2024年が幕を閉じた機会に、この1年間を振り返って見ると、我が国の最大のニュースは、ノーベル平和賞が原爆被害者でつくる「日本原水爆被害者団体協議会」(日本被団協)に付与されたことではないかと思う。日本政府ではなく、民間団体に世界的権威のある平和賞が贈られたことが大きな意味を持つことは間違いない。そこで、遅ればせながら、この受賞の意味するものを振り返ってみた。
日本被団協は、広島と長崎に世界で初めて原爆が投下されてから11年後の1956年8月に結成された。この背景には、「自らを救うとともに、自分たちの体験を通して人類の危機を救おう」という狙いが込められていた。そこで、田中照己(てるみ)代表委員らは国連など世界の舞台に出向き、身をもって体験した核兵器の非人間性を証言してきた。こうした努力が「ヒバクシャ」という言葉を世界に広める原動力になった。
一方では、我が国で被曝による国家補償は今だに実現せず、被爆者への「つぐない」はなされてこなかった。そればかりか、運動を支えてきた主要メンバーの多くは亡くなり、10年先には体験者として証言できるのは数人になるという状況だ。それ以上に、今にも核兵器が使われかねない事態が世界各地で起きている。特に、ウクライナと戦争を続けているロシアは、明日にも核兵器を使いかねない状況だ。
そうした事態にも関わらず、日本政府の核兵器に対する対応が遅れていると言わずにはいられない。核兵器禁止条約に加盟しないだけでなく、締約国会議へのオブザーバー参加にも消極的だからだ。いますぐに対応策を実行しなければ、日本政府は将来に大きな禍根を残すことになるだろう。これは政府だけでなく、国民全体の責任と言えよう。(終わり)
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