自在コラム

⇒ 日常で観察したことや環境問題、金沢大学での見聞、マスメディアとインターネットについての考察を紹介する宇野文夫のコラム

★イフガオから能登に‐下

2014年09月28日 | ⇒トピック往来
 ここで金沢大学がイフガオで取り組んでいる概要について説明する。イフガオ州はマニラから北に約380㌖。コルディレラ山脈の中腹にイフガオ族が耕す棚田が広がる。「イフガオの棚田」は国連食糧農業機関(FAO)により世界農業遺産(GIAHS)に認定されているが、近年、若者の農業離れや都市部への流出により、耕作放棄地の増加が懸念されるほか、地域の生活・文化を守り、継承していく人材の養成が急務となっている。

     能登とイフガオ、SATOYAMA課題の相互理解を深める

 そのため同様の課題を有する、日本の2つの世界農業遺産認定地域(能登・佐渡)との結びつきを強化し、金沢大学が能登で培った里山里海をテ-マとした人材育成のノウハウを移転し、同地において魅力ある農業を実践し、地域を持続的に発展させる若手人材養成のプログラムの構築を支援するというもの。また、GIAHSの理念の普及を通じた国際交流・支援を実施することにより、能登および佐渡地域において、国際的な視点を持ちながら地域の課題解決に取り組み、国際社会と連携するグローバル人材の育成につなげていく。少々欲張った取り組みではある。

 能登ツアーの後半のハイライトは、能登のマイスター受講生やOBとの交流である。20日と21日は能登里山里海マイスター育成プログラムの2期生の修了課題発表会(22人発表、通訳・早川芳子氏)に参加し、能登マイスターの受講生の環境に配慮した米作りや、土地の食材を活かしたフレンチレストラン、古民家の活用などついて耳を傾けた。21日午後からはイフガオ里山マイスターの受講生5人が現在取り組んでいる「ドジョウの水田養殖」や「外来の巨大ミミズの駆除・管 理」などについて発表した。これに能登の受講生やOBがコメントするなど、研究課題の突き合わせを通じて、相互の理解を深めた。

 受講生のヴィッキー・マダンゲングさん(41歳・大学教員)=写真・上=が取り組んでいる研究テーマ「イフガオの民俗資料と写真展示」はいわばイフガオ民族資料館の取り組みである。イフガオは世界文化遺産に認定されているものの、体系立てられた農耕の歴史資料や伝統芸能を紹介する資料館が少ない。そこで、写真と農耕道具の中心とした展示館をつくりたいと願っている。ジェネヴィーヴ・フカサンさん(41歳・農業)=写真・下=の研究テーマ「伝統的な野草茶の栽培と普及」は棚田周辺の野草を乾燥させて野草茶をつくり、副収入にしたいと小さなビジネスを考えている。

 今回の能登研修を通じて、能登とイフガオの受講生30人余りが研究課題の発表を通じて直接・間接的に交流したことになる。21日午後からの課題発表会と懇親会では受講生同士が直接対話し、理解をさらに深めた。イフガオも能登も、若者の土地離れ、農業離れという共通の課題を有している。今回の相互理解で、地域の自然や文化を再度見直し、これを持続的に未来につなげていこうとする思いは通じ合えたのではないだろうか。

 23日の研修ツアーの成果発表会では「過疎の課題を背負いながら地域の再生に知恵を出す能登の受講生の姿がとても印象的で、我々の思いと通じ合えた」との感想があった。

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