樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

タブノキ1本、消防車1台

2007年08月31日 | 木と防災
前回に続いて樹木と防火の話。明日が「防災の日」に制定されているのは、1923年9月1日に関東大震災が発生したからですが、その大震災にこんな事例があるそうです。
墨田区の陸軍工場跡地に逃げ込んだ4万人のうち3万8千人が亡くなったのに対して、その3km南にある岩崎家別邸に逃げ込んだ2万人は無事だった。工場跡地は4万平方kmもの広さがあり、周囲は板塀で囲んであったのに、避難した人たちの荷物に火の粉が舞い落ち、1時間足らずで95%の人が死亡。一方、岩崎家別邸は周囲が樹木で囲まれていたため、雑踏に踏まれて赤ちゃんが一人亡くなった以外は死者がなかった。
こういう事例を知ると、街路樹であれ工場の緑化であれ、樹木の大切さを再認識します。

      
       (タブノキ。イヌグスという別名どおりクスノキの仲間)

また、1976年10月、山形県酒田市で1700戸が全焼するという大火が発生しましたが、大きなタブノキを2本植えていた本間家という旧家は類焼を免れたそうです。
以来、酒田市ではそれを教訓にして、「タブノキ1本、消防車1台」を合言葉に、市長が率先して市内各所にタブノキを植えたとか。前回ご紹介したカシ類といいタブノキといい、やはり防火上は常緑広葉樹がいいようです。
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火災に強い生垣

2007年08月29日 | 木と防災
今度の土曜日、9月1日は「防災の日」。それにちなんで、樹木の防火力について2回連続でご紹介します。
以前ご紹介しましたが、京都には火災を防いだという伝説のイチョウがいくつかあります。東京にも火を防いで人を助けた「焼けイチョウ」が各地に残っています。
こうした伝説とは別に、関東大震災の事例をベースに樹木の防火力を調査したデータがあります。それによると、イチョウは葉をつけている夏はある程度の防火力を発揮するものの、落葉する冬はその効果が下るそうです。
逆に、カシ類、スダジイ、サンゴジュ、ネズミモチ、ツバキ、マサキ、アオキなどの常緑樹は1年中防火力を発揮するとのこと。サンゴジュの防火性も以前ご紹介しましたが、6月に国会議事堂を訪れた時、鉄柵の内側にズラーッとサンゴジュが植えてあるのを発見しました。国のいちばん大切な建物を火災から守ろうという意味かも知れません。

      
     (国会議事堂の生垣はサンゴジュ。白い花が咲いていました)

また、庭木や街路樹によく使われているのに防火力が低い樹は、カキ、ケヤキ、クスノキ、サルスベリ、シダレヤナギ。さらに、マツ、カイズカイブキなど葉に樹脂を含む樹やササ、タケは燃えやすく、シュロも幹の繊維に着火することがあるようです。カイズカイブキは生垣によく使われていますが、防火上は逆効果なんですね。

      
        (カイズカイブキを生垣にした家はけっこう多いです)

また、阪神淡路大震災の調査では、ウバメガシやカナリーヤシは火災への抵抗力が強く、クスノキ、ケヤキ、イチョウは中程度だったそうです。そう言えば、京都御所の生垣はウバメガシ。石垣の上には延々とウバメガシが植えてあります。国会議事堂や御所など重要な建築物は生垣にも防火性を考慮しているということでしょうか。

      
          (京都御所の生垣はウバメガシ)

樹木が火災を防ぐ要因は4つあって、①枝葉に含まれる水分が温度上昇を防ぐ、②樹体が輻射熱を遮る、③熱や煙を上に拡散させる、④火の粉を枝葉が捕らえて消火する。これを見ると、落葉すると防火力が落ちるのもうなずけます。
偶然ですが、わが家も北側の道路沿いにはアラカシを3本植えています。でも、東側は落葉樹だし南側はアジサイとブルーベリーしか植えてないから安心できないな~。
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火を防ぐ赤い樹

2006年08月31日 | 木と防災
時間にゆとりがある朝は、いつもの散歩コースを少し遠回りして、興聖寺という禅寺の境内を通り抜けます。
その境内と墓地の間にサンゴジュの長い生垣があり、そろそろ赤い実が成る頃だと思って訪れたら、少し盛りを過ぎていました。

      

ツヤのある革質の葉とこの赤い実が特徴で、普通の家の生垣にもよく使われているので、みなさんもけっこう目にしているはずです。名前の由来は、実も実の枝も赤くて珊瑚のようだから。
スイカズラ科ガマズミ属の樹で、赤い実は共通していますが、ガマズミと同じ仲間とは思えないほど葉や幹はゴツゴツしています。
昔から「火防せの樹」と呼ばれて、防火用の生垣に使われてきました。材を燃やすと切り口から泡を吹くところから、学名の種名は「アワブキ」と言いますが、それほど水分を含んでいるから燃えにくいのでしょう。葉も、火を受けても炎が出ないそうです。実は火のように赤いのに、防火の働きをするというのが面白いですね。

      

このお寺では、境内から少し離れた墓地をサンゴジュの生垣でL字型に囲っています。塔頭が燃えても檀家のお墓だけは火災から守ろうという意思の表われなのでしょうか。さすが禅寺、なかなかの配慮です。
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