とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

「俺たちゃ忍者だ!~ズッコケ大作戦~」その4

2005年12月07日 01時03分28秒 | とんねるずコント研究
とにかくノリさんは、徹頭徹尾ボケ倒す。

屋根裏では薩摩藩のトラップにことごとくひっかかり、ゲロやうんこを食べてしまう(笑)。姫に自白薬を飲ませて巻物のありかを聞き出そうとすれば、けつまづいて自分が薬を飲んでしまい、「裸の金髪3、4人とハワイでのんびりしたい」と自白する。

わたしがいちばん好きなのは、巻物のある地下倉庫へ行けと命じられ、マイムで降りてすぐ登ってくるところ。
タカ「どんな階段なんだ村上!?」
ノリ「あさーいVです」
思わず噴き出してしまうタカさん…(爆)

見ている内に、もしかしていちばん遊んでいるのはノリさんで、見ているわれわれやタカさんすらも、ノリさんに遊ばれているんじゃないか、という気にさせられてしまう…。


さて、状況はめまぐるしく変わっていく。屋根裏、姫の寝所、地下倉への入り口、敵との乱闘、そして脱出…。場面転換は、ふたりがくるっと回転したりジャンプしたりするのに合わせ、一瞬暗転し、「ピュー!」という効果音が挿入されることによってなされる。ふたりの動きと目線、そしてパントマイムだけで、場面はあざやかに変わっていく。

このコントはストーリー自体は非常に単純だが、各場面での出来事がとてもていねいに考えられている。台本もしっかり作られており、展開もスピーディでテンポが良い。特に、敵に見つかり乱闘(?)になってからは一気に頂点までかけのぼる。

極め付けは、ノリさんがあやまってタカさんに手裏剣を投げてしまう場面だろう。ここは説明するとおもしろさが半減してしまうので、やめておきます。ともかく、たったふたりでこれだけの緊迫感を作りだしてしまう演技力は、圧巻の一語に尽きる。

『とんねるずのビデオ』の中で最初に観たのがこのコントである。真っ暗で何もない舞台を見た瞬間、わたしは「これはすごいかもしんない」という予感にふるえた。背後には黒いカーテン、舞台の板も黒っぽく、セットや大道具は一切おかれていない。とんねるずのふたりだけ、である。さらにはふたりの衣装も、忍者だからあたりまえといえばそうなのだが、全身黒ずくめである。ここでわたしは意外の感にうたれた。

一般的にかんがえれば、たとえば演劇において、役者が背景にとけこんでしまうような色の衣装はまず避けるのが常識だろう。ましてやこれはコントである。できるだけ目立つ色を、と考えるのが普通のはずだ。実際、赤やピンクの派手な衣装をつけた忍者コントは、だれしも過去に一度や二度目にしたことがあるだろう。しかしこの舞台設計は、そんな常識とはまるで逆をいっていたのである。

やや先走って言うが、ここに、苗場コントライブの特徴のひとつがあらわれていると思う。わたしはそれを引き算のコントと呼びたい。おもしろいものを足して加えてつくっていくのではなく、余分だと思われるものを削いで削いで削ぎ落として、極限までシンプルさを追求したコント、それが苗場でのコントだった。とわたしは思う。

そしてその特徴が最もはっきりと出ているのが、この「忍者」の舞台だ。同じ苗場でも、他のコントでは少なくとも椅子が1脚か2脚は置いてあるのに、「忍者」にはそれすらもないのだ。ひたすらに、石橋貴明と木梨憲武の動きと演技力と、そして魅力だけが頼りなのである。

さて、無事追っ手から逃れた半蔵と村上。薩摩藩の謀反の計画をあばくため、ノリさんが奪って来た巻物を意気揚々と広げる。と、そこには…ご覧になった方はおわかりでしょう。

ぶっちゃけて言うと、このオチは、タイトルと同じくややベタであることは否めない。これは、オチによって最後にどかんと爆笑をとってやろう、といった野心的なオチだとは言えないだろう。ある論者は「これはオトすオチではなく、"しめる"オチだ」と言っていたが、おそらくそれがもっとも正しい解釈だろうと思う。全編にわたって十分客を笑わせえたという自信があるからこそ、この'余裕'あるオチで、もう十分なのである。



おわり





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