【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」:立川バス停付近の会話

2010-06-16 | ★業10系統(新橋~業平橋)

こんなところに鎌倉があるとは思わなかったな。
鎌倉?鎌倉って、有名な芸能人の名前かなにか?
おいおい、「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」に出てくる安藤サクラみたいなこと、言うなよ。
彼女は“網走”を、芸能人の名前と勘違いしたのよ。
無知ということでは、似たようなもんだ。
無知で無学な男の子二人とちょっと頭のイカレた女の子一人が成り行きから網走をめざすという映画が「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」。
男二人を松田翔太、高良健吾が、女一人を安藤サクラが演じている。
男二人に女一人の組み合わせといえば、「冒険者たち」「明日に向って撃て!」の昔からロードムービーの定番よね。
男二人がイケメンていうところもな。
女一人もだいたい美人って相場が決まっているんだけど、今回ばかりはそうじゃなかった。
女まで美人にすると話がきれいになりすぎるんで、監督が敢えて避けたんじゃないか。
うん。「冒険者たち」や「明日に向って撃て!」と違って、ロマンもへったくれもない映画だったもんね。
施設上がりで、簡単な計算もできなければ、自分たちじゃあ人生も選べないような最底辺にいる若者たちのドンヅマリの話だからな。
何かを壊すことでしかこの世界を変えられないと思っている。
その彼らの仕事が電動ブレーカーでひたすら壁を壊す仕事だっていうのも皮肉だ。
とうとうこらえ切らなくなって、盗んだバイクで荒涼たる北海道を目指す。
自分たちを覆っているなにかを壊しに。
でも、それがなんだかわからない。
監督が「ゲルマニウムの夜」の大森立嗣だから暗い映画になるんだろうなあと思っていたら、予想通りだった。
心に何かざらりとした鬱屈が残るというのも予想通りだった。
鬱屈というより、底知れない心の闇を表現していたのが、松田翔太の兄を演じた宮崎将。
松田翔太との再会シーンでは、信じられないような狂気を見せて、場面をさらった。
超低温でグツグツとたぎっているような、見たこともない狂気。
親切に物語を説明してくれる映画じゃないから、軽い気持ちでは観れないんだけど、一瞬出てくる洞口依子の表情とか、相変わらずマイナーな新井浩文とか、実は見るべきものがいっぱいある。
もちろん、いちばんの収穫は、主役の三人だ。
アンサンブルがとにかく絶品。
松田翔太や高良健吾がここまでいい俳優だとは思わなかったな。
安藤サクラがうまいのは知ってたけどね。
でも、「告白」「アウトレイジ」と続いて、さらにまたこういう寒々しく閉塞した映画を観ちゃうと、映画の出来に関係なく、日本っていう国はだいじょうぶかよと思っちゃうな。
閉塞日本三部作とでも呼びたいような映画群だもんね。
告白」はその子ども編、「アウトレイジ」はそのおとな編、「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」はその若者編っていう感じね。
ケンタとジュンとカヨちゃんの国、日本。
“鎌倉”が何かも知らない女のいる国、日本。
知ってるわよ。“いいくにつくろう、鎌倉幕府”でしょ?
いいくにかあ・・・。






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4 コメント

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■rose_chocolatっさんへ (ジョー)
2010-06-23 21:08:56
暗いですよねえ。
でもこの暗さ、結構クセになるんですよねえ。
大森監督の映画はきっと次もまた観てしまうような予感がします。
暗ーいんだけど (rose_chocolat)
2010-06-22 01:00:07
何故か嫌いになれない映画っていうか。。。
ただ、この環境がガチなら困っちゃうけどね。
■ねねんさんへ (ジョー)
2010-06-20 18:58:45
男二人はもちろん、カヨちゃんにも哀しいほどの存在感がありましたね。いいシーンでした。
Unknown (ねね)
2010-06-16 22:01:24
三人でたき火を囲むシーン。カヨちゃんが今日は誕生日と言って、ハッピーバースデーを歌ってもらい、ありがとうと言うシーンで涙がでてきました。

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