リンドバーグといえば、世界初の大西洋横断飛行に成功したパイロットにして、『翼よあれがパリの灯だ』の著者。
本書の著者はその配偶者。夫と同じ飛行士でもあった。
1950年代、アメリカ女性がもっとも保守化し、嬉々として専業主婦となっていった時代に書かれたせいで、古くさい「女はこうで男はこう」といったジェンダー観念が基底にあって、イラッとさせられるが、それでも、海岸に流れ着く貝殻にことよせて、ゆたかな人生のありようを思索した文章は美しい。(原文が美しくなければ訳文もここまで美しくならないだろう。)ヘンリー・ソローの『森の生活』を彷彿とさせる脱物質主義、自然融和思想の命脈はここにも生きていた。その思想への共鳴は、本書が半世紀以上にわたって読み継がれてきたことからもうかがい知れる。
「もうひとつのアメリカ思想史」の系譜に位置づけられるべき名著である。
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