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本と音楽とねこと

接続された心・一緒にいてもスマホ

 シェリー・タークルの下記二作品を読んで、インターネット民生利用黎明期における、ネット上の自我構築によるアイデンティティの拡散が問題視されていた時代から、スマホ全盛期にいたって、人々の対面会話が衰退し、ネット上の自我が現実の自我を凌駕する時代への変遷を、数多くのインタビュー記録から、感じいった。
 'Reclaiming Conversation: The Power of Talk in a Digital Age'における、「ひとつ目の椅子」、「二つ目の椅子」、「三つ目の椅子」とは、ヘンリー・ソローが考えた、孤独になる時間をもちながら、ときには親密な他者と交流し、さらには社会的な役割を取得していく自我のあり方を示したものであるが、スマホ(によるメールやSNS)は「ひとつ目の椅子」に人を縛り付け、自我の社会性は無限に後退していく。対面会話の後退は、討議の機会喪失をさらに促進し、民主制社会の基盤は崩壊していくことになる。
 息を吐くように四六時中ツイートし、ネット上の自我への偏愛を募らせていく人々をみるにつけ、ソーシャルメディアは、実のところ、人の社会性を無限後退させるという意味で、「ソーシャル」なものではないと言わざるをえない。
 わたしたちは、5インチ程度の画面に振り回される生活をやめるべきなのだろう。


Turkle ,Sherry ,1995,Life on the Screen ,Simon & Schuster.(=1998,日暮雅通 訳『接続された心──インターネット時代のアイデンティティ』早川書房.(4.14.2018)

目次
第1部 インタフェースの魅力
ふたつの美的価値観
ティンカリング(いじくりまわすこと)の功績
第2部 夢と野獣について
ロボットを口説く
インタフェースとしての価値で物事を考える
創発の特性
ニューフロンティアとしての人工生命
第3部 インターネット上にて
自己の諸相
タイニーセックスとジェンダー・トラブル
仮想とその欲求不満
アイデンティティの危機

本書は、インターネットで何が起こっているのか、どのように心はかたちを変えつつあるのかを真摯に捉えるべく、ネットワーカーのパーソナリティに着目して分析した、第一級のインターネット研究書である。


Turkle ,Sherry ,2015,Reclaiming Conversation: The Power of Talk in a Digital Age ,Penguin Press.(=2017,日暮雅通 訳『一緒にいてもスマホ──SNSとFTF』青土社.(4.14.2018)

目次
1 会話の効用
2 ひとつ目の椅子
3 二つ目の椅子
4 三つ目の椅子
5 この先の進路
6 四つ目の椅子?

急激に広まったスマートフォンは、いつどこででも連絡を取り合える日常を作り出した。その反面、親子、友人、恋人同士の関係性にも大きな変化をもたらしつつある。家庭、学校、職場でいま起きている問題を豊富なインタビューをもとに分析し、便利さと引き換えに失ったもの、またそれを取り戻す方法をTEDでも話題のシェリー・タークルが提言する。


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