飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアはNATOとミサイル防衛(MD)で協力することで合意したが…

2010年11月22日 11時04分28秒 | Weblog
 ロシアとNATOはともに相手を「仮想敵」と位置づけていたが、リスボンで開かれた首脳会議で「対立に終止符」を打ち、ミサイル防衛(MD)分野で協力することで合意した。「史上初めて双方が防衛のために協力し合うことになる」とラスムセンNATO事務総長は強調するが、そううまくいくかどうか。

 そもそも双方が角突き合わせていたのは、米国がミサイル防衛システムを東欧に配備する計画を打ち出したことからだった。米国はイランの長距離ミサイル対策だと主張したが、ロシアは「対ロシア包囲網だ」と反発、「新冷戦」とも言われる対立に発展していた。
  
 それが改善されたのは、オバマ米大統領が登場し、ブッシュ政権とは違った協調外交を打ち出してからだ。まず、MDの東欧配備計画を見直し、ロシアとの関係を「リセット」したのだ。今回の首脳会議でNATOはロシアを敵とみなさない、新たな戦略概念を採択し、ロシアと欧州でのMDで協力することにした。

 だが、メドベージェフ大統領は「ロシアの参加は完全な対等でなければならない。フルメンバーとして参加し、情報を交換し、問題解決に責任を持つのでなければ参加しない」と表明している。この条件を米国や欧州の国防責任者は本当に守れるのだろうか。これまでの経過を考えると、非常に難しい気がする。

 22日のモスコー・タイムズ紙(電子版)によると、早くもロシアの防衛関係者から様々な問題点が指摘されている。たとえば、イランの長距離ミサイル開発についての認識からして米国とロシアとでは異なっている。米国はイランの脅威は現実的と見ているが、ロシアは長距離ミサイルの完成にはまだ何年もかかると見ている。さらに重要なのは、米国はロシアにNATOのMDシステム使用に関する拒否権を決して与えないと見ているのだ。これでは対等とはいえず、ロシアが怒り出すのは間違いない。

 さらに、08年のグルジア戦争に関しても、今だに欧米とロシアの対立は消えていない。これまでの歴史を考えると、防衛協力は一朝一夕に出来るものではない。とくにソ連圏だったポーランドなどの対露不信感は根深いものがある。それにもかかわらず、欧米とロシアとの新たな関係に期待したい。それがアジアにも広がることを願いながら。
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