アスカ・スタジオ

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荷車の歌

2008-07-30 14:35:56 |  映画ナ行
 製作費を当時の全国農家婦人の資金協力によって作られただけあって、生活感情が滲み出るような映画に仕上がっている。田圃の耕作ひとつ採っても、鍬を振るセキ(望月優子)の汗が滴るようである。

 ロング・ショットが威力を発揮しているからだ。こんなことを言っては悪いが『北の零年』では、開拓婦人が鍬を重そうに挙げたところでカット。次のショットは鍬を土に下ろした綺麗な手だけが写る。
 もしこのような撮影だったら、乳飲み子を荷車に乗せ、幼児の助力で坂道を登るセキの労苦はさほど感じなかったと思う。

 荷車が馬車に駆逐され、その馬車の姿もやがて貨物自動車に消されていく。明治時代の中期から昭和の戦後にかけて、時の流れが鮮やかだ。「篭の鳥」の歌や軍歌。麦踏みの情景や盆踊りの情感。茂市(三國連太郎)との間に二男二女を設けたセキという女の生涯は正に一編の人間詩だ。行き場を無くした茂市の愛人ヒナ(浦辺粂子)が呟くように唄う「ゴンドラの唄」も哀れを誘う。

 山本薩夫没後25年ということで、その特集作品を数編改めて観て来た。戦後有名な東宝争議の犠牲者だけあって、激しい思想は伺われるものの、その根底に宿すは常に弱者の味方。成瀬巳喜男監督に師事された成果が、多くの作品に漂う豊かな詩情となって反映されている。

 1959年.日(新東宝)[監督]山本薩夫[撮影]前田実[音楽]林光[出演]望月優子。三國連太郎。左幸子。岸輝子。奈良岡朋子。浦辺粂子[上映時間]2時間25分[私の評価]81点

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2 コメント

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アスカパパさん、こんばんは (もく)
2008-07-30 20:48:16
この映画は観ていないのですが、アスカパパさんの記事を読んで
北の零年が凡作になってしまった訳が分かりました。
もっと良い映画にできたでしょうに、もったいなかったですネ~。
荷車の歌、十日くらい前にWOWOWで放映してましたね。81点なのですね。録画しておけば良かったです


もくさん、こんにちは。 (アスカパパ)
2008-07-31 16:52:52
そうです。10日ほど前の放映を観た感想です。録画されませんでしたか。私もそういうことが再三です。

ところで、おっしゃるとおり、「北の零年」は惜しい映画でしたね。
ほかにも、吹雪吹き荒ぶ極寒シーンでも、主役さんの風貌が臨床的でなかったと思います。私はその時「八甲田山」の北大路欣也と比べていました。その差異が歴然でした。
渡辺謙と吉永小百合の考えようや行動も不可解なところがありました。

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