれど、古い人に聞くとそうらしいよ。家の中で豚を飼ってたり、蚕を飼っていたりしてたらしい。」
「今でも田舎のほうはそうよ。中国も。」
「でしょ。だから気にならない。」
おじさんはすっかり出来上がってしまっていて、寝台に転がり込んでいる。
Zと二人で家を辞すときにも、おばさんは、また来てね。また来てね。たーさんがいなくてもZだけでもいいのよ。と
何度も言ってくれた。
本当の本物の上海人のお宅での食事と会話。
忘れられない思い出が、またひとつ加わった。
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