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今日は春の彼岸だけど、「彼岸花」の思い出

2007-03-21 12:53:31 |  映画随想
 相も変わらぬ小津ジャンルから一歩も出ぬ作品である。そこには社会性が皆無。純粋の日本家庭の小さな起伏を描いた箱庭的映画である。その家庭はブルジョアそのもの。これが普通のスタッフ、キャストならば、平々凡々何ら顧みることのない作品となろう。

 憎々しいけど、やはり名匠小津安二郎ともなると、抵抗を覚えつつも、その水際だった鮮やかさ、寸分の隙もない堂々たる風格に、ついその世界に連れ込まれてしまう。そして演技陣の厚さと、細やかな人間心理の表現力に参ってしまうのだ。

 話と言えば、頑固な父親(佐分利信=好演)が、娘(有馬稲子)の恋愛に反対するが、最後には若い力の前に屈服するという、只それだけの内容だ。しかしその間、彼の妻(田中絹代=好演)との微妙な心の揺れや、学友との友情(笠智衆が目立つ)等を取り混ぜて、如何にも暖かい雰囲気を醸し出す。

 家族揃って箱根へ行くところ等にその一端が伺われる。又浪花千栄子、山本富士子の母娘のエピソードも面白く、これがあるために画面も明るい。
 優れた色彩は特筆もの。柔らかい中間色を基調とした色調は、この作品に一層の落ち着きを持たせている。(1958年観賞直後に記す)←今から思えば、若気の至りの文でした。

 その後、佐分利信が演じた平山渉と同じ立場になった私は、この映画の深さに打たれたものでした。小津監督は、観る人に考えさせるのだ。と。
 その数々の作品の燻銀のような光沢は、歳と共に磨かれて鈍い光を一層強めていくようである。

 追記:今日、本を読んでいたら、小津安二郎監督の晩年の映画は、脚本が野田高梧、撮影が厚田雄春と組んだものが多いと書いてあった。そういえば、この作品もそうだ。脚本は野田高梧と共同で脚色している。

 お互いの気心が知れ、チームワークが取れて、息がぴったりと合った中から、奥行きの深い作品が生まれるのだろう。そうした中から、後からじっくりとした味わいが滲み出てくるのかも知れない。

 1958年.松竹[監督]小津安二郎[撮影]厚田雄春[音楽]斎藤高順[出演]佐分利信。田中絹代。笠智衆。浪花千栄子。有馬稲子。佐田啓二。山本富士子。桑野みゆき(他)[上映時間]1時間58分[私の評価]82点(2007年3月21日追記)

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2 コメント

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こんばんわ (kju96)
2007-04-10 00:58:46
小津作品は、落ち込んだり、アイデアを出したい時
など何十回と観る作品です。
この作品も・・ファッションやライフスタイルなど
今でも新鮮に感じます。
京都と東京の設定も小津らしいのですが、
ウィットに飛んだ会話にほろっとさせる人間模様。
良いですね。桑野みゆきが可愛い、有馬稲子と山本富士子も美しいし、田中絹江と佐分利信も渋い、
中村伸郎が良いですね。
勝手にコメントしてますので・・・申し訳ありません。

小津安二郎監督 (アスカパパ)
2007-04-10 11:18:53
名監督を取り囲む名優陣。そして名スタッフ陣。ここから素晴らしい映画が生まれるのですね。

若かりし頃、一時、洋画一辺倒だった時代がありました。
そんな時に、たまに邦画を観ると、日本家庭とその家族に焦点を当てたような作品が多く、それを視野の狭さと錯覚していたようです。

映画は不思議な生きものだと思います。後になって光を放ってくる作品もあれば、一度観ただけで忘却の彼方に抜けていく作品もある。
Aという人は絶賛しても、Bという人は「?」と思う作品もある。
でもそれが、映画に嵌った人間にとっては、堪らない魅力なんだと・・。

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