MIN LEKPLATS

& Patrick Chan is the ONE

氷の孤独その10

2011-02-13 15:14:23 | 氷の孤独
フィギュア家族 協力が巧くいくように、マヨロフ一家は役割を分けることを決めた。「家では母親だけど、リンクではコーチに徹するわ。その時には彼に痛むところがあっても何も言わない。そういうことは練習が終わってから話すようにしているの」
55‐56頁写真


アレクサンドルは早くからとても大きな可能性があることを示した。練習では世界級の演技ができる、しかし試合でそれを見せるのが難しかった。ユーロの後、彼は父親と共に精神面の訓練に力を入れ、同時にアレクサンドルは順次大きな試合での経験を積んでいった。今年の彼は国際試合で、スウェーデンの他の競争相手よりも明らかに良い結果を出している。
オペラFurst Igorの曲に乗って、アレクサンドルと彼の10歳の弟二コライが氷上に滑り出した。二人は氷上に後ろ向きで完璧な8の字を描いていく。CDプレイヤーのそれぞれの脇にリブにもたれ掛かって彼らの両親がいた。二人の隣には聖ペテルスブルグから訪ねてきた祖母が立っている。マヨロフ一家もルーレオ・ホッケーチームの練習時間に合わせねばならないのはご同様だが、それでもこの地の練習の機会はユニークだった。スウェーデンの何処を探しても、このように良質の氷の張った室内リンクが隣接して4箇所もある場所など他にはない。しかも更に2つのリンクが2マイル内に存在するのだ。
練習は統制された自己表示だ。アレクサンドル・マヨロフは彼の筋肉質な上体を強調するタイトで光沢のあるセーターに身を包み、軽く正確な動作と共に滑る。トリプル・アクセルで転倒し、アレクサンドル・シニアが首を振りながら息子を呼び寄せた。がらんとしたアリーナに響かせて片足で床を叩きながら、父親は明確な指示をいくつか言い渡した。
アレクサンドルは再度速度を加え、跳び上がって三度回転した後柔らかく着氷した。
「今度はOKだ!今度はOKだ!」両手を交差させて父親が言った。
「だが、もう一度やってみなさい、もっと膝を使って柔らかく」
その後、彼の母親がフリー・プログラムでの動作を丁寧にチェックした。
「もっとリラックスしなさい。お芝居なんだけど、あくまでも自然な感じで。猫みたいに爪を立てるところでは、眼一杯”Grrrrrr”ってやらないと駄目。そういうことがとっても大事なのよ」
彼女は音楽を何度も始めからかけ直して、踊りとともに両手を上体に沿わせて動かし審査員に愛嬌を振りまくプログラムの前半を、憶え込めるまで繰り返して演じさせた。
「まあまあね!でも視線を忘れないで。審査員とちゃんと視線を合わせるのよ。遠慮なんかしていては駄目。学校では恥しがり屋でもいいけど、氷の上には別なルールがあるんだから。さあ、もう一度!」
アレクサンドルがリンクを降りた時、私はナショナルの一番の競争相手二人と彼との関係を尋ねた。
「僕がここまでこれたのはクリストファーとアドリアンのお陰だ。彼らに勝つ為に練習してきたんだ。そのお陰で上達できた」
「だけど、彼らのことはよく知らない。どちらもあまり心を開いてくれないから。アドリアンはクリストファーと話したがらないし、クリストファーは僕と話そうとしない。以前は、僕とアドリアンは合宿で結構仲が良かったんだ、他の参加者が寝ている間にテープでベッドに縛り付けたり、目覚まし時計の時間を変えたり、髭剃りフォームを彼らの手にスプレーして顔をくすぐったり。彼は他の者と違い僕と似てちょっとやんちゃで、ヒップホップ風な装いをしていた。でもその後競争相手になったら、彼は僕と話すのを止めてしまった。残念だけど」
話している間に、家族全員が更衣室に集合した。祖母はニコライとふざけている、アレクサンドルはウールの分厚いセーターを身体に密着した赤タイツの上に羽織った。
「今僕は世界で25番めぐらいのランクだと思う。だが、本当に良い演技さえ出来たら、もっと高いところに位置することが証明されるはずだ。僕の最初の目標はナショナルで優勝すること」

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4 Comments

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ほんとだ ()
2011-02-14 16:57:19
-拍手ご返事-

魔物大暴れさん

女子えらいことだったんですね。
ヘル姉妹の1位2位は揺るがないと信じて疑わなかったので確認も怠ってました。メルちゃんの追い上げは予想してたけど、ヨシを抜くのは無理だと思ってたし。
ほんとフィギュアって恐ろしいスポーツですね・・

仰せの通りスケ連はワールド選考で頭を抱えそうです。女子もいよいよ2枠では足りない時代突入・・ま、嬉しい悩みでしょうけど。

とは言え、ヨシとクリスでは状況がかなり違うと思います。ヨシの今回の大ポカが完全な青天の霹靂だったのに対して、クリスのはユーロの二の舞で、しかもナショナル前も不安定だったわけですから。いや、せっかく出てきた(?)希望を潰すつもりはないんですけど。

クリスのキャリアがここでこんな終わり方をするなんて、そりゃあ私だってもの凄く嫌ですが、思えば08年のユーテボリ以来引き摺ってきたこの重荷・・いくら我慢強い彼でももう限界ではないかと思うんです。もうちょっと見てられない。
重要なのは結果ではなく過程なんではないかと、最近の彼をみていて思います。そりゃ直後はずいぶん落ち込むだろうけど、時間を置いた後には本人も納得するんじゃないかと。

「倒れる時は前屈みになって倒れよ」と星一徹さんも仰ってましたし、矢吹丈君にとっても燃え尽きて真っ白な灰になることがボクサーとしての最終目的だったわけだし・・
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Unknown ()
2011-02-15 22:03:01
レラさん

仏教はこっちでかなりブームなんですよ。エキゾチックに感じるんでしょうかね。
靴下の話聞かれたことがおありですか?なんか凄い伝統ですよね・・

こうやって見ていくと、サーシャってかなりまともな普通の子って感じですものね。人見知りの激しい変人二人を先輩に持った彼の苦労がちょっと察せられた気がしました。
シュルと二人でやったという悪戯ってのもかなりですけどね(笑)
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初めまして (STU)
2011-02-16 16:06:54
興味深い記事の紹介ありがとうございます

シュルタイスの性格で思い出したのは
テニスのソダーリン(ソーデルリング?)。
彼も超変人、人見知り?(ナダルからの挨拶も無視したとの伝説も)、キツイ話し方で有名です。
スウェーデンはそういう人が多いのでしょうか?
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変人王国 ()
2011-02-16 16:47:33
STUさん
初めまして、コメ有難うございます。

スーデルリングはずっと才能はあるんだけど感情にむらがあるので駄目、と言われていたのが、マグナス・ノルマンをコーチにして以来人が変わったように安定してきて大ブレイクしたんですよね。でも、その名コーチとも結局巧くいかなくて(?)袂を分かちました。そういえばこれもシュルタイスとシンクロしていますかね。

でも、テニスに限っていえば、SWEはボルグ、ヴィランデル、エドベリときてずっと紳士的なイメージだったんですよ。ロビンは例外です。
私もよくは知りませんけど、彼って確かに面白い人ですね。ナダルとの仲は、ナダルがだらだら時間を長引かせたのに業を煮やしたロビンが、ナダルの物まねを(試合に最中にですよ)やってみせたのがそもそもの始まりだったような。
でも、シュル太に比べれば彼はずっとまとも(あ、シュルご免)だと私は思ってるんですけど。思ったことをはっきり表現するってだけのことで(笑)

SWEに変わり者が多いかどうかというのは、私には判断しかねます。変わり者ってどこにでもいるじゃないですか。
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