【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

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「クレイジー・ハート」:石原三丁目バス停付近の会話

2010-06-26 | ★業10系統(新橋~業平橋)

あの赤いところ、何て書いてあるの?
天狗。
どうして遠くから眺めてるの?
どんなに才能があっても、天狗になっちゃあいけないと思ってさ。
「クレイジー・ハート」に出てきたカントリーシンガーみたいに?
まあ、彼も天狗になっていたわけじゃあないんだろうけど、かつて一世を風靡していただけにいまの自堕落な生活との落差を感じちゃうよな。
その自堕落なカントリーシンガーを名優ジェフ・ブリッジスが演じた映画がスコット・クーパー監督の「クレイジー・ハート」。
結婚生活は何度も破綻し、アルコールに溺れ、ひたすら落ち目の日々。対照的に、弟子であり、バックバンドの一員だった男はいまや大スター。
物語自体は、かつて脚光を浴びていた男の典型的な転落物語。
そこに彼を愛する女性が現れ再生していくという展開も、意外性はない。
こういう話は、いかに演出していくかという勝負になるんだけど、いたって常識的だった。
「クレイジー・ハート」っていうから、もっと映画自体がクレイジーなのかと思ったら、実に誠実というか、手がたい演出で、破たんがなかった。
大スターになった弟子も憎めない男で、師匠をないがしろにするどころか、尊敬のまなざしを変えることはない。コリン・ファレルが、師匠の再生のために手を差し伸べる儲け役を爽やかに演じていた。
最大の見どころはやっぱり演奏シーンだな。
ジェフ・ブリッジスが、自身、まるで昔から主役のカントリーシンガーであるような自然な存在感で愛用のギターを抱え、渋く歌う。
一挙手一投足にこれまでの日々を感じさせる。
アカデミー賞を獲るのもあたりまえの演技ってことね。
でも、同じように落ちぶれても音楽をやめない男たちの姿を描いた「アンヴィル!夢を諦めきれない男たち」なんていうドキュメンタリー映画を観ると、実際はもっともっと惨めで滑稽だよな。
家族に見限られ、頭は禿げあがり、それでも夢を追い続けている。
それに比べると、ジェフ・ブリッジスは、まだまだかっこ良すぎる。アル中もすぐ治っちゃうし。
そこはやっぱりドラマとしての抑制を効かせているのよ。
でも、同じように落ちぶれた中年男を描いたドラマでも、ミッキー・ロークが主演した「レスラー」にはもっと切羽詰まった破れかぶれ感があったぜ。
あれは、題材がレスリングだから、あそこまでなりふり構わない演出ができたんじゃないの?
いや、「クレイジー・ハート」をけなしているわけじゃなくて、ジェフ・ブリッジスにアカデミー賞をあげるなら、ミッキー・ロークにもあげて良かったんじゃないの、とふと思ったもんだからさ。
ふたりとも、賞をもらったからって天狗になるような歳じゃないしね。
そう、俺と同じようにな。
何言ってるの。あなたには、そもそも天狗になるような才能なんてないじゃない。
むふっ。





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ジェフさん (ぺろんぱ)
2010-07-04 21:30:41
こんばんは。
TBをありがとうございました。TBって(実は)したこと無いのでコメントで失礼します。

ジェフのあの歌声を聴けてよかったと思えた作品でしたが、恋愛パートの苦さに於いてもミッキー・ロークの『レスラー』の方に軍配を挙げたいです。

アル中世界から意外にも真っ直ぐに脱出できたのもちょっと“肩すかし・・・”の思いでした。
でもやっぱり素敵でしたけどね、ジェフさん。
■ぺろんぱさんへ (ジョー)
2010-07-18 19:25:24
アル中って、なったことないんですが、あんなに簡単に治るものなんでしょうか?
だったら、もっと早く治せばよかったのに、
と思ってしまいますよね。
破れかぶれ度合いでは「レスラー」の勝ちかな。

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