アスカ・スタジオ

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落ちた偶像

2005-08-31 07:47:52 |  映画(エ~オ)
 妻を迎えに大使が館を出発するとき、父を見送るフィルが館内を動き回るのに連動して、主な舞台となるレイアウトを紹介するのが巧い。

 整然とした市松模様のホールの床、見事にカーブした階段、彫刻欄干のある踊り場、左端の突き出たエリアに聳える針葉樹の植木鉢、その先の危なげそうな回転窓、蛇の蜷局のように外壁を折れ曲がる非常階段、中世期の城を思わせる塀を巡らせた屋上、豪華な調度品が散在する室内など。

 特に踊り場からホールを見下ろす鳥観風景はサスペンスの盛り上げにも一役買う。フィルがペットのマクレガーと名付けられた蛇を床に這わせるシーンも何かの予感を感じさせる。

 「アフリカに居た時、正当防衛で反乱黒人を刺した武勇談」等話してくれるベインズ使用人(ラルフ・リチャードスン)は大好きだが、口喧しい夫人は嫌いなフィルだった。
 夫婦との食事中に、夫人と一悶着起こしたフィルは喫茶店で、ベインズとタイピストのジュリーの話にしつこく絡む。口止めされたに拘らず「組み立て模型を買ってあげる」に、喋ってしまうフィルでもあった。

 でも大人たちは「あの子は大丈夫」と思っている。動物園から帰ったフィルはマクレガーが居ないのに気づく。兎に角この少年、何処か大人びたところがある。「全部知ってるのね、子供のくせに」とフィルのベッドに現れたベインズ夫人は、やがて見つけた夫に「女を連れ込んで」と迫る。

 回転窓や非常階段から眺めるフィル。植木鉢を倒し零れた土を踏み回転窓に取り縋った夫人は、その弾みで階段を転げ落ちて死ぬ。ここからぐっと盛り上がってくるのは流石キャロル・リード。

 フランス語を話す大使館内は治外法権にも拘らず、ロンドン警察は捜査を進める。「ベインズが夫人を押した」と思いこんでるフィルは「これも正当防衛?」と尋ねたら「ジュリーのことは言うな」と念を押される。

 階段の手摺りを何気なく擦り指紋消しもする。夕食の席が3つ在ったことから不明の一人を追求する刑事。「帰宅が1日延びる」との夫人の電報紙を紙飛行機にして飛ばしたのが、針葉樹に引っかかる。隠そうとしたのが逆に飛行し刑事のもとへ。

 ジュリーの存在が判る。「彼はやっていない」と刑事に食らいつくが相手にされない。ベインズの武勇談も嘘だと知った哀れなフィル。 彼の偶像は音を立てて崩れてしまったのである。植木鉢から零れた土の夫人の靴跡から事件は解決する。

靴跡を消すフィルの耳元に「フィリップ、ママよ」の懐かしい声。-- The End --。フィルから見た大人の世界は「なんとまあ」ではなかったろうか。 マクレガーが活躍しなかったのは期待外れだったけど、大人の世界を風刺した佳作といえよう。
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