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シェーン

2005-06-05 19:35:12 |  映画(サ~シ.)
最近は西部劇というジャンルの映画が見られなくなった。寂しい限りである。あれから52年、人間の感性も随分と移り変わった。今もしこの映画を初めて見る方が居られたら、どのような感想を持たれるかは甚だ疑問ではあるが、1953年10月7日、京都宝塚劇場で初めて見たこの映画の興奮は、今も私の胸に息づいている。

何処からともなくふらりと現れたシェーン(アラン ラッド)が、スターレット(ヴァン・ヘフリン)一家の窮地を救って、また何処かへ去っていくというストーリーは、日本映画で言えば差詰め『座頭市』か。所謂股旅ものに過ぎない。でも何が半世紀以上も私のこの心を動かしているのであろうか。と、考えてみた。

映画はオープニングが、エンディングと共に重要なポイントを占める。この映画のオープニングは、クラシック音楽で言えば差詰め前奏曲だ。眼下に広がる青々としたワイオミングの草原。背後に白雪を抱く峰峰が連なる。背を向けた男が一人馬に跨り谷間の道を降りていく。

主題曲「遙かなる山の呼び声」が木霊する中、クレジット・タイトルが流れる。(昔は冒頭に流れた)。谷間に水浴びをする鹿。銃で狙う少年。ジョイ(ブランドン・デ・ワイルド)だ。シェーンが少年の家に着くまでの数々のショットが実に丁寧。これから起こるであろう出来事に思わず期待を高めさせる。

その期待を裏切らない内容が待っている。大自然に抱かれた農民達の生活を描く詩情。殊更に高く轟く銃音で盛り上げる酒場でのスリルとサスペンス。雷鳴などの自然や、犬などの動物、大道具小道具類を巧みに使ったその巧さ。そして極めつけは5分の3秒というシェーンの早撃ちの見事さだ。

その底辺に、シェーンとジョイ少年の心の交流が坦々と流れる。この映画は童心の視野から大人の世界を俯瞰的に眺めているのが実に鮮やかに写る。父を殴ったシェーンに憤るジョイが、母(ジーン・アーサー)から事の真実を聞き、謝ろうと酒場に駆けつけるところなど心温まる味がする。

そして彼の有名なエンディングへ。「シェーン!カム・バック!」のブランドン・デ・ワイルドはもうこの世に居ない。2005年5月14日記

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【2009/7/3追記】=1953/10/7観賞当時の私の拙文。

美しいワイオミングの平原と山々を背景に、そこえ突然現れたシェーンが、
正義感の強いスターレットが無頼漢と戦うのに組し、自ら禁じていたピストルを遂に放ち、また何処へともなく去って行く。
スティーヴンス監督の冴えた手腕は、西部劇始まって以来と騒がれる傑作を生み出した。

1.初めの頃のシーンで、少しの物音でも腰に手を回すシェーンの描写。
2.ジョーイのシェーンに対する尊敬感(好演技)。
3.スターレット夫人の好意。
4.スターレットの正義感。3人の家族がシェーンに寄せるそれぞれの愛。
5.農民の生活の実態。
6.シェーン(アラン・ラッド)の演技力の素晴らしさ。(静→動。沈→活)。
7.農民の死に際する埋葬式のシーン(カメラの優秀さ)。
8.小屋の中の大格闘と、最後の撃ち合い(壮烈無比)。
9.そしてシェーンが、ピストルの名手ウィルソンに打ち勝ち、スターレットの敵クリスを倒して、ジョーイに励ましの言葉を残し、またワイオミングの高原を、ジョーイの「シェーン、シェーン」の山彦を聞きつつ去っていく最後のシーン。
10.シェーンがジョーイ少年と別れる時に言った言葉、STRONG----STRAIGHT----それを涙顔で頷くジョーイ少年の姿。
等々。
芸術娯楽両面に於いて申し分のない映画であった。
95点。
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10 コメント

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こんにちは (マーちゃん)
2007-11-25 14:46:44
西部開拓者の風景なのに、現代の私たちに懐かしさを感じさせてくれますね。今は希薄になった家族の結びつきが懐かしいのでしょうか。心に沁みる映画ですね。
出演者たちに負けない演技を披露した犬にも拍手を送りたいです。決闘をジョイ少年と一緒に見つめる表情が可愛かったです。
マーちゃん、こんにちは。 (アスカパパ)
2007-11-25 15:31:45
いま初めてこの映画を観られる方があれば、是非古き良き時代の感覚をご理解して欲しいと、願うや切です。

マーちゃんの仰る通りです。
人間以外に、犬や馬も大活躍でしたね。
馬に乗って決闘に向かうシェーン。後を追うジョイ。犬も追う。星空の下を・・。
そして、ジョイと共に決闘を見つめた犬・・埋葬されるトリーにも冥福を祈っているようでした。
名優ですね。このワン君!
何回も観ました (十倉茂明)
2008-04-15 21:10:37
シェーンの撮影地、グランドティートンへ行ってきました。撮影に使用したログキャビンは焼失していました。ワイオミングのプレーリーに立たずむ私の心中には遠い日の春愁の記憶が甦り、不覚にも、ぐっと胸にくるものをおさえることは出来なかった。まさに、懐かしのセンチメンタルジャーニーであった。
十倉茂明さん、こんにちは。 (アスカパパ)
2008-04-16 09:38:22
はじめまして。コメントありがとうございます。
「シェーン」は私も何度も観ています。
シェーンの撮影地にも行かれたのですね。感無量の心地になられたのが伝わってきます。
また見たくなってきました。
さきほど戻りました。 (DCP)
2008-05-15 23:57:14
パパさんのブログ更新がないのでちょっと心配です。無理に返信なさらなくて結構です。
さてこの作品、私には大いに不満な点があり、ある種とても俗っぽくしていると感じます。
耐え切れず遂に旦那(バン・ヘフリン)は親分の所に行こうとする。自分が行くからとシェーンは旦那を殴り倒す。ここで奥方が「私の為に行くの?」とシェーンに尋ねる。私ここが大嫌いなのです。少年に奥方は「シェーンを好きになっては駄目よ」と忠告しますがあれは自分にも言い聞かせている訳だし旦那自らが「お前らはお互い好意を持っているのは俺にも分かる」的な発言もありましたね。この作品には「昼ドラ」のような俗っぽい「男女間の情愛」は全く不要と思うのです。ボロ屋であっても夫婦は勤勉で努力もありそこそこの生計も成り立ち(つまり西部開拓魂)、近隣からは信頼も厚い、又純真な少年までいて「どこの馬の骨」か分からない流れ者に思慕の念を持つのは立派な「背信行為」なのです。シェーンと少年との心の交流が描かれているから(更に描写があれば良かったが)通俗な浮気心は要らないと思います。後年、同監督は「ジャイアンツ」でロック・ハドソンが家族揃って食堂に入ったは良いが人種問題で店のマスターにこてんぱんにやられる。が、しかしここではケンカの勝敗ではない。言うまでもなく家族を守る父親、否、「男の意地」とか「誇り」なのです。E・テーラーに「惚れ直した」と言わせしめる。良いシーンです。もしかしたら監督はシェーンで描けなかった「失敗」をジャイアンツで述べたと考えるのは早計かしら。そんな訳でシェーンは家族揃って見られる作品とは思いません(笑)。次はジョークです。「シェーン、カンバッーク」と言われ「じゃー、済まないけどあと2、3週間いさせて」と頼まれたら旦那と奥方はどんな顔をするか。 パパさん、シェーンには少年と別れてから「死亡説」と「生存説」が世界的にあるのをご存知ですか?。私は全く知らなかったし昔は気が付きませんでした。死亡説は、シェーンも撃たれている、腕をだらーっと垂らしている、墓場の方に向かっている、今にも落馬しそうだと言う理由です。皆さんよくご覧になっているし想像力が凄いですね。でも近年公開されたケビン・ケーシー?の刑事物「交渉人」では人質を取ってビルに立て籠る警官に対して別の警官が気持ちを和ませる為に「死亡説」のシェーンの話題を投げ掛ける・・。いかにもアメリカ映画!ですね。
まあー長々と申し訳ございません。相変わらず独断と偏見切にお詫び致します。

DCPさん、お帰りなさい。 (アスカパパ)
2008-05-16 11:48:16
お気遣い有難う御座います。私は元気です。が、最近ちょっと忙しい毎日を送っています。といっても、現役のDCPさんに比べたら大したことはないのですが。私なりに地域社会のボランティア的な仕事や、同窓会の幹事とかで、振り回されています。私は隠居の身の上なのに、心は青春、人生は勉強なり。をモットーに、なるだけ社会と関わり合いを持つよう心がけております。その結果、4月は新年度で、諸団体の仕事が集中し、それが5月まで尾を引くのですね。今月末まで会合等があり、パソコンも1日1回だけ触るように努めていますが、好きな映画もここ2カ月ほど観ていません。でも来週からは小康状態になる予定ですので、ブログの更新もしたいと思っています。

さて、「シェーン」に対する堂々たるDCP論、拝読しました。言われて居ることは理解できます。例えが悪いかも知れませんが、私も「アリスの恋」を観たとき、アリスの心理が理解出来ませんでした。でも理解される方も居られます。一つの映画から受け取るものは、その人によって千差万別だと思います。私は監督の演出にマインド・コントロールされたのでしょうか?。そういう疑問は感じませんでした。(笑)「死亡説」と「生存説」については、聞いたことがあります。ワイオミング高原の彼方に自動車が走っていたのが小さく写っていたとかいう話も。名作にはいろいろ尾ひれがつくものですね。ではまた。
初めて観ました (スタンリー)
2009-07-03 09:46:58
久しぶりにいい映画を観ました。日本映画の影響があると感じました。アスカパパさんの評、すべてに同感です。面白さという点では「七人の侍」にも匹敵します。黒澤監督が言っていたような、うな丼の上にトンカツとステーキを乗せ、ビーフカレーをかけたような満足感のある映画・・・ でした。
スタンリーさん、こんにちは。 (アスカパパ)
2009-07-03 10:32:30
コメントありがとうございます。
今まで気がつきませんでしたが、そう言われれば、仰る通りですね。日本映画の影響を私も感じます。黒沢監督のその言葉も有名ですね。
ご同感いただき嬉しいです。
私も先日のNHKBS放映をまた観ました。私にとってこの映画は、京都宝塚劇場で観た1953年10月7日の興奮から止まったままです。
シェーンは最高の癒しです (むーあへっど)
2013-11-21 09:04:03
私も一時期西部劇に血の気を求めていました。
バット・ベティカー、ラオール・ウォルシュ、ロバート・アルドリッチ・・・そんな心の疲れきった時に観た「シェーン」。

最高に心を癒されました・・・今まで反抗期だった私はなんだったんだろうという最高の名作です。
申し訳ありません (アスカパパ)
2014-01-13 16:41:35
映画の記事を八十路スタジオに移転後、こちらのブログ管理はサボりがちです。
視力低下のため即応出来ません。
何卒ご容赦ください。

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シェーン (嗤う生活)
初めて観た西部劇はシェーンだったと思います。小学生の頃だったかしら・・・・。子供が主役の「小鹿物語」「汚れなき悪戯」「禁じられた遊び」などをTVで観ていた記憶があります...