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夢の羅列<階下に見える濁り池>

2016-05-20 19:43:34 | Dreams
夢の羅列<階下に見える濁り池>


つづき。

夢のつづきを書いているが、
構造が難しいので、あらためて説明を繰り返すと、

町屋の商店街にあるまるで空襲の後のように荒廃したトイレに入ったら、
コンクリートの床に大きな水溜りが出来ていた。

用を足して振り返ったら、水溜りはガラスのように階下を透き通らせていた。
その階下には大きな屋敷と池が見えた。

瓦礫だったトイレはいつの間にか数寄屋造りの屋敷の一部になっていて、
階下に見える池はおそらく1階になるのだろうが、しかし
私が立っているここも2階という感じではないので、もしかすると、
ひどく高低差のある土地に建てられた和風建築の屋敷なのかもしれない。
つまり、下も1階、ここも1階で、
屋敷の外に出ると急勾配の坂か階段があるのだろう。

池は茶緑色で、けっして澄んではいなかったが、
どこからか水が涌いているのだろう。
澱みは感じられず、濁りは底をわざと隠しているかのように見えた。

もしもこの不透明な水底に
何かが棲みついているとしたなら、それは魔物の類いではなく、
いつだったかに奥の部屋で命を終えた女の優しい気持ちではないだろうか。
というようなイメージを私は夢の中で柔らかく感じた。

池から目を移すと
縁側に老人が座っていて、釣り竿を磨いていた。

縁側の大きなガラス窓も、その奥の障子もすべて開け放してあり、
私はこんな造りだと冬はひどく寒いだろうな、となんとなく思った。

屋敷内は弛みも隙もない、といった感じではなく、
女手がないのだろう。掃除も行き届いてはいなかった。

おそらくは50年も60年もの歳月の果てに、
たった独り残った家主の手に余るであろう広さは清潔ではあるが、
何年も放っておかれた誰かの自転車や虫取り網などが立てかけられていて、
それなりに生活感はある。
いや、かつてここで生活があった名残が錆びた影のように朽ちていた。

私の目に映る釣り竿の男はまだ住んでいるのだが、しかし
本当はもう誰もいないのではないか。
それともそろそろ誰もいなくなることを屋敷自体が予感し、
心の準備を始めたような死の気配、それも
生々しいそれではなくて、静かに、古びた匂いとともに、
ただ消えてゆく、人知れずこの急勾配の土地に溶け滲み込んで、
後に残すのは苔だけであるかのような、
その苔だけを残すことがこの屋敷の最期の役目、
もしくは気概であるかのような、そんな決心を私は受けた。

鯉が身を翻した。
音と波紋が静寂を破った。

私は水溜りを飛び越えて、トイレから外に出た。

商店街は消えていて、そこは急勾配でもなく、普通の住宅街であった。

振り返ると、
先ほど説明した古い屋敷でもなくて、
普通の可もなく不可もない家から私は出たようで、門から路地に出た。

門前に粗大ゴミが積んであった。

目を引いたのは大きな鍵盤だった。

一音の鍵盤が長さ60cmほどで、5音ほどがユニットになり、
そのユニットがいくつか乱雑に積まれていた。

「ベースの足用鍵盤か」

それにしてもデカいな。

ゴミの中にもうひとつ興味を引く機械のようなものがあった。

鍵盤よりもそれの方が大事である気がしたのだが、
それが何だったか、目が覚めたら忘れてしまっていた。

終わり。
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