【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「エスター」:巣鴨駅南口バス停付近の会話

2009-10-21 | ★草63系統(池袋駅~浅草雷門)

この趣のある駅舎は?
新しい駅ビルができるまでびゅうプラザが入っている仮駅舎らしいわよ。
なるほど。世を忍ぶ仮の姿か。“エスター”みたいだな。
って、いきなりネタばれ気味の展開でいいの?
だって、あんなとんでもない女の子、裏に何か秘密があるとしか思えないだろう。
その秘密が、まんざら絵空事とも思えない秘密だっていうのが、巧妙で恐ろしいところね。
孤児院から引き取られた9歳の利発な女の子が、実はとんでもない食わせ者だったっていうスリラー。
この子がエレファントマンをほうふつとさせる秘密を持っている。
うーん、ちょっと違うと思うけどね。
わかってないなあ。ネタばれしないようにわざとミスリードしてるのよ。
そうなの?
原題は「孤児」なんだけど、日本題名は女の子の名前を取って「エスター」。
最初はちょっとモタモタしたものの、徐々に徐々に少女の本性が露わになっていく過程は、想像以上にスリリングで目が釘づけになった。
彼女を引き取った養母がエスターの異常に気づいても、最初は誰も信じてくれないっていうのがまた怖い。
アル中で自分の子どもを池で溺れさせかけた過去があるっていう伏線が効いている。
だから、誰も信用しない。信用してくれたときにはもう惨劇が始まっている。
怖いものが出てきて脅かすっていうんじゃなくて、心理的に追いこんでいくつくりだから、一層息がつまる。
恐怖映画のジャンルでいうと、「エクソシスト」よりは「ローズマリーの赤ちゃん」に近い印象の映画よね。
また、エスターを演じる少女が、やたら不気味でねえ。
かわいい容姿してるのにねえ。
そのギャップが最大の見どころだな。
イザベル・ファーマンっていう子役で、実際は12歳らしいんだけど、こんな子どもがこんな残虐でいいのかって思うショッキング・シーンの連続。
けれど、殺人シーンや暴力シーンより、彼女が少女にあるまじき媚を売っていくところが、なんといっても、いちばん恐ろしかった。
お前はロリータか!ってね。
ロリータの作者ってロシア生まれだけど、この少女もロシアからやってきた孤児だっていう設定だもんな。
それがまた、薄気味悪さを増幅させるわけよ。憎たらしいったらありゃしない。
イザベル・ファーマン自身こんな役やって、後遺症が残らないかって余計な心配までしてしまう。
でも、映画の中の彼女の生い立ちは、あんな極北の地ならこんなこともありえるかもしれないって思わせちゃう。
ある種、凍えるように悲しい物語だからね。寒い土地がよく似合う。
そう、季節を冬に設定したのも、王道といえば王道だけど、雰囲気を盛り上げる。
すがりつくような「ママ!」のひと言がいつまでも耳に残る。
対する母親のきっぱりした返事が、また身震いするほどかっこいいんだなあ。
すべての怒りをこめたひと言が決まった瞬間だった。
正直、仮の姿ではない、本物の映画だったわね。






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ふたりが乗ったのは、都バス<草63系統>
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