【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

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「秒速5センチメートル」:パレットタウン前バス停付近の会話

2007-05-01 | ★虹01系統(浜松町駅~ビッグサイト)

この観覧車ってどのくらいの速さで回っているのかな。
うーん、秒速5センチメートルくらいじゃない。
それは、桜の散る速度だろ。
そうそう、アニメ映画の「秒速5センチメートル」ではそういう説明していたもんね。
なんか、ほんとうに桜の花びらがはらはらと散るような映画だったな、「秒速5センチメートル」って。
ほのかに想い合う少年と少女が雪の日に再会する第1話、その少年に片思いする少女の第2話、そして大人になった少年が第1話、第2話の頃を回想する第3話。3つの短編から成る1時間のアニメなんだけど、たった1時間の映画でしかもたいしたお話があるわけでもないのに、やたら切なさが胸を打つのよねえ。
映像詩だからな。主人公の頭の中にある映像をそのまま写し取った映画と思ったほうがいいかもしれないが、そのぶん、1シーン、1シーンが文字通り絵になっていて、心に降り積もる。
ほんとよねえ、何枚の絵でできているんだかしらないけど、すべての絵を1枚1枚じっくり眺めていたい気にさせるもの。
しかも、1話めでは再会するまでの時間の長さ、2話めでは思い続ける時間の長さ、じれったいほどの長さを描いて、にもかかわらず3話めでは振り返ってみれば青春と言う時間は実はなんと短いものであったかというはかなさを描いて、時間というもののあっけなさ、1秒1秒の大切さを訴えかけてくる。これはもう、時間という要素を含む映画という手段でなければ描けない領域で、ひたすら感動的ですらある。
日常的な風景の中にいきなり異物が飛び込んでくるのにも驚いたわ。
なんといっても、第2話のロケットの登場だよな。絶妙のタイミングでロケットが雲を引き裂き遠い宇宙へと飛んでいくシーンが現れる。それが少女の初恋の終わりをみごとに暗示する。ロケットの飛翔と破れた恋の感情なんて組み合わせ、ふつうは思いつかないだろう。
タルコフスキーの「惑星ソラリス」じゃないんだからね。
それがもうこれ以上ないくらい平然とマッチしているから、鳥肌がたつような名シーンになった。驚くべき発想力だ。
第3話なんて、ほとんど映像のコラージュで、山崎まさよしの歌「One More time,One More Chance」のPVと化していたけど、その1コマ、1コマが1話、2話を思い出させるという意味で、失った時間への無念、断念が胸につきささってくる。
「One More time,One More Chance」というタイトルとはうらはらに、帰り来ぬ日々の回想。1時間という上映時間の中で、これだけ詩情豊かに青春の輝きと無常を描いた映画を俺は知らない。
ちょっと、自分に酔いすぎているのが、玉にキズかな。美化しすぎ。
とんでもない。青春なんてすぎてしまえばみな美しいんだ。
それって、どっかで聞いたようなセリフね。
そうか?
とにもかくにも、新海誠なんていうアニメ作家、いままで知らなかったのが不覚だったわね。
DVDになったらコマ送りにして1コマ1コマ見直そうな。
というか、1コマ1コマ印刷して写真集にしたいくらいよ。
写真集じゃなくて、イラスト集だろ。
そうそう、映画というパレットで描いたイラスト集。
あ、パレットタウンの前で、うまいこと言うね。
もっとうまいこと、言っていい?
なんだ?
人生なんていうのは、この観覧車みたいなもので、乗るときはずっと昇り続けるような気がしても、必ずいつか降りてくるものなのよ。
秒速5センチメートルでな。


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ふたりが乗ったのは、都バス<虹01系統>
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4 コメント

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Unknown (半蔵)
2007-05-03 22:21:26
TBありがとうございました。
簡潔な会話の中で物語のツボをおさえる記事に感銘を受けました。秒速で飛躍的に注目を浴びるようになった新海監督ですから、これ以降は批判にも多くさらされるようになると思います。
これからどんな作品作りをしていかれるのか気になるところですが、美しい苦味は是非これ以降も持ち続けてほしいと思っています。
コメントありがとうございます。 (ジョー)
2007-05-03 22:41:41
■半蔵さんへ
秒速で注目されるようになった監督なんですね。おおげさにいえば「時をかける少女」の監督とともにポスト宮崎駿の位置を狙う監督だと思います。
これからも活躍してほしいですね。
Unknown (Hitomi)
2007-06-21 22:12:24
ジョーさん、こんばんは。
私は山崎さんの歌聞きたさで見に行った邪道なくちなんですが、彼の歌がうまくこのストーリーとマッチしてて監督がどうしてもこの曲を使いたかった理由がよく分かりました。
コメントありがとうございます。 (ジョー)
2007-06-23 15:23:15
■Hitomiさんへ
山崎さんのPVと言ってもいいくらいマッチしていましたね。しかも映画としても感動的に仕上がっていて、拾い物でした。

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