自由と平和、生存と共生のために

「誰もが人間らしく生きられるためには」という視点から、さまざまな社会問題についての情報をお届けします。

女性差別事件としての草津町議リコール運動

2020-12-25 23:06:05 | 共生・反差別
 群馬県草津町議会議員が町長からの性被害を訴えたところ、他の議員らがリコール運動を起こし、住民投票の結果、当事者議員は失職しました。

 このリコール運動の本質は「女性が性被害を訴えることは許されない。そのような女性は社会的に排除されるべきである」という女性差別にあります。この事件は、当事者の公的地位を剥奪(はくだつ)する社会的暴力というかたちの女性差別事件です。法制度、多数決を用いて形式上合法的に差別を実行したという点で、狡猾で悪質であるといえます。地方自治法で定められた直接請求権(リコールなど)は住民自治の理念を実現するための仕組みです。当然ながら、差別をするために存在するものではありません。また、この事件が数多くの性被害女性たちに沈黙を強要するという「見せしめ」的役割を果たすおそれも大きいでしょう。
 形式上合法的な方法といえば、近年、選挙運動という場を利用して差別的な宣伝を行う候補者が現れています。合法性という仮面を着けた差別行為に私たちは鋭敏でありたいものです。差別を差別として認識できないままだと、いつまでも差別をなくすことはできません。

 かつてナチスは、選挙(多数決)によって政権を掌握し、その後、凄惨な差別犯罪を実行しました。ナチス支配下のドイツを逃れた政治哲学者ハンナ・アーレントが語った「本当の悪は平凡な人間が行う悪です」という言葉をまた思い出しました。

草津町議会の差別的状況については下記の記事をご参照ください。

まるで現代の魔女狩り? 性被害を訴えた草津町議会女性議員へのリコール 北原みのり