【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「誰がため」:荒川区役所前バス停付近の会話

2009-12-19 | ★草63系統(池袋駅~浅草雷門)

木立の向こうに見えるのが、荒川区役所。
でも、荒川って、荒川区にないんだぜ。
じゃあ、どこにあるの?
足立区、葛飾区、墨田区、江東区に占められている。
デンマークがナチスに占領されていたようなもんかしらね。
うーん、全然違うと思うけど。
デンマークについて知っていることなんて、ほとんどないけどね。
デンマークといえば、ヴィゴ・モーテンセンっていう渋い役者がいるじゃないか。
たしかに彼はデンマーク出身だけど、デンマークって言われてそんなこと思い出す人なんて、あなたくらいよ。
まあ、映画の世界だって、ヨーロッパ映画といえば、イギリス映画やフランス映画ばっかりで、デンマーク映画なんてめったにお目にかかれないからな。
「誰がため」は、そういう人間にこそ観てほしい映画よね。
第2次世界大戦中に、祖国デンマークのために戦った実在の暗殺者たちの物語だからな。
祖国のために、純粋な気持ちからレジスタンスとなって戦っているのに、裏切りや権謀術数の中でズタズタになって散っていく二人の男たちの悲劇。
祖国の英雄たちなのに、片や、愛する女性には知ってはならない秘密があった。
片や、待つことに疲れた妻に去られてしまう。
ヴィゴ・モーテンセンこそ出演していないけど、この二人の主人公を演じる男たちが、あまりなじみのない俳優だけに真実味を感じさせる。
そんな物語以上に驚かされたのは、映画としての画面の質の高さ。
いままで観てきたこの手の映画の名作に劣らないほど、緊迫感と冷徹さにあふれた映画づくりがなされている。
テロリスト映画というくくりではスピルバーグの「ミュンヘン」を思い出させるような瞬間があるし、暗殺シーンにはコッポラの「ゴッドファーザー」を思い出させるような瞬間もある。
ハチの巣になるシーンなんて「俺たちに明日はない」だ。
そして、硝煙と瓦礫の街並みは、ポランスキーの「戦場のピアニスト」。映画史に残る傑作の粋を集めたような画面が続く。
全編から沈痛な面持ちが立ちあがってきて、デンマーク映画にこれだけの映画的技術があるとはほんとうに意外だった。
でも、残念なことに、見知らぬデンマーク映画だから、観る人はきっと少ない。
こういう映画があること自体、みんな知らない。
荒川が荒川区にないことを知らないようにね。





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ふたりが乗ったのは、都バス<草63系統>
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