アスカ・スタジオ

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張込み

2005-08-09 07:37:21 |  映画(ハ~ヒ.)
暑い日が続きます。この映画は、列車や旅館にエアコンも無く、新幹線も無かった時代に創られました。扇風機、扇子、団扇、日傘などの小道具類を駆使して、蒸し暑い夏をものの見事に表現してくれたこの映画。
警察庁の下岡刑事(宮口精二)と柚木刑事(大木実)は、質屋殺しの石井(田村高広)を追って、夜行列車に乗り込みます。そして佐賀の横川さだ子(高峰秀子)の家の前で張り込むこと1週間に及びます。

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日本の犯罪劇映画も此処まで進歩したかと喜ばしい。昨年(1957年)『脱獄囚』があったが、これは更に格調も高く重量感あり。洋画に勝るとも劣らぬ作品だ。今までこの種映画の常識ともなっていたアクション重点主義を打ち破っている。

未検挙殺人犯が昔の恋人に会う可能性があるのだ。宮口精二と大木実の老若二刑事が、女の家の前に張り込む。泊まり込む佐賀の木賃宿からの鳥瞰は『裏窓』に通ずる覗き趣向が新鮮。犯人の昔の女に扮する高峰秀子(好演)は、今は愛情も無い夫に仕える後妻。元気無く、何の張り合いも感じられない。

ここまでに至る過程説明も丁寧だ。新聞記者の追跡を避け、横浜から夜行列車に乗り込む二人。東海道から瀬戸内海、そして九州へ。各地の駅や昼夜の風景を簡潔に織り込み、現地まで二十数時間も費やすその遠隔感をリアルに出している。出勤する夫の長い影が写る朝、暑い昼間の実感も鮮やか。

身分を隠す刑事と、疑う女主人と女中。退屈させぬスリルがある。ただ、刑事の声が大きすぎる嫌いがある。外出する女を尾行。法事でがっくり。真夏の白昼の感じがヴィヴィッドだ。大雨の中を夫の会社へ傘を持って行く。晴れてしまう。夫婦間の冷たい関係が巧みに感じ取れる。ユーモアも面白さもあり飽かせぬ。彼女が家を出る時や、手紙が来た時の緊張感は、黛敏郎の音楽も効果的に手伝い強烈だ。

1週間が過ぎる。持久戦に決断を付けた下岡刑事は、本庁へ連絡すべく佐賀署へ赴く。その間に柚木刑事は、何時もの様に買い物篭を下げていない彼女の外出姿を発見する。山の温泉宿へ苦心惨憺の追跡。祭りで姿を見失う焦り。爆破作業で足踏みさせられるいらいら。猟銃音を心中の音と錯覚するスリル。二人を発見。無理心中を匂わせるサスペンス。巧みなお膳立てだ。

ラブシーンもまずまず。田村高広扮する犯人石井が捕らまる時の高峰の演技は抜群。井上晴二は、シネスコでモノクローム画面という形式を巧みに利用して、ギラギラした真夏の光と影を気分たっぷりに見せてくれる。

この松本清張の原作が、息つく間も無いような鮮やかさで、一気に凝視させる作品に仕上がったのは、滑らかな橋本忍の脚本と、鋭い閃きが迸る野村芳太郎監督の演出によるものであろう。プロローグとエンディングも洋画式で新鮮。水も漏らさぬ出来映えに近く、新春(1958年)を飾る佳作である。

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1 コメント

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はじめまして♪ (ルールー)
2005-09-15 21:37:54
銀座の東劇でやっていた「野村芳太郎監督特集」でわたしも観賞しました。



最初は「え?オチはココに繋がるわけなの?」なんて思ってしまいましたが(汗)、観る者をずっと惹き付けて離さないストーリー展開は、やはりさすがでしたね。



こちらの記事は本当に細かく描写されていて、いろんなシーンも蘇ってきますね。

素晴らしい~

すみません、TBさせていただきました。

なにとぞよろしくです~

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『張込み』(野村芳太郎監督特集@東劇) (ルールーのお気に入り)
刑事の下岡と柚木は、質屋殺しの主犯が逃亡した共犯者が別れた女に会いたいと漏らしていたという証言を聞いた。二人は、女がいる佐賀に飛び、さっそく彼女への張り込みを開始するが……。九州の果てまで凶悪犯を追って苦闘する刑事たちの姿を、スリルとヒューマニズムで描く