映画と音楽そして旅

主に懐かしい映画や音楽について…
時には新しい映画も…

 (20) 映画{「ひまわり」の主題曲

2005-08-01 00:21:22 | 映画音楽
 この映画が公開された1970年は「EXPO70」つまり大阪万博の年、高度成長の真最中で劇場映画を見た記憶が殆どなく、近年になってテレビで観た映画です。主演女優のソフィア・ローレンは1955年に{河の女}に出て、主題歌の「マンボ・バカーン」とかいうのを歌っていた…程度の記憶でそのまま忘れていました。
 戦後六十年を経た今日でも我が国では中国残留孤児など、戦時中の古傷を清算出来ずに引きずっていますが、これは先の大戦にかかわったヨーロッパ諸国、特に敗戦国になったイタリアでもそれは同じだったようです。
 ロシア戦線で生死不明になった夫アントニオを捜し求めてロシアヘ旅立ったジョバンナ
 やっと探し当てたアントニオにはすでにロシア人の妻、マーシャと女の子がいました。アントニオは撤退中に寒さで意識不明となり、倒れているところをマーシャに助けられたのです。
 マーシャはどこか愁いと寂しさが漂うような女性でしたが、ジョバンナと再会してから記憶を取り戻した夫の微妙な心の変化に気づきます。
 もう自分のところへは帰って来ないかも知れない…という不安の中で、マーシャは夫を一時的にジョバンナのところへ送り出しますが、これは普通では出来ない心優しい勇気ある行動だったと思います。
 ジョバンナと再会したアントニオは長い年月の流れがすべてを変えた事を悟ります。ジョバンナが息子ににアントニオという名をつけていたことが唯一の救いでした。
 お互いに惹かれながらも妻子の待つロシアへ帰るアントニオと、夫や息子とイタリアで暮すジョバンナのミラノ駅での別れ…切ないラスト・シーンでした。
 アントニオが命をかけた激戦地は、大輪の花を咲かせるひまわり畑になっていました。
 帰ってきたアントニオをマーシャはどんな気持ちで、表情で迎えたのでしょうか。
 アントニオはすべてを忘れてロシアの大地に根付いたのでしょうか。
 あれからジョバンナと息子のアントニオは幸せに暮すことが出来たのでしょうか。
などと余分な心配の種は尽きませんが、きっと平安と幸が訪れただろうと思いたい…です。
 監督のヴィトリオ・デ・シーカは{自転車泥棒」で敗戦国の悲哀をリアルに描きましたが、この作品も戦火によって非情に断ち切られた愛を感動的に捉えています。
 ソフィア・ローレンは紛れもない1950年代のスターでした、でもこの映画では私たちの記憶にある華やかなイメージは消えて、内容にふさわしい落ちついた感じを漂わせていました。十五年という歳月は彼女を変えたのでしょうか。
 この映画でも音楽が雰囲気を盛り上がるのに、効果を上げていましたが私の手元には、「ヘンリー・マンシーニの美しくスイートな名演集」として、「ムーン・リヴァー」「シャレード」などの映画音楽が収録されています。「ひまわり」は残念ながら入ってませんが、たまたまこの主題曲がロード・ダウン出来たのでPCで時々聴いています。
 今までは描写や表現があまりに写実的すぎたことや、マカロニ・ウエスタンのイメージがあったりして、なんとなく敬遠してきたので今となっては、私が観た数少ないイタリア映画の一つ…でも大変感銘を受けた映画の一つになりました。
                               たそがれ