自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆金沢はカミナリ銀座、インフル発生、コロナ禍止まず

2023年09月06日 | ⇒ドキュメント回廊

   朝から西の空に雨雲が立ち込めている。気象庁は、北陸地方できょう午前中から午後にかけて、線状降水帯が発生する可能性があると発表している。きのう5日午後も雷を伴って、一時的に激しい雨が降った。

   金沢に住んでいて、とくに気をつけるのは雷だ。何しろ金沢は「カミナリ銀座」。全国の都市で年間の雷日数がもっとも多いは金沢の45.1日だ(気象庁「雷日数」1991-2020)。ちなみに、東京は14.5日、仙台は9.8日となっている。雷が直接落ちなくても、近くで落ちた場合には「雷サージ」と呼ばれる、瞬間的に電線を伝って高電圧の津波現象が起きる。この雷サージがパソコンの電源ケーブルから機器内に侵入した場合、部品やデータを破壊することになる。(※写真は、北陸電力公式サイト「雷情報」より)

   きのうもピカッと空が光り、ヤバイと思い、瞬間的にパソコンの電源ケーブルを外した。PCをチェックしたが、異常はなくひと安心した。電源ケーブルをコンセントに入れたまま外出して、途中で雷が発生するということもある。万が一に備えて、雷害からPCを守るためにガードコンセントを使っている。

   話は変わる。この時節としては珍しい集団風邪が石川県内で発生している。県のプレスリリース(5日付)によると、5日現在の患者数はあわせて153人で、金沢市内の高校や小松市と白山市の小学校など4つの学校で学級閉鎖や学年閉鎖の措置がとられている。欠席した生徒や児童の症状は、38度以上の発熱があり、のどの痛みを訴えるなどインフルエンザの症状という。昨シーズンの集団風邪の発生はことし1月16日だった。インフルエンザは季節性がなくなり、年間を通して発症が見られるようになってきた。
   
   県内では新型コロナウイルスと診断された患者数は1223人(8月21-27日の合計)と高止まりの傾向が続いている。今後、集団風邪と新型コロナの「ダブル感染」も流行するのかもしれない。

⇒6日(水)午前・金沢の天気   あめ

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★京アニ事件の「実名報道」でメディアが問われたこと

2023年09月05日 | ⇒メディア時評

   2019年7月18日に起きたアニメ制作会社「京都アニメーション」への放火で死者36人・負傷者32人を出した、いわゆる「京アニ事件」。殺人などの罪で起訴された被告の裁判員裁判がきょう5日始まる。事件が起きたこの年、金沢大学の授業で「ジャーナリズム論」を講義していて、ゲストで招いた新聞記者やテレビ番組の制作者、そして学生たちと「京アニ事件」について議論を交わした。そこで浮かび上がったのはメディアの取材手法についてだった。

   学生たちがジャーナリストに質問したのは「実名報道」についてだった。京アニの亡くなった36人の氏名について、京都府警は8月2日に10人の実名による身元を公表し、同月27日に25人、その後10月11日にさらに1人の身元を公表した。警察側の判断では、葬儀の終了が公表の目安だった。

   府警は同時に「犠牲になった35人の遺族のうち21人は実名公表拒否、14人は承諾の意向だった」(2019年9月10日付・朝日新聞Web版)と説明した。拒否の主な理由は「メディアの取材で暮らしが脅かされるから」だった。遺族側が警戒しているのはメディアという現実が浮かび上がった。

   警察側の身元の公表を受けて、メディア各社は実名を報道した。さらに、現場記者は被害者側のコメントを求め取材に入った。朝刊各紙には「亡くなった方々」として、実名だけでなく、年齢、住所(区、市まで)、そして顔写真もつけている。その写真は、アニメ作品の公式ツイッターやユーチューブからの引用だった。遺族から提供を受けたものもあった。

   学生たちの意見が相次いだ。「被害者遺族にさらなる苦痛を与える取材はやめるべき」や「実名か匿名かは遺族の意向が最優先されるべき」、「いまのマスコミは加害者の名前を報道することには慎重になっているが、被害者の名前は当たり前にように軽く報道している感じがする」と辛口のコメントだった。さらに、「被害者の実名報道が遺族に対するメディアスクラム(集団的過熱取材)の原因ではないか。被害者遺族への取材や実名報道にこだわる理由がわからない」と手厳しかった。

   メディアとすれば、実名報道は報道の信憑性を高めるために要件だろう。さらに、遺族からコメントをもらことも必要だろう。ただ、記者が玄関のドアホンを鳴らしただけで、生活を脅かされたと敏感に感じる遺族もいる。学生の意見に対し、ジャーナリストの一人は「現場記者として報道の基本を守れば、遺族への取材はどうしても必然になる。この矛盾をどう正せばよいのか迷っている」と。メディアスクラム問題については、新聞とテレビの各1社を選び、代表社が遺族に取材の意向を尋ね、了解が得られれば取材する形式が多くなっているとの説明だった。

   自身もかつて報道現場に携わった経験を持つ。そして今、読者・視聴者の一人としての立場からすると、やはり実名であることが記事内容の真実性が伝わる。ただ、被害者や遺族へのコメントが必須かどうか。警察の捜査で事件の状況が理解できれば、被害者側の心情は察するに余りあるものだ。ケースバイケースだが、被害者側のコメントはなくてもよい。顔写真もなくてもよい。

⇒5日(火)午前・金沢の天気   くもり

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☆高騰する金の価格 金を楽しむ金沢という街

2023年09月04日 | ⇒トピック往来

   金沢では金箔は体によいとされ、金箔を入れた日本酒、化粧品、金箔をまいたソフトクリーム、うどんもある。かつて、金沢の子どもたちが頭にたんこぶをつくると、金箔が熱の吸収によいことから膨らんだ部分にはっていた。

   「金沢は金箔で持つ」と言われるくらいに、金沢は伝統的に金箔生産量を誇り、全国シェアは98%だ。金を極限まで薄く伸ばしたのが金箔であり、この「縁付(えんつけ)金箔」と呼ばれる製法は「伝統建築工匠の技」の一つとして、2020年にユネスコ無形文化遺産にも登録されている。(※写真は、金沢金箔伝統技術保存会ホームページより)

   その金の価格が高騰している。日経新聞Web版(8月29日付)によると、国内小売価格が税込みで1㌘1万円の大台に初めて乗せた。地金商最大手の田中貴金属工業が29日発表した販売価格は前日比28円高の1㌘1万1円と、連日で最高値を更新した。外国為替市場で円安・ドル高が進行し、円建ての国内金価格が上昇。世界景気の減速懸念から「安全資産」とされる金が選好されていることも後押ししている。

   こうなると金箔生産が盛んな金沢では、業者は材料が難しくなるのではと思ったりもする。ところが、そうではないようだ。知人からかつて聞いた話。「金箔製造業者は潰れない(倒産しない)」と。なぜなら、インゴット(地金)の価格が安いときに大量に仕入れ、高くなれば売って経営を安定させる。「良質な金を見極める目利きであり、金箔業者は金のトレーダーだよ」と知人は妙にほめていたことを覚えている。

   金沢では金箔製造業者の店舗は観光地スポットでもある。店に入ると、工芸品や化粧品、食用金箔、建築装飾、箔材料、観光などさまざまな商品が並ぶ。最近では「金継ぎ」が国内外で知られるようになった。東京パラリンピックの閉会式(国立競技場・2021年9月5日)でアンドリュー・パーソンズ会長が発した言葉だった。日本の金継ぎの技術について、「不完全さを受け入れ、隠すのではなく、大切にしようという発想であり素晴らしい」と述べて、金継ぎという言葉が世界でもトレンドになった。さらに、金継ぎは一度は壊れてしまった製品を修復するだけでなく、金箔を使うことでアートを施し、芸術的価値を高める。

   金の価格高騰もさることながら、その金をどのように生活で使い、楽しみ、新たな価値を創造するか。金沢という街はそのショーウィンドーかもしれない。

⇒4日(月)夜・金沢の天気  くもり  

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★「核汚染水」と呼び禁輸する中国に「TPP」ブーメラン

2023年09月03日 | ⇒ニュース走査

    日本など参加するTPP(環太平洋パートナーシップ協定)に先月、イギリスが協定に加入することが決まった。加盟国は12ヵ国となり、TPP経済圏は世界全体のGDP合計額の15%を占めることになる(7月8日付・Bloomberg-Web版日本語)。

   TPPは当初アメリカが主導した加盟12ヵ国だったが、2017年に当時のトランプ大統領が離脱を決め、日本など11ヵ国でTPPを再出発した。日本はアメリカに復帰を求めているが、アメリカは対中包囲網の構築に向けて、ローバルサウスの代表格であるインドとインドネシアを加えた新経済圏構想「IPEF(インド太平洋経済枠組み)」を2022年5月に発足させている。加盟国は日本を含めた14ヵ国で、半導体のサプライチェーンの強化などを進めている。

   こうしたアメリカ主導の対中包囲網に対し、中国はTPP加盟申請を2021年9月に行っている。貿易制限による自国経済への影響を憂慮してのことだろう。現在、TPPに加盟申請しているのはウクライナ、中国、台湾、ウルグアイ、エクアドル、コスタリカの6つの国・地域だ。

   ここにきて、中国のTPP加盟について、日本では強烈な批判が起きている。福島第一原発の処理水の放出を理由に、中国が日本からの水産物を一方的に禁輸とした件だ。自民党の世耕参院幹事長は先月29日の記者会見で、「科学的な根拠なく、政治的・恣意的に、特定の国の特定の水産物を全面禁輸するような国には、TPPに加入する資格は全くない」と中国を批判。日本国内で相次ぐ中国発信の迷惑電話については「全く関係のない日本の店舗に電話をかけ、威力業務妨害に相当するようなことを行っている」と問題視し、日本政府に毅然とした対応を求めた(8月29日付・共同通信Web版)。

   憶測だが、中国がTPP加盟を望んでいる背景には、アメリカが離脱している間に加盟をすることで、アメリカ排除の主導権を握ろうとしているのかもしれない。ところが、処理水の放出に対する中国の動きに、日本は態度を硬化させた。中国がTPPに加盟するには、全加盟国の支持が必要だ。中国にとっては「ブーメラン」として戻って来る。

⇒3日(日)夜・金沢の天気   はれ

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☆生成AIで「言葉の壁」を乗り越える 能登半島の事例 

2023年09月02日 | ⇒メディア時評

   生成AI=人工知能の進化が連日ようにメディアを通じて紹介されている。対話型AIの「ChatGPT」をはじめとする生成AIの登場で、進化は新たな段階を迎えたようだ。この生成AIを使った自動通訳機で地域起こしを行っている集落が能登半島にある。   

   事例を紹介したのは安倍晋三氏だった。2019年1月の第198回通常国会で安倍総理は施政方針演説の中で、能登半島・能登町で農家民宿で組織する「春蘭(しゅんらん)の里」=写真、「春蘭の里」公式サイトより=の取り組みを紹介した。「田植え、稲刈り。石川県能登町にある50軒ほどの農家民宿には、直近で1万3千人を超える観光客が訪れました。アジアの国々に加え、アメリカ、フランス、イタリア、イスラエルなど、20ヵ国以上から外国人観光客も集まります」と。この安倍氏の演説は、観光による地方創生がメインテーマだったので、生成AIのことは紹介していなかった。今はAI導入の成功事例として広く紹介されている。

   春蘭の里はインバウンド観光のツアーや体験型の旅行の受け入れを積極的に行っている。47軒の民宿経営の人たちが自動通訳機「ポケトーク」を使いこなして対応している。以下、春蘭の里の代表から聞いた話だ。「ポケトークだと会話の8割が理解できる。すごいツールだよ」と。ポケトークは74の言語に対応していて、春蘭の里は通訳機を使うようになって年間20ヵ国・2000人余りを受け入れるようになった。70歳や80歳のシニアの民宿経営者たちがポケトークを使いながらインバウンド観光の人たちと笑顔でコミュニケーションを取っている姿はAIの進化、まさに「文明の利器」を感じさせる。

   新型コロナウイルスのパンデミックでインバウンド観光客は一時期途絶えたが、いまは元に戻りつつある。この間、AIも進化した。コンピューターを介して言語を別の言語に変換することを「機械通訳」といい、「MT(Machine Translation)」と呼ばれている。このMTが人間の脳の神経細胞で行われている情報処理の仕組みを計算式に落とし込んでAI学習を行う、いわゆる「ニューラル機械通訳(NMT)」へと進化したことから、お互いがより自然なコミュニケーションをとり合うが可能になった。

   春蘭の里では、春は山菜、秋にはキノコをインバウンドの人たちといっしょに採取して、夕ご飯に料理として出して喜ばれている。この間の言葉のやりとりはデープなのだが、お互いの言葉の微妙な言い回しや地方の言葉の表現などがAI学習によって、自動通訳機で十分に通じるようになった。

   困難と言われ続けていた「言葉の壁」をしなやかに乗り越えた事例だ。生成AIの可能性に期待する時代を感じる。

⇒2日(土)夜・金沢の天気     くもり

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★「記録ずくめの夏」はいつまで続く

2023年09月01日 | ⇒トピック往来

   きょうから9月。それにしても、ことしの8月は異常な暑さだった。最終日の31日、自宅近くの街路の温度計は37度だった=写真・上、撮影午後3時15分=。買い物で街を歩いていても、熱風に煽られるような感じがして、熱中症のことが気にかかった。

   地元の新聞メディアは「猛暑 記録ずくめの8月」の見出しで、石川県内の異常な暑さのさまざまなデータを掲載している。以下、北陸中日新聞(1日付)の記事の引用。

   トピック的だったのは、8月10日に小松市では観測史上最高の40.0度を記録したこと。そして、この日の小松は全国1位の最高気温だった。金沢地方気象台の石川県内11の観測地点がすべて猛暑日となった日だった。

   「熱中症警戒アラート」という言葉が飛び交った。金沢ではきのう31日まで42日連続で気温が30度以上の真夏日となり、1985年の53日連続に迫っている。8月に県内で出されたアラートは24回。実際、消防庁の全国のまとめで、5月1日から8月27日の間に石川県で熱中症による救急搬送は934人に上り、昨年の同時期より281人多かった。         

   日中だけでなく、寝苦しい日も続いている。金沢では25度以上の熱帯夜が39日間連続している。これは、1994年に記録した27日間を大幅に更新している。

   そして、雨が降らない。金沢の8月の雨量は平年は179.3㍉だが、今年は40㍉で平年の2割ほどしか降っていない。自宅近くにある農園では、農作物の葉が枯れるなどしている。農業用水などに利用される金沢市の犀川ダムの貯水率が低下している。8月24日現在の貯水率は24%で、まとまった雨が降らない状況が続くと9月中旬にはゼロとなる可能性がある(25日付・北國新聞Web版)。ただ、市内では手取川ダムや内川ダムからの水道もあり、当面、配水がひっ迫する心配はないという。

   身の回りのことだが、雨が降らないことで、夕方に庭木への水やりが日課となっている。ホースで水まきをすると、強烈な日差しで枯れたように一面茶色になったスギゴケがまた青さを取り戻すのを見るとほっとする。と同時に、水道料金が気になったりもする。

   金沢地方気象台の北陸地方の3か月予報によると、9月も太平洋高気圧の勢力が引き続き強いため、気温は平年よりも高く厳しい残暑が長く続く見通しとのこと。水やりも当面続くのか。秋はまだ遠い。

(※ 写真・下は、金沢の141㍍の卯辰山から眺めた市街地。薄いモヤがかかったような状態だった=31日午後4時ごろ撮影)   

⇒1日(金)午後・金沢の天気     はれ

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