JUON NETWORK イベント報告

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おしっさまの里 森林の楽校2022秋11月

2022-11-26 | おしっさまの里 森林の楽校
11月26日(土)〜27日(日)に福井県越前市で行われた「おしっさまの里 森林の楽校」の報告です。
8名(内地元3名)の参加がありました。

参加者の声

■はじめに
 2021年の6月から開校となった『おしっさまの里 森林の楽校』ですが、今回で5回目の開催となります。
 私は1回目から参加しているリピーター参加者で、この『おしっさまの里』の開催を楽しみにしている1人でありますが、そもそもの参加のきっかけは知人からの誘いによるものでした。
更に元をたどれば、その知人から森林ボランティアの活動に誘われ、そこで森の活動に漠然たる興味を持ち、JUONの会員となっていくつかの活動に参加した後に、この福井のおしっさまの里へ参加することとなったという経緯があります。

 おしっさまの里に参加してみたいと思ったのも、「今まで行ったことのなかった福井という場所がどの様なところなのか見てみたい」という単純な動機が大半を占め、残りは森林への漠然とした興味であり、具体的且つ明確な目的やビジョン等はほとんどありませんでした(もちろん、森林についての知識や伐木等に関する技術を学びたいという気持ちは当然ありましたが…)。

 また"福井"についても正直なところ、実際に訪れる前の印象は薄く、"眼鏡の生産日本一"や"越前がに"といった全国的に有名なものが頭に浮かぶぐらいのもので、それ以外にはあまりイメージが湧かない状態でした。

 しかし、それが来てみてビックリ、広大な大自然を目の当たりにし圧倒され、福井特有の造りの家屋が立ち並ぶ集落の情緒ある風景にそこはかとなきノスタルジーを感じ、宿(山ふところ工房)の趣ある佇まいや福井の食材を使った料理に感激し、宿の女将やおしっさまの舞台である赤坂で活動されている地元の方々(赤坂森作りの会)、集合場所である赤坂みらい塾の風情がありながらオシャレな雰囲気、等々様々な魅力に触れ、なによりおしっさまの里の指導者である加登さんの魅力に惹かれ、影響を大きく受け…と、挙げればきりが無い程、福井の魅力にどっぷりと飲み込まれてしまいました。

 また、第1回目のボランティアの作業の中で加登さんから森作り・山作りのお話(先人たちが残した森を見て、どういう森が作りたかったのかというビジョン・メッセージを感じ取り(読み取り)、それを受け継ぎつつ、次の代へ繋いでいく(森作りの形でメッセージを残す)…というお話)を聴き、森作り・山作りの難しさと、その反面奥深さと興味深さを知り、林業というものに莫大なる興味を持つきっかけとなりました。

 そして、山や森、林業で必要となる様々な知識・技術を勉強し、できる限り習得したいという人生における新たな目的がここに誕生しました。
こうした訳で、この5回目のおしっさまの里の日程が決まった時にはすぐさま応募し、当然の様に参加することとなったのであります。

 さて、前置きがかなり長くなりましたが、次項から今回の活動に関する詳細、記録及び感想を述べていきたいと思います。

■活動に関する詳細と感想
▶1日目
 11月は竹を切るのに最適な月ということで、昨年の11月に引き続き、竹を扱う作業を行いました。
また、今回はおしっさまの里の指導者である加登さんが行っている『竹林整備実践講座』の講習と並行する形でJUONネットワークのボランティア活動が行われることとなり、講座の受講者とボランティア参加者が合同で作業に当たることとなりました。

 1日目の11/26(土)は日差し暖かく、日中は快晴。
作業を行うにはとても良い気候(やや暑いぐらい)でした。
ただし夕方から雨になる予報とのことで、少しそれを懸念しての作業スタートとなりました。

 作業場の竹林(集合場所である"赤坂みらい塾"のすぐ裏手の山中)へ移動すると、先ず、竹の特性や、そこの竹林の現在の状況についての説明がありました。その中で"緩衝帯"や"大通り"という聞き慣れない言葉が出てきました。

 竹林整備の方法について、竹は一気に広範囲を伐採してしまうと、タケノコが暴走する(伐採した分また生えようとタケノコがたくさん出てきてしまう)性質がある為、"緩衝帯"という場所(人が傘を差して歩いてもぶつからないぐらいの間隔で竹を生やしている状態)を作りながらある程度時間を掛けて徐々に伐採をしていく方が良い(そうすることでタケノコの暴走を防ぐことができる)のだそうです。

 また、伐採した竹を山から効率的に且つ(商品や製品にする竹を)傷つけずに下ろすことができる様に、"大通り"という(切った竹を円滑に通す為に、木の株や切残し等をなくし、なるべく凹凸の少ない状態にした)道を整備する必要があるということでした。

 この様に、竹はただランダムにあるいはただ端から根こそぎ伐採し、スピーディーに皆伐すれば良いというものではなく、作業道(作業しやすい環境)の整備や、緩衝帯の設置などのように順序立てて計画的に行わなければならないということを学びました。

 さて、この日行う作業は大きく分けて3つ
1.山の斜面(上)から竹を切り倒す
2.切った竹を斜面の下から引っ張り下ろす
3.切った竹をチッパーでパウダーにする
で、それぞれ3つの班に分かれ、途中で作業を交代しながらこれらを行いました。

 1.の作業ではチェーンソーを使用し、受け口を作り狙った方向に切り倒すという体験をさせていただきました。
チェーンソーを使用する上での危険性、注意点、使用方法、チャップスの着用など、基本的なことを教えていただき作業に当たりました。
当たり前の話ですが、手鋸で切るよりも圧倒的にスピーディー且つ少ない労力であっけなく切り倒せることに快感を覚えました。
不慣れなチェーンソーに緊張感を持ちつつも楽しく作業ができました。

 2.切った竹を斜面の下へ引っ張る作業では、"5倍力"というロープを滑車を用いて折り返すことで少ない力で木材等の大きな重量のある物を引っ張ることができるシステムを使用しました。
これにより、一人でも長く重い竹を引き下ろすことができるのですが、引く対象物(切られた木材)にロープを結ぶ際に、引っ張る(力が加わる、力を加えたい)方向を意識して結び目を作らなければ効率的に動かせないということも学びました。

 この手の(5倍力のような)物理学的な力の計算式や、ロープの組み方、結び方等についての理解は正直頭が追いつきませんでしたが、理屈としては理解できました。
今後改めてこういった部分の理解を深めたいと感じると同時に、ロープの結び方や目的に合わせた使用方法などロープワークについても学んでいきたいという意欲が湧きました。
また、こうしたロープワークを駆使することで、重いものを安全に引くことができるということを大昔の人が発見し使い続けていたということ(先人の智慧)に改めて驚きを感じました。

 3.では、1.2で取った竹をチッパー(竹を粉砕してパウダーあるいはチップにすることができる機械)に入れてパウダーにする作業を行いました。
竹には防虫効果や殺菌効果、土壌の改良効果等々、様々な効果が期待できる要素があるということで、これをパウダーやチップ、竹炭など利用しやすい形に加工することで用途に合わせて有効活用できるということです。
竹害と呼ばれるほど繁殖力が強く(竹の栽培を目的としていない森にとって)非常に邪魔な存在である竹を、この様に価値のある材として余すところなく活用できるというのは(もちろんそれ相応の手間や時間は掛かりますが)とても素晴らしいことであると感じました。

 1日目の作業は雨が降り出す前に終了時間を迎えました。
赤坂みらい塾にて1日の作業の締めを行った後、降り出した雨の中、近くの温泉施設へ移動。入浴した後に宿へと向かいました。

▶宿
 おしっさまの里で宿泊する宿(山ふところ工房)は、山と山とに挟まれた谷あいを流れる川(水間川)と、それをなぞるように走る一本道(この道はやがて行き止まりとなる)に沿う形で形成されている市野々地区の小さな集落の一角にあります。
車窓を流れる畑や山、そして福井特有の構造の日本家屋が建ち並ぶ景色を横目にこの道を進むと、やがて集落が途切れる最奥部に行き着きます。
そこで道を右に折れると、坂の上にひっそりと佇む古民家(宿)が現れます。

 宿に関する詳しい説明は(文章が無駄に長くなる恐れがある為)割愛しますが、まずその外観からしていかにも風情を感じられる古民家で、中へ入れば"かまど"や囲炉裏(厳密には囲炉裏ではないらしい)、土間、土間には臼や杵などが存在し、これらが醸し出す和情緒溢れる雰囲気に、ここへ訪れる人の誰もが「ここで過ごす時間が素敵なものになる」という予感で胸が踊ることと思います。

 そして、宿の佇まいだけではなく周辺の環境もとても素晴らしくて、初夏の頃にはホタルが飛び交う風景を見ることができます(この景色を初めて見た時には心から感動したことを覚えています)。

 また、早朝に起き出して眺める日の出前の外の景色―――朝もやの向こうに佇む山と薄暗い空とが見せる物哀しい表情―――は、美しさあるいは綺羅びやかさといった類のものとは異なるものの佳景であると言えるでしょう。

 こうした趣のある雰囲気と空間の中で、美味しい料理と地元のお酒に舌鼓を打ちつつ、共に作業を行った仲間たちと楽しく過ごすひとときは、他の何にも代え難い心満たされる時間になりました。

▶2日目
 1日目の作業終了後から降り出していた雨もすっかり上がり、2日目も(やや風は強かったものの)作業には支障のない好天気となりました。
この日も竹林整備実践講座を受講されている方々と合同で、前日に切った竹を"無煙炭化機"というものを使用し竹炭にする作業を行いました。

 無煙炭化機は円錐台を逆さにした形のステンレスの器(底面は上下ともに塞がれていない)で、この中で竹を燃やしていくことで(地面との接地面において隙間が生じないように土を盛るなどして内部に酸素が入らないように、内部のガスが外へ出ないようにする必要がある)煙を出さずに竹炭をつくることができる道具です。
無煙炭化機の構造については詳しく述べませんが、対流燃焼やステンレスの反射熱等により効率よく燃焼でき、内部で発生したガス(煙)を循環し再燃焼することで無酸素状態を作り、効率的に炭化させることができるのだそうです。

 使用方法は無煙炭化機(田んぼの土の上に置かれている状態)の底部分を周囲にある土で固め、その中で種火を作り、そこへ竹を投入して燃やしていけばよいだけ。
あとは何も手を加えることなく(最後に水を掛けて消火する作業が必要ですが)竹炭が作れるということでした。
その為、この日の基本的な作業としては、火の状態や頃合いを見て竹を投入し、状況を見守るというものでした。

 やがて用意していた竹をすべて投入し終わり、竹が完全に炭になったところで水を掛け、鎮火。
この時、しっかり水を全体に掛けていないと、上辺だけ火が消えたと思っても下方の見えないところで火が燻っている可能性がある(それに気付かず放置してしまうと、翌日には灰になり果てる)為、注意が必要ということでした。

 この竹炭作りには地元の方々も参加されており、竹が燃えて炭化するまでの時間は皆で雑談をしながら過ごしていました。なかなかこうして地域の方々と世間話をするような機会がない為、良いコミュニケーションの場になったと思います。

(竹炭の効果について)
 因みに、地元で林業や農業をやられている赤坂森作りの会の田中さんによると、水田に竹炭を撒いて作ったお米と何もしない(通常の作り方)で作ったお米とで"食味値(お米の成分を分析し、その割合などから美味しさを数値化したもの)"を計測・比較したところ、前者の方が高い数値(良い結果)が得られたということでした。
このことから竹炭を散布することで一定の効果が期待できるという結論を得たとの事でした。

■総括・感想
 今回の活動では竹藪の整備方法を学ぶことができました。
中でも、竹林はただ闇雲に皆伐すれば良い訳ではなくタケノコの暴走を考慮に入れて緩衝帯を作りながら伐採していくこと、大通りという作業道を作り作業を効率化すること、の重要性を学びました。

 そして、5倍力やもやい結びなどのロープワークについても学ぶことができました。
5倍力については4人対1人(5倍力使用)の綱引きを行ってみたり、もやい結びについては実際にロープを結ぶ練習をしたり、と実際に物に触れて体験することができました。
竹炭作りに関しては、無煙炭化機も竹炭作りも初めて体験するものであった為、非常に興味深く、今回見ることができて良かったです。

 また、この作業においては、竹が焼けて炭になるまでの時間を地域の方々とのコミュニケーションの場にできたことも良かったと思います。
作業とは直接関係のない様な他愛もない世間話をする機会は、普段(色々な地域のボランティアへ行っても)なかなか無いので、こういったこともとても大切であると感じました。

 おしっさまの里森林の楽校は、作業時間そのものは比較的短いのですが、内容は濃く、ボランティアがその日行う作業のみをピンポイントで学ぶということだけではなく、何のためにその作業をするのか、その作業が次にどのように繋がっていくのか、将来的にその森をどのようにしていくのか…等々、実際の林業の現場での作業方法や動きなどを交えながらお話を聴くことができ、非常に勉強になると思っています。

 長くなりましたが、今回(5回目)の福井のボランティアも自分にとって非常に実りあるものになりました。
森林への、そして林業への興味の扉を開いてくれたこの『おしっさまの里森林の楽校』へは、今後もできる限り参加していきたいと思います。


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