自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★ベトナム「戦地」巡礼-上

2017年11月23日 | ⇒ドキュメント回廊

   きょう23日、ベトナム旅行に出かけた。午前11時10分のフライトで小松空港から羽田空港へ。国際線でハイノ行きのベトナム航空機に乗った。午後4時35分発のフライトで、ハイノイ到着までほぼ6時間。初めてのベトナム行きだ。

        巡礼の旅は「蓮の花」から始まる

    機内ではシートのモニターで映画を自由に見ることができた。リストを見て、ことし6月に封切りの映画『花戦さ(はないくさ)』があったので、機内サービスの赤ワインを片手に鑑賞した。物語は、京の花僧、池坊専好が時の覇者、織田信長のために花を生けに岐阜城に行くところから始まる。信長は専好の活けた松を気に入るが、その時、松の枝が重さに耐え切れず継ぎ目が折れるハプニングが。従者たちは信長の怒りを恐れて言葉を失うが、豊臣秀吉が「扇ひとつで松を落とすとは、神業」と機転で信長をたたえてその場を治める。狂言師の野村萬斎が主演で、その仕草や笑いの表情が時代劇にはそぐわない感じもするが、個性がにじんで面白い。

   クライマックスのシーンは、活けた松で秀吉の暴君ぶりを諭すところ。ここでも、松の枝が折れて、笑いでオチがつく。ところで、数多ある邦画の中でなぜベトナム航空で『花戦さ』が採用されたのか、その理由は何かと思いをめぐらしているうちにハイノに到着した。

   きょうの気温は最高でも14度、街にはジャンパー姿も目立った。ところで、空港でハノイの中国語表記は漢字で「河内」だ。日本では人名や地名でこの漢字に馴染みがあり、カワチと読んでしまう。ハノイに「河内」と表記されると、今一つピンと来ない。ハノイ空港から市内へのバスに乗った。市内に入りしばらくすると、夜中のバザールのようなにぎわっているところがあった。40代前半の男性ガイド氏は「あれは花市場ですよ。夜に花の市場が開かれるのです。ベトナム人は花が大好きです。そう、ベトナム航空のロゴマークは蓮(はす)の花をデザインしたものですよ」と得意げに話した。

   路上を見ると、女性や男性がバイクや軽トラックで次々と花の束を持ち込んで、とても活気がある。ピンと来た。映画『花戦さ』では、池坊専好が河原に捨てられている娘・れんを助けるストーリーがある。れんは言葉を発せず、部屋の片隅にうずくまっているが、蓮の開花とともに画才を発揮し、寺の襖(ふすま)に蓮の花を描く迫力のシーンは印象に残る。東映がこの映画を売り込んだのかどうか定かではないが、ベトナム航空が採用した理由はこのシーンにあるのだろう、と。

   蓮は日本では仏花を代表する花だ。ベトナムでも同様のステータスがある花だ。ところで、ベトナムに来た理由。ちょうど15年前、平成14年(2002)8月に父が他界した。亡くなる前、「一度仏印に連れて行ってほしい。空の上からでもいい」と病床で懇願された。仏印は戦時中の仏領インドシナ、つまりベトナムのことだ。父の所属した連隊はハノイ、サイゴンと転戦し、フランス軍と戦った。同時に多くの戦友たちを失ってもいる。父はベトナムに亡き戦友たちの慰霊に訪れたかったのだろう。兄弟3人が集い、そのベトナムへの想いをかなえようと父の遺影を持参して今回ベトナムを訪れた。われわれにとっては巡礼の旅でもある。

⇒23日(祝)夜・ハノイの天気    くもり


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