自在コラム

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★続・「どぶろく」携え「あえのこと」へ

2018年12月07日 | ⇒キャンパス見聞

   ユネスコの無形文化遺産で単独に登録されている農耕儀礼「あえのこと」は能登半島の中でも奥能登と呼ばれる輪島市、珠洲市、穴水町、能登町の地域に伝承されている。「あえ」はご馳走でもてなすこと、「こと」は儀式や祭りを意味する。

   田の神は各農家の田んぼに宿る神であり、それぞれの農家によって田の神さまにまつわる言い伝えが異なる。共通しているのが、目が不自由なことだ。働き過ぎで眼精疲労がたたって失明した、あるいは稲穂でうっかり目を突いてしまったと諸説ある。目が不自由であるがゆえに、それぞれの農家の人たちはその障害に配慮して接する。座敷に案内する際に階段の上り下りの介添えをし、供えた料理を一つ一つ口頭で丁寧に説明する。もてなしを演じる家の主(あるじ)たちは、自らが目を不自由だと想定しどうすれば田の神さまに満足していただけるのかと心得ている。

   あえのことを見ていると「ユニバーサルサービス(Universal Service)」という言葉を連想する。社会的に弱者とされる障害者や高齢者に対して、健常者のちょっとした気遣いと行動で、障害者と共生する公共空間が創られる。「能登はやさしや土までも」と江戸時代の文献にも出てくる言葉がある。初めて能登を訪れた旅の人(遠来者)の印象としてよく紹介される言葉だ。地理感覚、気候に対する備え、独特の風土であるがゆえの感覚の違いなど遠来者はさまざまハンディを背負って能登にやってくる。それに対し、能登人は丁寧に対応してくれる。それが「能登はやさしや」という意味合いだろうと解釈している。能登人のその所作のルーツはあえのことではないだろうか、と推察している。

   初日にどぶろくを頂いて、「あえのこと」スタディツアーは5日、輪島市の民家を訪ね、農耕儀礼を見学させていただいた。午前9時、どぶろく(1升瓶)を託されたドイツからの男子留学生は家の主に「天日陰比咩神社からの預かりものです。田の神さまにお供えください」と手渡した=写真・上=。主人は甘酒も用意していたが、別御膳で神酒用の銚子と徳利で供えてくれた=写真・中=。「大役」を果たした留学生はあえのことを見終えて、「神様に拝むことはあるが、自宅に招き入れるという神事はとても新鮮に感じた。まさに、もてなしの心だと思いました。田の神がどぶろくを堪能してくれていると想像するとうれしい」とメディアのインタビュー取材に答えていた。

    どぶろくはもう1本預かっていた。それを能登町の合鹿庵で執り行われたあえのこと行事にお供えした=写真・下=。どぶろくを携えたスタディツアーは滞りなく終了した。チェコからの女子留学生は「チェコでガイドブックを手にした際に能登のことを知り、あえのこと神事に興味を抱いた。最初に訪れた(天日陰比咩)神社の雰囲気を感じたときに、日本人と自然の近い関係性を感じた。大切な習慣、考え、儀式はこれからも日本で残されていってほしい。チェコではこうした儀式や伝統文化ははなくなりつつある」とチェコの現状にも触れた。中国からの男子留学生は「自分は中国の少数民族(チワン族)出身で、田の神は祭られている。しかし、能登のように田の神の存在はそれほど大きなものではない。今回のツアーを通して、人として自然への尊敬を持たなくてはならないと感じた」と感想を語った。

   「どぶろくが119年ぶりに飲めてよかった。来年も来てくれよ」。そんな田の神の声を想像しながら、金沢への帰路に就いた。

⇒7日(金)午前・金沢の天気     はれ  


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4 コメント

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どぶろくのお礼 (川口喜仙)
2018-12-17 09:29:02
先般12月5日には先生のサプライズで、貴重な天日陰比咩神社「どぶろく」をいただき、早速一番に田の神様に召し上がって頂きました。甘酒とともにおいしいどぶろくに喜んで頂けたと思っています。ありがとうございました。
12月15日には「どぶろく新酒フェス2018~師走の章~にも足を伸ばし、祭神である天日陰比咩神、屋台久久能智命神の両神様に神殿でお礼を述べさせて頂きました。また今後とも御縁があればよろしくお願いします。お礼まで、川口拝
投稿ありがとうございます (宇野文夫)
2018-12-17 21:32:24
川口さま 農耕儀礼「あえのこと」を継承されていること、敬服しております。田の神さまは本来どぶろくが好物ではなかったのかと思いをめぐらせております。何かの機会に意見交換させていただければ幸いです。
どぶろくと甘酒と清酒 (川口喜仙)
2018-12-18 09:11:46
色々と外野からの声があったのでしょうか。
もともと甘酒もどぶろくも麹と米と水を一緒に仕込む飲み物ですよね、違いはアルコールがあるか、どうかだと思っています。
ネット上での作り方は様々で、有酸素発酵とか無酸素発酵の違いとかいう専門的なものもありますね。
どぶろくの「濁(にごり)酒」の名にこだわる場合もあるでしょうし、米を蒸す(本来は炊くでしょうね)として嫌うこともあるでしょう。
昭和53年に国の重要無形文化財指定された際の調査では、一般的な「清酒」を徳利で勧める記載(甘酒も一緒にですが)が多々あります。清酒もほぼ同様の作り方ですね。清酒は良くてどぶろくは好物ではないというのも変な気がします。どちらかというと私は清酒は製造過程でもろみを「しぼった」ものなので、「しぼる」という言葉の方が嫌ですね(昔は農民から米を年貢で絞り、今は税金で絞るという意味です)。
また、「すっきりした味わい」なんていうのも甘く甘くの甘さ気なのにと気にする方も居るような気がしますし、何より饗応の品物が増えて慶事の形式が変わるのを我が家のやり方や品物と違うこともあります。
中国の「周礼」という書物では酒は「五斉」と「三酒」があり、泛、醴、盎、緹、沈の五斉はすべて神にそなえて、事酒、昔酒、清酒の「三酒」が人間が飲む酒だとあります。泛斉(酒の表面に米粒の浮いている濁酒)や、醴斉(甘酒のようにあまい一夜酒清酒)は神様で、事酒(濁酒で事あるごとに飲む一般的な酒)、昔酒(濁酒をしばらく放置して熟成させたあと、薄く濁った上澄みをすくって集めた酒)、清酒(昔酒より長く濁酒を放置して、完全に透明となった上澄酒)は人間が飲むなら、前記の清酒を田の神様に勧めるのも何か変ですね。
ほかの神様(天日陰比咩神社)へ奉納したもののお下がりだからとか、ほかの神様からのもらい物だからでしょうか?お酒の神様は酒造第一祖神の松尾神がおいでますから酒造会社はこの神様を祭っていますね。
と、いろいろ思いつくままに記載しましたが、わが家では折角の天日陰比咩神社の神様の頂き物ですので、田の神様へありがたく召し上がっていただきました。そのあとのお下がりで飲みましたが美味しかったですよ。またいろいろ教えてください。川口拝
どぶろくと甘酒と清酒 (川口喜仙)
2018-12-18 09:14:22
追伸
文中で「甘く甘くの甘さ気なのに」は「甘く甘くの甘酒」の誤りです。訂正します。

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