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あにいもうと

2009-04-11 16:57:36 |  映画(ア)
 この室生犀星の原作は4度映画化されている。
①1939年「兄とその妹」島津保次郎監督。
②本作品。
③1956年「兄とその妹」島津保次郎脚本。
④1976年「あにいもうと」今井正監督。
である。

 ③を除き未見だった。
 島津作品は人物設定が原作とは違うようだ。原作により近い本作を観られたのはよかった。
 リアルタイムだとより佳かったが。そういえば当時に鑑賞していたら何とも思わなかったであろう事象が、妙に懐かしかった。

①地道に水打つ風景(車の跡の砂埃)。
②団扇。
③女性のシュミーズ姿。
④少女のおかっぱ姿。
⑤少年の褌姿(川遊びが出来る時代だった)。
⑥蝿叩き。
⑦掻き氷。パン一個十円の貼札(ラムネ10円。サイダー25円。ゆで卵15円)。
⑧竹貼りの下駄。
⑨アイスキャンデー売りの自転車と、棒状のアイスキャンデー。
⑩元祖的パチンコ台。
⑪風鈴。
⑫井戸で冷やされた果実。
⑬当時爆発的に流行った歌「トンコ節」。
⑭幅太ズボン(私も履いていた)。
⑮木製の雨戸。
⑯キセル。
⑰ずんぐり型のバス。(さすがに木炭バスではなかったようだ)
⑱陣笠型セードの白熱電灯。
⑲赤座(山本礼三郎)が店内で佇むそばの一銭菓子ケース。
等々。

 それだけであれば、単なる懐古趣味にすぎない。それらの中から鋭い人間洞察力のようなものを酌み取れるようである。

①マイカーなんて無い時代。だからバスが活躍する。「バスはこの先を左に行くんだぜ」と、殴りつけた小畑(船越英二)に教える鯛一(堀雄二)の言葉が沁みる。
②「誰かに見られるといけない」時代だった。だから、もん(京マチ子) と、さん(久我美子)の姉妹に、思わず人間としての情けをかけたくなる。
③「どっちもどっちだあ」と嘆く姉妹の母りき(浦辺粂子)に、哀れみの美学のようなものを感じる。精霊流しのあの情感。
④そして何よりも、大喧嘩をする兄、鯛一と、妹、もん。二人の心の雪解けに、じんと来てしまう。

 「松竹に小津は二人いらない」と言われ、東宝に走った人間成瀬の意気込みが潜在している。(この作品は東宝争議の影響で「稲妻」(52)と共に大映)。
 「ヨーイ、スタート」の声も静かに撮ったと聞く成瀬巳喜男監督。
 この映画に再三登場する乗り合いバスのように、地味で目立つことの少ない方だったかもしれない。
 でも私は好きだ。娘の名前を彼の作品からつけたぐらいだもの。

 1953年.日(大映)[監督]成瀬巳喜男[撮影]峰重義[音楽]斎藤一郎[出演]京マチ子。久我美子。森雅之。山本礼三郎。浦辺粂子。船越英二。堀雄二[上映時間]1時間26分[私の評価]80点

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2 コメント

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細かい描写 (スタンリー)
2009-04-11 21:20:10
のご指摘、恐れ入ります。画面がよみがえってきます。私の生まれる前の風俗ですが、昭和30年代の私が幼児のころでも同じようなものでした。ラムネの値段も10円でした。この映画では兄弟の取っ組み合い大喧嘩のシーンが、私の観て来た成瀬監督の作品では、最もダイナミックな演出で驚きました。この映画が4度映画化されていることは知りませんでした。短い尺の映画なのに、大作のような充実感がありました。
スタンリーさんへ (アスカパパ)
2009-04-12 11:14:04
過分のお言葉を頂戴しまして光栄です。

あの大喧嘩には私も思わず眼を見開きました。
ただ一点だけ、あれだけ兄に殴られても、傷ひとつつかない妹の頬を見て、ほんの一瞬だけ違和感のようなものを感じましたが、、。
それにしても、兄と妹の間の恩讐を超えた愛に感じ入りました。私も天国の妹を思い出しました。

1976年の今井正作品も、水木洋子の脚本とのことで、こちらの方も機会があれば観たいと思いました。

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