7月19日、この日は大会前遠足の「フリータイム」である。一日自由行動というわけだ。参加者の多くは「雲の列車」に乗ることになった。この費用が一人1,580ペソ、約16,000円である。
早朝6時から朝食、6:20にタクシーに分乗して駅へ。座席は指定されていてほぼ満席である。定刻の7:05に発車。まだ外は暗い。まずコーヒーとパンなどの簡単な朝食が出た。コカ茶を飲み、コカの葉も配られた。これを口に含んでいると高山病対策になるという。
アルゼンチンでもペルーでもそうだったが、コカ製品は普通に売られている。コカキャンディーなどは空港の免税店でも売っている。コカの葉自体は何の問題もないというが、コカインの原料としてたいていの国では持ち込みが禁止されている。とくにアメリカで発見されると場合によっては拘束されかねないから絶対に持っていくなと言われた。
雲の列車はスィッチバックを3回ほどしながらどんどん高度を上げていく。最高地点は標高4,220mに達する。乗客は450人だという。帰りも列車にするとサルタ帰着は深夜になるが、我々はバスで帰る予定である。
山々の雄大な風景やサボテンの群落などを楽しんでいると、トンネルの中で突然止まってしまった。脱線だという。高度は3,800mほどであろうか。すぐにでも復旧するようなことを言うのでしばらく待ったが、トンネル内は機関車の排ガスが不愉快なので下りて外に出た。太陽が暖かいが空気は冷たい。
1時間ほど経ったところで乗客達が歩いて戻りはじめた。1時間くらい歩くとバスに乗れるという情報。エスペラントのガイドに聞いたら6kmだという。それで我々も歩き始める。線路上を歩くので緩い下り坂である。高地なのであまり急ぐと呼吸が苦しいが、快適なハイキングである。しかし、こんな時にはとりわけ元気になる妻の足取りが重い。高山病らしい。高山病は、まず気力がなくなる。この景色が楽しめないのだ。
私の感覚では8kmほどあったと思うが、約3時間で車の来ているところに到着。列車に残っていた人たちがトラックで「救出」されてきた。ある人は高山病で歩くどころではなかったらしい。バスでサルタへ。
ホテルに着いたのは夜の9時、レストランでポークステーキを食べてみたが、硬くて美味しくなかった。
この事故のために通常10月まで運行される雲の列車は、この日で今年の運行が打ち切りになった。来年は再開されると思うが、確かではないらしい。また料金1.580ペソは全額返金された。私としては終点のボルボリージャ鉄橋からの絶景を見ることはできなかったが、景色とハイキングまで充分に楽しんだ上に料金が戻ってきて言うことはない。
写真は脱線した列車が見えるトンネル。