天地を 照らす日月の 極みなく あるべきものを 何をか思はむ 

わびぬれば 今はたおなじ 難波なる みをつくしても あはむとぞ思う

今求められているのは真実に立ち返ること ~就任演説より

2009年01月20日 | オバマ
 なので、今日この日を見守っているほかの国々の人たちや政府に申し上げたい。壮麗な首都の住民から、私の父が生まれた小さな村の人たちにまで。皆さんに申し上げます。アメリカは、平和と尊厳ある未来を求めるすべての国とあらゆる男女や子どもの友人です。そして私たちは再び、世界をリードする用意ができています。(Applause.)
 昔の人たちは、ファシズムや共産主義と戦うにあたって、ただミサイルや戦車に頼ったのではなく、強固な同盟関係や、揺るぎない確信を拠り所にしていたものです。それを思い出してみてください。先達たちは、自国の力だけで自分たちを守れるものではないと理解していましたし、いくら自分たちに力があるからといって好き勝手をしていいというものではないとも理解していました。その代わり先達たちは、力というのは賢明に使えばこそ育つものだと理解していました。私たちの安全は、私たちの主張の正当性や、規範としての説得力から生まれるものだと、謙遜と自制という穏やかな資質から生まれるものだと。
 この伝統を守っていくのが、私たちです。もう一度この行動規範に導かれ、私たちはもっとさらなる努力と協力と国家間の理解を必要とする新しい脅威に立ち向かって行くことができます。私たちは責任をもって、イラクをイラクの人々に託していく、そのプロセスを開始します。そして私たちは責任をもって、努力して勝ち取った平和をアフガニスタンに築き上げていきます。古い友人たちやかつての敵対国と共に、私たちは核の脅威を軽減するために不屈に努力し、温暖化する惑星という恐怖を巻き返して行きます。自分たちのライフスタイルを言い訳して謝るつもりはないし、ライフスタイルを守るのに何を臆するつもりもありません。
 そして恐怖を広め、無実の人々を惨殺することで目的を果たそうとする連中には、今ここで言う。お前たちよりも我々の心は強く、決してくじけたりしない。お前たちが私たちよりもしぶとく生き残るなどありえず、我々はお前たちを打ち砕く。(Applause.)なぜなら私たちは、この国のつぎはぎな伝統が決して弱点などではなく、むしろ長所だと知っているから。この国はキリスト教徒とイスラム教徒と、ユダヤ教徒とヒンズー教徒と、そして信仰をもたない人たちが集まった国です。地球上のあらゆる場所からもたらされた、あらゆる言語とあらゆる文化で形作った国です。そして私たちは、南北戦争という内戦や人種隔離という苦汁をなめた末、前よりも強くなり団結して暗い時代からはい出た。その過去があるからこそ私たちは、古い怨恨はいつか必ず乗り越えられるものだと信じずにはいられないのです。民族の壁はいつか近いうちになくなり、そして世界がどんどん狭くなるに連れて、人類共通の人間性が表面に浮上してくるだろうと。新しい平和の時代を呼び込むため、アメリカも自分たちの役割を果たさなくてはならないと。そう信じずにはいられないのです。

 ムスリム世界に対しては、相互利益とお互いを尊敬し合う気持をベースに、新しく前に進む方法を探しています。対立を広め、自分たちの社会の問題を欧米のせいにしたい指導者たちには、こう申し上げる。国民は、あなたが何を滅ぼすかで指導者を評価しない。何を作り上げるかで、指導者を評価するのだ。(Applause.)腐敗と不正と批判意見の圧殺によって権力を死守する人々に申し上げる。あなたたちは、歴史に断罪される側にいる。しかしもし握っている拳を緩める気持ちがあるのなら、私たちは手を差し伸べるだろう。(Applause.)
 貧しい国の人たちへ、誓います。みなさんの畑を豊かにし、清潔な水が流れるようにし、飢えた人々を満たし、知識を求めてやまない体と心に栄養を与えるよう、私たちはみなさんと一緒に働きます。そして私たちのこの国と同じように比較的豊かだと言える国には、こう申し上げます。私たちの国境の外で苦しんでいる人々に、もうこれ以上無関心でいるわけにはいきません。またこれ以上無思慮に、世界の資源を使い続けるわけにもいきません。世界は変わったのだから、私たちもそれに合わせて変わっていかなくてはならないのです。

 目の前に広がる道を眺めながら、まさに今このとき、遠い砂漠やはるかな山岳で警備にあたっている勇敢なアメリカ人たちを思い、謙虚に感謝します。今の兵士たちは多くのことを教えてくれるし、アーリントンの国立墓地に眠る戦死者たちは時を超えて囁き続けています。兵士たちを称えるのは、私たちの自由を守ってくれるからだけではなく、自分たちよりも大きな何かに意味を見い出そうという意欲、貢献の精神を体現しているからです。そして今この時、私たちの時代を決定付けようというまさにこの瞬間、私たち全員がこの精神を宿さなければならないのです。なぜなら、確かに政府は多くのことができるし、多くのことをしなくてはならないわけですが、この国が究極的に頼みにしているのは、アメリカ国民の信念と決意のほどなのですから。それはたとえば、防波堤が決壊したときに赤の他人を自分の家に迎え入れる優しさだったり。仲間が職を失うのを見るよりは自分の勤務時間を減らした方がいいという無私な労働者の思いやりだったり。真っ暗な時代を私たちが乗り越えていくには、国民のそういう心持ちが必要なのです。私たちの運命を最後に決めるのは、煙が充満した階段に飛び込んでいく消防士の勇気もそうですし、あるいは子供を育てようという親のやる気でもあるのです。

 私たちは新しい課題に直面するかもしれません。取り組むための道具も、新しいものかもしれません。しかし私たちが成功するには、昔からの古い、勤勉や正直、勇気や公平、寛容と好奇心、忠誠と愛国心といった価値が必要なのです。これは、真実です。そういう真実こそが、私たちの歴史をずっと静かに力強く前進させてきたのです。今何が求められているかというと、こういう真実に立ち返ること。私たちに今求められているのは、新しい責任の時代に入ることです。全てのアメリカ人が、自分たち自身への責任と、国への責任と、世界への責任を認識することが必要です。嫌々、不承不承に責務を担うのではなく。難しい仕事に全身全霊を尽くすことほど、心が充実し、人格を作り上げてくれるものはないのだとしっかり認識した上で、進んで喜んで責任を受け入れることが、今必要なのです。
 それこそが、市民社会の負担と約束です。私たちの自信も、そこから来るのです。不確かな運命を自ら作り上げていくよう、私たちひとりひとりに神が求めてくださっているという、その認識に支えられているのです。私たちの自由と、私たちの信念には、そういう意味があるのです。なぜあらゆる人種と信仰の人々が、男性も女性も子供もみんなこの素晴らしいナショナル・モールにこうして集まり、一緒に祝うことができるのか。60年にもならない昔だったら、この近所のレストランで注文さえさせてもらえなかったはずの父をもつ男が、なぜ今こうして皆さんの前で最も崇高な誓いをたてることができたのか。(Applause.)

 なのでぜひ今日のこの日、自分たちが何者で、どれだけ進歩してきたか改めて心に刻んで、記念としましょう。アメリカが誕生した年の、極寒の月のことです。凍てつく川辺で消えてしまいそうな焚き火を囲んで、いくばくかの愛国兵たちが身を寄せ合っていた時のことです。首都は見捨てられた。敵軍は前進していた。雪は血で染まっていた。独立戦争の行方がもっとも疑わしかったその瞬間に、この国の建国の父は、兵士たちにこの言葉を読み聞かせるよう指示したのです。「未来の世界に伝えるべし。希望と善行しか生き残れないような厳冬の極寒の中、共通するひとつの危険に危機感を抱いた街と国は、危険に立ち向かうべく乗り出したのだ」アメリカよ。困難ひしめくこの冬にあって、共通するひとつの危険を前にした今、時代を超越したこの言葉を覚えておきましょう。希望と善行をもって、氷浮く凍てついた激流に再び挑んで、どんな嵐がやってこようとも耐えしのぎましょう。子どもたちの子どもたちが語り継いでくれるように。試練に遭って私たちは、この旅路の中断を受け入れなかったと。後戻りもしなかったし、ふらつきもしなかったと。そして地平線をしっかり見据え、神の恩寵を身に受けて、自由という偉大な賜物を携えて前に進み、それを未来の世代に無事に伝えていったのだと。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿