漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 467

2024-07-26 05:19:10 | 貫之集

春の暮るる日

あすもくる ときはあれども はなみつつ くれぬるけふは をしくぞありける

明日もくる 時はあれども 花見つつ 暮れぬる今日は 惜しくぞありける

 

春が暮れる日

明日という日もあるのだけれど、春が終わってしまう今日という日を、花を見ながら惜しいと感じる。

 

 第四句は「なれぬるけふは」とされている写本もあるようです。ただそれだと意味がよくわからないですね。^^;;


貫之集 466

2024-07-25 05:36:02 | 貫之集

山吹

うつるかげ ありとおもへば みなそこの ものとぞみまし やまぶきのはな

うつる影 ありと思へば 水底の ものとぞ見まし 山吹の花

 

山吹

水に映る姿があるということは、水底に山吹の花が咲いていると見ることもできようか。

 

 第二句は、「ありとおもはずは」となっている写本もあるようです。「影が映っていると思わなければ、水底に咲いていると見ることもできる」となるので、意味としてはそちらの方がスムースなように思います。


貫之集 465

2024-07-24 06:06:08 | 貫之集

田作れるところ

あらをたを かへすいまより ひとしれず おもひほにいでむ ことをこそおもへ

あらを田を かへすいまより 人しれず 思ひほに出でむ ことをこそ思へ

 

田を耕しているところ

農民が新しく開いた田を耕している今から、稲の穂が出て実るときのことを人知れず思っているように、私の人知れぬ思いもいつか外に現れてしまうだろうと思う。

 

 初句「あらを田」は「新しい」「荒れた」の両説があります。第四句「穂に出づ」は文字通り穂が出て実る意に加え、それに準えて「表に現れ出る。人目につくようになる。」意で用いられます。


貫之集 464

2024-07-23 05:08:33 | 貫之集

桜の花

さくらばな をるときにしも なくなれば うぐひすのねも くれやしぬらむ

桜花 折るときにしも 鳴くなれば 鶯の音も 暮れやしぬらむ

 

桜の花

桜の花を折ろうとしたまさにそのときに鶯が鳴いたならば、その鶯の声もきっと暮れ時になっているのであろう。

 

 晩春に向けて鶯の声も暮れるという発想は 428 にもありましたね。

 

ゆくはるの たそかれどきに なりぬれば うぐひすのねも くれぬべらなり

行く春の たそかれ時に なりぬれば 鶯の音も 暮れぬべらなり


貫之集 463

2024-07-22 06:31:40 | 貫之集

柳おほかるところ

あをやぎを たよりとおもひて はるのうちの みどりつもれる ところなりけり

青柳を たよりと思ひて 春のうちの 緑つもれる ところなりけり

 

柳が多いところ

青柳がたくさんあるのを春のしるしと思って見ると、なるほど緑いっぱいの景色なのであるよ。

 

 「たより」は機会、ついで、つて、等の意。