自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「平成」 一場の夢~下

2019年03月07日 | ⇒ドキュメント回廊

         けさ(7日)新聞を眺めて、「ひょっとしたらこれは平成最後の不思議、かもしれない」と言葉が浮かんだ。保釈されたカルロス・ゴーン氏の写真である。青い帽子に作業服姿で、顔の半分以上はマスクで隠している。なぜ、このような姿で東京拘置所から出てくる必要性があったのだろうか。この作業服を着せた意味は何か、本人の希望だったとは思えない。これまで日産で着ていたスーツ姿、あるいは普段着でよかったのではないか。保釈金10億円を納付したのだから堂々と出てくればよいのではないか。写真を見て、おかしく、心は和むのだが。

   前回の続き。平成の30年はさまざまな新語や流行語が飛び交い、政治や経済、社会が動いた。政治の世界でも言葉が続々と生まれた。「現代用語の基礎知識」選ユーキャン新語・流行語大賞から引用させていただく。年間大賞の言葉は、平成7年『無党派』(青島幸男)、平成8年『友愛/排除の論理』(鳩山由紀夫)、平成10年『凡人・軍人・変人』(田中真紀子)、平成11年『ブッチホン』(小渕恵三)、平成13年『米百俵/聖域なき改革/恐れず怯まず捉われず/骨太の方針/ワイドショー内閣/改革の痛み』(小泉純一郎)、平成15年『毒まんじゅう』(野中広務)と『マニフェスト』(北川正恭)、平成17年『小泉劇場』(武部勤ほか)、平成19年『どげんかせんといかん』(東国原英夫)、平成21年『政権交代』(鳩山由紀夫)、平成26年『集団的自衛権』(※受賞者辞退)、平成29年『忖度』(稲本ミノル)だ。平成7年から21年まで政治にまつわる新語・流行語の受賞頻度が高いことが分かる。

     「地盤・看板・カバン」選挙を変えた消費税ポピュリズム

   今こうして見てみると、政治は平成の世から日本版ポピュリズムの時代に入ったのではないかと思う。キーワードは消費税。平成元年4月に竹下内閣のもとで消費税3%が導入された。それ以降、税率引き上げにピリピリと過敏に反応する民衆の気持ちを推し測る、あるいは政治利用する、「消費税ポピュリズム」に政治は陥っているのではないかと思えてならない。

   いくつか事例を上げてみる。平成7年の『無党派』は、東京都と大阪府の知事選挙でそれぞれ無党派の青島幸男、横山ノックが政党推薦の候補を破ってことから一躍広がった。その前年の平成6年、自民・社会・さきがけ連立政権の村山内閣が消費税率を3%から5%に引き上げる税制改革関連法を成立させた。これを機に、数合わせの政党連合に対する嫌気ムードが大都市圏で一気に醸成され、無党派候補を支持する有権者層が政治パワーとして台頭、青島幸男、横山ノックを押し上げ、メディアも「無党派層」と呼ぶようになった。これ以降、無党派層をどう取り込むかが政治の命題となり、平成15年の『マニフェスト』はこれまでの「地盤・看板・カバン」の選挙の在り様を問いかけた。

    平成21年の『政権交代』は、民主党が衆院選挙で「国民の生活が第一」のマニフェストを掲げ、消費税率は4年間上げないと明言して勝利し政権交代を実現させた。しかし、翌年の参院選挙では菅内閣が消費税率10%に言及し選挙は惨敗。続く野田内閣では消費税率を「2014年に8%、15年に10%」に引き上げる法案を成立させ、「国民の信を問う」とした衆院選挙は新党乱立もあって大敗を喫した。社会保障と税の一体改革は民主、自民、公明の三党合意でもあったので、安倍内閣は8%の引き上げを実施したが、10%はこれまで2度見送り、ことし10月に軽減税率と抱き合わせで税率引き上げの方針を打ち出し、今まさに正念場を迎えている。

    いくつかの課題を積み残しながら、次なる時代に入る。

⇒7日(木)夜・金沢の天気      くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする