明治十五(1882)年建築の新蔵。
この蔵は素晴らしい建物で、入り口が観音開きの土戸を始めとして五重の扉で構成されている。
外部からは伺い知れないが、床下には瓶がいくつか埋め込まれていて、珍しい仕掛けとなっている。
平成元年の取材の際には、床板をはずしてこの目で拝ませてもらったが、何でも湿気対策らしいとのその時の話だった。が、以来今までそのような建物の仕掛けを他で見たことはまだ無い。
幸い、この貴重な蔵はこのまま残される。
ただ、長屋門は流石に江戸期の建物であるため、老朽化により解体のやむなきに至ってしまった。狭い通りに面して、万が一瓦などが落ちて周囲の方にご迷惑をかけては、という心配や維持費の問題など、事は一様ではない。
今回は町見郷土館の迅速な緊急対応により、最低限度の記録調査となりそうだが、佐田岬半島の近世史を彩る貴重な建築物が消滅する事の大きさを、多少の関わりを持つ中でかみしめている。