てもふれで つきひへにける しらまゆみ おきふしよるは いこそねられね
手もふれで 月日へにける 白真弓 おきふし夜は いこそ寝られね
紀貫之
手も触れずに月日を経てしまった白真弓ではないが、接することもできないまま起きていても臥していてもあなたのことを思って、夜も寝ることもできない私であるよ。
非常に難解ですね。第三句までが「おきふし」を導く序詞ということで、つまりは「おきふし」は人が起きたり臥したりする意味と同時に、弓に関する所作を表す言葉でもあるということなのですが、弓を「おきふし」するとはどういうことなのかは、諸説あるようです。「白真弓」はもちろん愛しい異性を指していて、逢瀬が叶わぬまま年月が過ぎていくことを嘆いた詠歌です。