1993年下半期第110回直木賞受賞作。
講談社刊、328頁の大作。
江戸の訴訟の実態を克明に綴った異色のサスペンスドラマである。
兎に角、とても面白い。
何か、自分が江戸時代の旅人宿の主人になったような気分になり(つまり、小説に没入し)ながら読んだ。
先にご紹介した北原亜以子さんの「恋忘れ草」同様、この時代の作家の実力の高さを実感させられた。
選者評:黒岩重吾氏
「(江戸時代の)民事の訴訟をテーマにした作品を読んだのは初めてだが、難解ではなく実に読み易い。とくにこの作品を魅力的にしているのは、旅人宿の主人、喜兵衛の人間描写にある。訴え出た地方の百姓も一見純朴そうだが実にしたたかで、この作者が人間を凝視する眼に曇りはない。」