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『ほんとうは強い日本』田母神(たもがみ)俊雄著
2011.7.30 07:57
ほんとうは強い日本
■放射線への過剰な反応が国の弱体化に
元航空幕僚長で福島県出身の著者は東日本大震災後、何度も福島入りし、放射線医学の専門家らと意見交換しながら被災地を歩いてきた。その体験を盛り込んだ本書の第1章「荒廃に瀕(ひん)した故郷を前に考える」では、〈自ら風評被害を引き起こしている〉政府の対応を厳しく批判。放射線への過剰な反応がわが国の弱体化につながる恐れを指摘している。
初版2万部で7月半ばに店頭に並び、すでに1万部増刷が決まった。PHP研究所新書出版部の前田守人編集長は「ズバズバとハッキリものを言う方なので、そこに期待が集まっているようです。保守層に訴えるとともに、放射線の影響についても注目されているのが好調の要因」と分析する。
低線量放射線の影響については専門家の間で見解の相違があるが、仮に微量でも放射線には悪影響があるとすれば「全国のラジウム温泉、ラドン温泉などは直ちに閉鎖を迫られることになる」と素人にもわかりやすい例で説明。放射線によってではなく、避難に伴う負担で死者が出ている現実を直視するよう主張してやまない。
著者の知人で定年間近の東京電力社員は、周囲が止めるのを聞かず、自ら志願して原発の事故現場に赴いた。「私は東電社員だったために子供2人を大学に入れ、自宅も構えることができた。いま東電の命運がかかっているときに、会社を見捨てて自分だけがいい思いをするわけにはいかない」との理由からだという。こうした人たちに、著者は日本の強さを見る。そして大災害や国際紛争などの有事に対応できるよう、憲法改正が必要だと訴え、そこへ至る手順も提示している。さらに大震災からの復興財源についても持論を展開。あとは政治を立て直せば、強い日本を取り戻すことができると主張している。(PHP新書・756円)
溝上健良
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