自由と平和、生存と共生のために

「誰もが人間らしく生きられるためには」という視点から、さまざまな社会問題についての情報をお届けします。

貧困の背景にあるもの

2021-01-17 22:54:54 | 反貧困
 企業は利益追求のため、人件費を少しでも減らそうとします。そのため、低賃金で働くパート、派遣、アルバイトなどの非正規労働者が増えました。最低賃金に近い水準の給料で働く「ワーキングプア」も多いのです。非正規で定型的な仕事に就いていると、いくら努力して働いても昇給しない、あるいはわずかしか昇給しないことも多いでしょう。
 正社員・正職員として働いていたが、長時間労働・過重労働でメンタルヘルスを悪化させて退職、その後、就労が困難になったり低賃金労働者になった方も多いでしょう。
 昨年、学校が長期間にわたって休校となりました。低所得の家庭ではさまざまな困難が生じました。親が子どもの学習面などを十分に支援できない、学習塾に通うだけの経済的余裕がない、家庭が学習に集中して取り組める環境ではない、パソコンがなくてオンライン授業が受けられないなどです。家庭の経済格差が学力格差の原因となり、学歴の格差、社会に出てからの収入の格差へとつながっていきます。
 今回、緊急事態宣言の発令によって、飲食業などのアルバイト・パート従業員の多くがが収入を減らしたり失
職すると予想できます。
 「貧困は自己責任」という考えではいつまでたっても貧困問題を解決できません。
「死ね、ということですか?」。年末年始コロナ困窮者支援現場の悲痛な声 ハフポスト

緊急事態宣言よりも緊急医療体制整備を

2021-01-10 10:30:47 | COVID-19
 今回の緊急事態宣言により、飲食業に従事する人びとの生活が大きな打撃を受けることは確実です。すでに、昨年7~9月期に非正規雇用は125万人減少、年収100万円未満の就業者が109万人減少しています。貧困問題のさらなる深刻化が予想されます。
 COVID-19の原因ウイルスはもともと一般的な風邪の原因ウイルスです。冬季に流行するのは自然なことです。もし感染しても安心して診療を受けられる医療体制をつくるのが優先的な課題です。
 現在、「コロナ対応が可能」としているのは公的病院では7~8割。しかし、民間病院では2割弱です。こうした現状においては、緊急に対応病床を確保して医師・看護師と医療機器を配置しなければなりません。民間病院をすみやかに公的管理下に置いて、必要な診療を患者に提供できる体制を整備するべきです。病院への経営支援や看護師などの労働条件改善も確実に実施する必要があります。

病床の多い日本でなぜ「医療崩壊」が起きるのか
  東洋経済

もしホームレスになったら

2021-01-08 21:25:05 | 反貧困
 家賃が支払えないなどの事情で住居を失う方が増えています。野宿(路上)生活、車上(車中)生活、ネットカフェ・定額宿泊施設・倉庫などで暮らすなど困難な生活を送ることになります。
 役所によって「居住実態がない」と判断されると住民票が抹消(消除)されます。自治体の住民であることを否定されるのです。選挙人名簿からも抹消されて選挙権を失います。住民票を必要とする手続きができなくなります。
 昨年の10万円定額給付金は住民登録がされていることが受給要件でした。多くのホームレスの方が受け取れなかったと推測できます。

真冬のコロナ拡大の中で…これから「住宅難民」が続出するかもしれない  鷲尾香一

コロナ禍、届かなかった10万円 路上で聞いた諦めの声  朝日新聞

 野宿(路上)生活をしていると、暴力や暴言の被害を受けやすいことは先日の記事に書きました。
 最近、公共の場のベンチにひじかけを付けて、人が寝ることができないようにしているのを目にします。社会的排除のかたちのひとつです。
 ぎりぎりの生活の場を行政によって奪われることもあります。これまで、行政代執行という形式で野宿者に対して強制立ち退きが行われた例がいくつもあります。
1996年 西新宿地下道(東京都新宿区)
2005年 白川公園(名古屋市)
2006年 靭公園・大阪城公園(大阪市)
2007年 長居公園(大阪市)
2010年 宮下公園(東京都渋谷区) 
2012年 竪川河川敷公園(東京都江東区)
2016年 花園公園(大阪市西成区) 

渋谷区による宮下公園の行政代執行に抗議する  LabornetTV

【渋谷区長選】ホームレス排除について考える  大西連

食事支援・居住支援・相談支援を再度訴えます

2021-01-08 17:53:59 | 反貧困
 COVID-19の流行が続いているため、深刻な生活苦におちいる方が増えています。特にサービス業に従事する非正規労働者、特に女性労働者が収入減、失職などに見舞われています。今回の緊急事態宣言によって、飲食業従事者へのダメージが予想されます。ここ数カ月、自死者も増えています。生活苦はメンタルヘルスも悪化させ、自死の要因になります。
 このブログでは昨年4月から、生活苦の方への食事支援・居住支援・相談支援の重要性を訴えてきました。行政、公的機関、社会福祉協議会、学校、民生委員やNPO、ボランティア団体、専門家(法律、福祉、医療、心理など)などが連携・協力関係をつくり、アウトリーチ(援助を求めるのがむずかしい人びとに、積極的にはたらきかけること)の手法も用いて実効的な支援体制をつくるべきです。子ども食堂への支援、宿泊施設・空き家を活用した居住支援、公共の場での相談会、ネットやチラシを使ったわかりやすい情報提供などできることはたくさんあります。行政の窓口も相談担当職員を増員すべきです。

2度目の緊急事態宣言。コロナ長期化で日本で「飢餓」が広がっている  TBSラジオ

1杯のうどんを子どもと4人で…母たちを襲うコロナ貧困の現実   及川夕子

「精神安定剤を大量に飲まないと眠れない」“コロナ貧困”にあえぐ27歳女性
  女子SPA!

「貧乏なのは努力が足りないから」という考えの誤り

2021-01-03 17:21:56 | 反貧困
 今回の感染症の流行によって、特に宿泊・観光・飲食・各種サービスなどの業界で、多くの労働者が失職や収入減などの影響を受けています。もともと、非正規労働者、女性労働者が多い職場であり、家賃を支払えない食費にも事欠くといった生活苦におちいる方が増えています。ここ数カ月、自死者が急増している要因でもあると考えられます。

 39歳女性、家賃滞納で路上生活に「このまま私、死んじゃうのかな」…あぶり出された日本の貧困  樋田敦子 弁護士ドットコム

 ところが、「貧乏なのは本人の努力が足りないから。」こうした自己責任論が空気のように広がっているのが現実のようです。
 しかし、自己責任論によって、貧困当事者たちは自尊感情を傷つけられ、恥辱感を植え付けられ、自己非難や社会不信におちいることになります。そして、当事者が何らかのかたちで援助を求める意志を押しつぶしてしまいます。誰にも相談できない、各種の支援制度を利用しないといったかたちで当事者を追いつめてしまいます。

 また、貧困を生み出す社会的要因、例えば利潤追求優先で人件費をどこまでも減らそうとする経済システムなどが「問題」とされなくなります。そして、貧困の本質的な解決から遠ざかることになります。

 自己責任論の誤りを正していくことは重要な社会課題だと思います。

 下記の記事もご参照ください。

「貧困は自己責任」と断じる人の浅すぎる思慮  印南敦史

「貧困女子高生」バッシングの無知と恥〜「ニッポンの貧困」の真実  大西連

これが本当の「貧困」だ! 女子高生バッシングで分かった日本社会の闇
  大内裕和