エスペラントな日々

エスペラントを学び始めて23年目である。この言葉をめぐる日常些事、学習や読書、海外旅行や国際交流等々について記す。

死の船

2018-09-12 | 読書ノート


 読書ノートは B.Traven 原作の長編小説「Mortula sxipo」 ドイツ語からの翻訳である。原作者の B.Traven について、日本ではほとんど知られていないのではないかと思う。Traven 自身、作家にとっては作品がすべてで作家個人は重要なことではないとして、自身については全く語らなかった。そのため、どこかの王様の私生児、逃亡した犯罪者、革命家だとかいったうわさまで流れた。もっとも確からしい経歴は、1882年生まれ、ドイツで Ret Marut の名で俳優・演出家として活躍していた(Traven はこれをも否定したという)が、次第に強くなるファシストの圧力を逃れてイギリスに渡り、社会運動に加わった。エスペラントに訳した Hans Georg Kauser によれば、ここでの経験とエンゲルスの著作「イギリスにおける労働者階級の状態」が彼の作品に大きな影響を及ぼした。Traven は1924年にメキシコに渡り、その後の生涯を過ごした。彼の作品にはメキシコの虐げられた人々を描くものが多い。いくつかの作品は映画化されている。
 1925〜6年、ドイツの出版社に Traven の原稿が送られ始めた。多くはボツにされたが、1927年には一つの雑誌で連載された。この当時ボツにされた「La trezoro de la Sierra Madre」は、後にハンフリー・ボガート主演で映画化された(日本語タイトル「黄金」)。ドイツで労働者向けに安くて良質の本を発行しようと1924年に創立された出版協同組合がこの作家に関心を持った。要請にこたえて、Traven は「死の船」を20日間で書き直し、彼の最初の単行本として1926年4月に発行された。4週間で10万部が売り切れて再版が続き、20か国語以上に翻訳された。

 小説はアメリカの船員 Gale がどこかの Sinjoro(旦那)に一人称で語る形式である。ストーリーは分かりやすくユーモアに富むのだが、船員独特の表現やスラングが多くて細部は分かりやすいとは言えない。訳者による詳細な注がつけられているが、これがかえって分かりにくくしている感じを受けた。作品の背景や作者の意図を必要以上に解明しようとしていると思う。巻末に単語解説と船員用語の解説がつけられているが、ほとんど参考にしなかった。
 一読の価値はあると思うし、おそらく日本語訳は出ていないので、エスペラント訳は貴重だと思う。
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