ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の代表らは1月8日、首相官邸で石破茂首相と面会し、核廃絶に向けた行動を取るよう要請したが、明確な回答はなかった。首相は「究極的には核兵器を廃絶しなければいけないと思っている」と述べただけで、被団協側は「収穫はなかった」と、がっかりした様子だった。
核廃絶をめぐる国際的な会議として、3月に米ニューヨークで核兵器禁止条約の第3回締約国会議が開催されることになっている。このため、被団協の田中テルミ代表委員らは、この会議に政府からオブザーバーを参加させるよう申し入れた。日本政府はこれまで、この会議に参加していないことから、被爆80年の今年こそ参加するよう求めたが、最後まで明確な返事はなかった。
被団協代表委員の箕牧(みまき)智之さんは、面会の際、要請するだけでなく、別れ際に首相と握手する際にも首相の目を見て「参加をお願いします」と訴えたが、明確な返事を聞けなかった。箕牧さんは「がっかりした。言いっぱなし、聞きっぱなしという感じで、議論にはならなかった」と話していた。
面会後、林芳正官房長官は記者会見でこの問題について「他のオブザーバー参加国の状況も踏まえながら、現実的で実践的な取り組みとして、いかなる対応が適切かを予断なく検証している」と答えるにとどまった。この締約国会議は、核廃絶問題を協議する数少ない国際的会議だが、日本はこれまで一度も参加していない。
日本政府は唯一の被爆国として核保有国と非保有国の「橋渡し役」を自任しているが、核兵器禁止条約には核保有国が参加していないことを理由に参加していない。だが、ロシアとウクライナとの戦争でロシアが核兵器の使用に積極性を見せるなど、核兵器使用への危険性が世界的に増している状況だ。それだけに、日本政府としても、これまで通りの対応を再検討し、核廃絶に向けて積極的な手段をとる必要がある。(この項終わり)
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