MIN LEKPLATS

& Patrick Chan is the ONE

氷の孤独その8

2011-02-12 09:59:56 | 氷の孤独
心配 この秋、アドリアンの愛する魚達が普通でない様子だった。ポンプが汚れた中古の水槽を買ったせいで病気になったんじゃないかと彼は恐れている。
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サポート アドリアンがコーチと別れた後、彼のフェイスブックの壁は何百人という世界中のファンからの激励の言葉で埋められた。
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グルドヘーデンの散らかったアパートで、アドリアン・シュルタイスは冷蔵庫からPower King-スーパーチェーン店Willisで売っているエネルギードリンクRed Bullの廉価版-の缶を取り出した。
「こういうのしょっちゅう飲んでるから、もうほとんど効果も感じない」と彼は言う。「だけど、本当に難しいジャンプをやる時はちょっと感じるな『Red Bullは翼をくれる(訳者注:CMの謳い文句)』って」
アドリアンに何度か会った今、この人スポーツに巡り合ってなかったら大変だったかも知れないな、という印象を持たずにいるのは困難だった。アドリアンは自らの人文科学的側面:服装デザインとか絵を描く、を伸ばしてみたいとも思っていたと言う。しかし、数日前にフィギュアスケートをやってなかったら何をしていたと思うかと問うた折には、彼は笑って「アルコール依存者かなんかになってたろうね」と答えた。
彼は簡易キッチンの外にある小さなドリンクキャビネットを指した。
「今はもう飲まない。十代の者がよくやるように、かなり早い時期に(飲み)始めて数年続けた。だが身体が受けつけなくなった。飲むとその後2,3日練習出来なくなるんだ、毎回ね」
アドリアンが15歳の時、一家はティブロに引っ越した。アドリアンはフィギュアスケートに賭けるため、両親の家を出る決意をする。三年前にこのアパートを見つけるまでは、『感じの良い老カップル』の家の中にある『リネープラッェン脇の鼠の穴』に住んでいたんだという。
今日22歳のアドリアン・シュルタイスはSOKから毎月支給される6000クローネで生活している。SOKはそれ以外に彼のコーチとアイスリンクの時間の費用を払ってくれる。アドリアンは収入を増やす為に何か仕事をしたいのだが、練習が大きな時間を占めるし、ほぼ3週間に一度は試合で旅に出なければならないので、その閑がない。
「もっと(良い)何かを人生に期待していた、ただ金銭の為だけじゃなくて。便所掃除以外ならどんな仕事でもやるつもりはあったんだ。だけど、誰が俺なんかを雇いたいと思う?」
「俺の生活を見てみてよ!車もない、いつも練習練習。スポンサーを探したけど(見つからなかった)。自分だけで金(メダル)には行き着けないよ。これから何年も続けるなら、USAに引っ越すしかないな。これ(フィギュア)で金を稼げるようになりたいんだ。GP大会で5位以内に入ったら金が貰える。が、俺は6位、9位、11位・・」
アドリアンは飲み干したパワーキングの空き缶をゴミ袋に投げ込み、玄関の床からスケート靴を拾い上げた。みぞれの降り注ぐ中をバス停に向かう途中、私はクリストファー・ベルントソンの成功が若い頃の彼にとって刺激になったかと尋ねた。アドリアンは素っ気なく、他の選手にはたいして興味がない、『彼に注目してなんかこなかった』と言った。が、彼は依然としてクリストファーがスウェーデンで贔屓されていると思っていた。
「去年俺はナショナル(のタイトル)を盗まれたんだ。俺は良い滑走だったし、奴は3つも大きな失敗をした。ショートの後の奴の点数を見た時は、もうそのまま立ち去って試合を棄権しようかと思ったよ。俺だって頑張ってるんだ、だのにどうしても俺の点数は奴みたいに伸びない」
同時にアドリアンは、ここ数年スウェーデンのフィギュア界を支配してきた二人の対立ではあるが、もうそれにこだわるのは止めるべきなのだと知っている。クリストファー・ベルントソンがそうであったように、彼もまた(今季)スウェーデンで一番良い滑走をしている選手が、二人のうちのどちらでもないことを驚きつつも認めた。

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4 Comments

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2011-02-13 12:22:34
>Red Bull翼を与えずさん

毎度素晴らしいHNで(笑)
シュルのインタは金(銭)と金(メダル)がどっちもキーワードとして頻繁に出てくるのでややこしくてしょうがありません。
結局彼の鬱病の直接原因は金欠病だったんだな、なんて診断を下しつつあったりして(笑)

月6000クローネで生活しなければならないとしたら、確かに大変ですね。下手なアパートだったら家賃だけで大半がとんできそう、ま、彼は安いとこに住んでるんでしょうけど。倹約とか計画経済できるタイプとはとても見えないですしね。
でも、大変なのは彼だけじゃない、みんなそれぞれ知恵を絞ってやりくりしてるわけだから、彼も彼なりの道をみつけるしかないですよね。文句言ってても始まらない。

お察しの通り次はいよいよ第三の男の登場です(笑)
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こちらでは・・・ (ぴよ)
2011-02-13 14:35:22
朝方にショックを受けた人が多いと思われる日本です 笑

ノルディクスの映像が見れていないのでよくわかりませんが、皆完璧な演技ではなかったようですね。
中でもクリスは・・・(T_T)
最後になるんだろうし、ぜひ東京に来てもらいたいんですけど、どうなるんでしょう・・・(-_-;)

しかし、こちらの記事を読ませていただいてると、クリスよりもシュルタイスの日常生活が心配になってしまいます(笑)
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お仕舞い ()
2011-02-13 15:08:47
ぴよさん

クリスの今季(そして恐らくキャリアも)はこれで終わりでしょうね。
・・なんてあまり断定し過ぎると後で「えっ?!」となることもあり得るので(奴の執念は底が知れんからな)注意すべきなんでしょうけど(笑)

ベルントソンとシュルタイスはお互いから学ぶべきことが山のようにあります。意地張って無視し合うことでどれだけ損してきたか、判ってるのかお前ら?!
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正直な気持ち ()
2011-02-14 01:12:46
>またえさん
(そしてクリス・ファンの皆さん全員へ)

ほんときつい結果になりましたね。
クリストファーは精神的にも肉体的にもぎりぎりのところで闘っていて、もう余裕がないんだと思います。そんな中、ユーロで崩れたのをノルデックスで持ち直すのは、不可能とは言わないまでもかなり難しかったでしょう。それでも絶対弱音を吐かず「大丈夫、大丈夫」と言い続ける健気な彼なだけに尚更胸が痛いです。
奇跡を願いましたが、SPでアクセルがきっちり決まらなかったと知って、これは厳しいなと覚悟しました。トリプル・アクセルに見放されたらベルントソンには生きる道がありません。

>正直なところ贔屓と罵られていいのでコッフェ来て欲しいです

お気持ちはよくわかります。感謝したい思いです。
でも、正直いって今の私は彼を日本に行かせるのが怖いです。東京で自爆する彼だけは見たくないので・・
それに、これでクリスがワールドに行ったら、マヨ君に対してあまりに不公平なのでは?とも。
ま、決めるのは私ではないわけで、最終決定が出るまではあれこれ言うべきではないのでしょうけど。

ベルントソンについて思うことは一杯ありますが、それはもっと落ち着いてから(そしてあの厄介な翻訳をやり終えてから)ゆっくり書きたいと思っています
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