【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「アーティスト」

2012-04-12 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)


「雨に唄えば」じゃん。
・・・言うと思った。すぐにそういう身もふたもない言い方をするから、このブログも凋落の一途を辿っちゃうのよ。
しかも「雨に唄えば」よりヒネリのないストーリー。
だからぁ、そういうひねくれた見方をしちゃダメなの。「シンプルなスト-リーが古き良き時代を際立てる」って言って。デジタル・3D全盛のこの時代に、モノクロ・サイレント時代の映画のおおらかさを忠実に再現することによって、映画を楽しむことの原点を思い出させてくれる貴重な作品なんだから。
なんだか、教科書的な解説だな。
映画は、全然、教科書的じゃないわよ。歌って踊って犬までアカデミー賞級の演技をする大娯楽映画。
いまどき苦労してあのころの映画を再現するくらいなら、あのころの名画をデジタル修復して見直したほうがよくない?
あ~、ほんっとに身もふたもないこと言うのね。
ファーストシーンが映画館ならラストシーンも映画館で締めるべきだと思うし、断固声は出さないと主張していた主人公が何を原因に主張を捨てたのかわからない。
愛よ、愛!決まってるじゃない。
サイレントにこだわっていたチャップリンが止むに止まれぬ思いから「独裁者」で声を発した逸話に比べれば実にたわいない。
たわいなく楽しんで、っていう映画なんだからこれでいいのよ。
だったら、チャップリンたちがつくったユナイテッド・アーチストを連想させる「アーティスト」なんてタイトルつけるなって言いたいね。
いまどき、そんな連想誰もしないわよ。
俺はする。
あなたは、サイレント映画ならではの俳優たちの表情の豊かさ、仕草のおもしろさに心魅かれないわけ?ここまであのころの映画の豊かな魅力を徹底的に引き出した映画、なかなかないわよ。
徹底するなら、映画館もスタンダードサイズの映画をちゃんと掛けられるように徹底するべきだろう。
たしかに、私たちが観た映画館はスタンダードサイズ仕様になっていないから、画面の左右に黒味が残ったまま上映してた。
画竜点睛を欠いたな。
ってことは、なんだかんだ言いながら映画自体には満足してたってことね。
く、口がすべった。
映画はすべってないけどね。