自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆ファーウェイの背後に息苦しい情報空間

2019年05月20日 | ⇒ニュース走査

    アメリカと中国の貿易戦争に中国の通信機器「ファーウェイ」が引きずり込まれている。報道によると、アメリカ商務省は、アメリカの企業が政府の許可なく取り引きすることを禁じるリストにファーウェイ本社と68の関連会社を発表した(17日)。事実上の取引禁止だ。

          取引禁止とした経緯について「CNN」Web版=写真・上=は以下伝えている。トランプ大統領は16日、安全保障上の脅威と位置付けるメーカーの通信機器をアメリカ企業が使用することを禁じる大統領令に署名した。この時点で、ホワイトハウス当局者は大統領令のターゲットとしてファーウェイを念頭に置いているかどうかは明言しなかった。そこで、大統領令発令の直後に商務省が、アメリカの国益を侵害していると認定する企業のリストにファーウェイを正式に追加した。ここで初めてファーウェイが大統領令の適用対象となった。

   以前からアメリカはファーウェイが欧米諸国の通信インフラにスパイ行為のリスクをおよぼすとして警戒していたが、今回その排除が確定した。ファーウェイは次世代高速通信システム「5G」の先端企業とされる一方、中国の国家戦略「中国製造2025」のリーダー的企業でもあり、アメリカとすると自国の通信網にそのような企業の製品を入れたくないというのは当然かもしれない。

   今回のアメリカの決定の根拠はおそらくこれだ。2017年6月に施行された中国の「国家情報法」。法律では、11項目にわたる安全(政治、国土、軍事、経済、文化、社会、科学技術、情報、生態系、資源、核)を守るために、「いかなる組織および国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助および協力を行い、知り得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない。国は、国家情報活動に対し支持、援助及び協力を行う個人および組織を保護する」(第7条)としている。端的に言えば、中国に本社があるファーウェイは国家情報活動に「支持、援助および協力」をしなければならない。この法律がある以上、アメリカの懸念は理解できる。これは貿易戦争ではなく、安全保障の問題だ、と。

   その中国では、民主化を求めた学生たちに対する武力弾圧、「天安門事件」が1989年6月4日に起きてから30年になるのを前に、国内のネットからWikipediaへのアクセスが出来なくなっている。中国は2015年5月から中国語版Wikipediaへのアクセスを遮断しているが、この規制を全言語のWikipediaに拡大したことになる。インターネット検閲に関する調査団体「OONI」が報じている=写真・下=。

  法律による情報活動への協力、そしてネットの情報遮断。息苦しい情報空間がファーウェイの背後に漂っている。

⇒20日(月)午後・金沢の天気     あめ     


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