漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

【皃】 と 【兒】

2015-08-14 10:47:20 | 雑記
 きょうは 【皃】 と 【兒】 のお話し。
 【容貌】 【相貌】 などと使われる 【貌(ボウ/かたち)】 の旁(つくり)を 【兒】 と書いてしまいそうになることが度々あるので、それぞれをまとめてみました。(かっこ内の数字は、「漢検 漢字辞典」初版/第二版の掲載ページです。また、「音」または「訓」に記したかっこ内の読みは、「辞典」初版になく、第二版にのみ掲載されている訓読みです。)


【皃】  漢検配当外  (1406/-)
音 : ボウ
訓 : かたち  かお
 なぜか「辞典」第二版には掲載がありません(初版にはあります)が、 【貌】 の異体字(同字)。「漢語林」「漢辞海」にもその旨の記載があります。異体字と言っても、こちらの字体がもともとなのでしょう。

【貌】  (1406/1420)
音 : ボウ
訓 : かたち(表外読み)
 常用漢字ですが、 【相貌】 の書き取りが 25-3 で出題されました。【双眸】【相貌】【怱(匆)忙】と、同音異義語が3つ問われた珍しい回でしたね。
 【貌(ぼう)には恭(きょう)を思う】 が「辞典」の見出しになっていますので、故事・成語問題として押さえておきたいところ。




【兒】  (628/633)
音 : ジ  ニ
訓 : こ
 【児】 の旧字体。以下に見るように、多くの漢字の音符として使用され、「ゲイ」という音を表していますが、常用漢字としての 【児】 には、「ゲイ」の音はありませんね。「漢語林」や「漢辞海」では、旧字体の 【兒】 には「ゲイ」の音も記載されています。

【倪】  (401/404)
音 : ゲイ
訓 :(きわ) (ながしめ)
 【端倪】 【旄倪】 【俾倪】 は必須の熟語でしょう。

【猊】  (401/404)
音 : ゲイ
訓 :(しし)
 【猊下(高僧の敬称)】 は覚えておきたい熟語。

【睨】  (401/404)
音 : ゲイ
訓 : にら・む (かたむ・く)
 【睥睨】は 16-3、20-1(いずれも語選択書き取り)、25-1(文章題・読み)で出題されている頻出語。書き取り問題では、上記の 【俾倪】 とどちらを書いてもOK。

【貎】  (401/404)
音 : ゲイ
訓 :(しし)
 「辞典」初版では 【猊】 の異体字の位置付けでしたが、第二版では独立した文字としての記載に変更になっています。かなり老眼が進んできた私には、小さいフォントだと、【貌(ボウ/かたち)】 との区別がつかないです。(苦笑)

【霓】  (401/405)
音 : ゲイ
訓 : にじ
 【霓裳羽衣】(16-1、18-1、25-2)、【雲霓】(21-3、24-1)、【虹霓】(19-3) と、頻出の漢字ですね。

【鯢】  (402/405)
音 : ゲイ
訓 : さんしょううお (めくじら)
 19-3 で、訓読み問題として出題。今に連なる「一文字で送り仮名のない訓読み」問題ですね。【鯨鯢】 を問われたら語順に注意。 【命を鯨鯢の腮(あぎと)に懸く】も、故事・諺問題として押さえておきたいところ。もちろん、「あぎと(腮/鰓/顋)」の方も。

【麑】  (402/405)
音 : ゲイ (ベイ)
訓 :(かのこ)
 「辞典」が第二版になって音読みが追加になった数少ない語の一つ。ただ、「ベイ」と読む用例の記載は、「辞典」「漢語林」「漢辞海」いずれにもなく、さらに「大漢和辞典」にもありませんでした。同じく「鹿の子」を意味し、「ベイ」と読む 【】 という漢字があり、「大漢和」の 【麑】 の項に 「に通ず」との記載がありますので、「ベイ」との音読みはこのあたりに所以がありそうです。ただまあ、漢検対策としてはこちらの音読みは覚える必要はなさそうですね。「辞典」には小さい字で 【麑裘(げいきゅう)】 が出ていますので、こちらが読めれば十分でしょう。意味は 「こじかの皮で作った白いかわごろも」(漢語林)とのこと。



 この記事を書くために改めていろいろと調べて、久しぶりに「調べる楽しさ」を味わいました。調べて発見して「へ~、そうなんだ~」と思えた瞬間が、やはり漢字学習の醍醐味ですね。^^