【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「エレジー」:高輪一丁目バス停付近の会話

2009-02-18 | ★品97系統(品川駅~新宿駅)

NHK交響楽団って、こんなところにあるのね。
いちど、大オーケストラで映画音楽でも聴いてみたいな。
大オーケストラもいいけど、ピアノソロもいいわよ。
イサベル・コイシェ監督の恋愛映画「エレジー」に流れていたような?
そう、そう。まさにいま、それを言おうと思っていたの。私たちって、以心伝心ね
気持ちわるっ!
「エレジー」のカップルだって、冷静に考えてみれば相当気持ち悪いわよ。
年老いた大学教授と、30歳近くも年の離れた若い教え子っていう取り合わせだからな。
本来は、せいぜい興味本位の三面記事になる題材。
でも、演じるのがベン・キングスレーとベネロペ・クルスだから、なんだか高級な恋愛映画のような趣がある。
そこに格調の高いピアノソロが流れればもう完璧な文芸作品。
ベン・キングスレーが年齢の差を気にしてうじうじ悩むんだけど、ベネロペ・クルスは一向に気にしていない。家族にさえ引き合わせようとする。男としてはうらやましい限りだ。
いい年しても、ベン・キングスレーはベン・キングスレーだからね。あなたと違って、まだまだ現役。男のフェロモン、プンプンよ。
おいおい、俺を何歳だと思っているんだ。
ベン・キングスレーよりは若いと思ってるけど?
あたりまえだのクラッカー。
古ーっ。それだけで年がばれるわよ。
おとうちゃんから習った。
どーだか。
そんなこんなを乗りこえて、ベン・キングスレーとベネロペ・クルスはくっついたり離れたり、そして最後には禁断の一手。
あれをやられちゃあ、おしまいよね。
でも、ベン・キングスレーとベネロペ・クルスだから絵になる。見ていられる。くやしうらやまし。
あれが、あなたと私だったらと思うとぞっとする。
って、おまえ、何歳のつもりだよ。
まあ、女子大生には見えないかな。
見えても、せいぜい、巣鴨の女子大生くずれだな。
なにそれ。どういう意味?
ベネロペ・クルスみたいな美人だからこそ、若作りして女子大生に扮しても不自然にならないってことだ。
でも、ピアノソロがいい気分にさせる。
結局、美男美女の話。本当に老いを見つめるならもっとブ男のほうがよかったんじゃないか。
それじゃあ、「美女と野獣」になっちゃうじゃない。それはまた別の話でしょ。
うーん。この映画は、老いの話なのか、恋の話なのか?
“おい”も“こい”も似たようなものだってことかしら。
まあ、響きは似てるし、周りが見えなくなるっていう点も似てるかもしれないな。
そんなこんなを考えつつ、この映画、斬新ではないけれど、心に沁みる小品ではあったわね。
演奏に例えれば、やっぱり、ピアノソロかな。



この記事、まあまあかなと思ったら、クリックをお願いします。



ふたりが乗ったのは、都バス<品97系統>
品川車庫前⇒品川駅前⇒高輪北町⇒泉岳寺前⇒高輪一丁目⇒魚籃坂下⇒古川橋⇒四ノ橋⇒光林寺前⇒天現寺橋⇒広尾橋⇒日赤医療センター下⇒西麻布⇒墓地下⇒青山斎場⇒赤坂高校前⇒青山一丁目駅前⇒北青山一丁目アパート前⇒権田原⇒信濃町駅南口⇒信濃町駅前⇒左門町⇒四谷三丁目⇒四谷四丁目⇒新宿一丁目⇒新宿二丁目⇒新宿三丁目⇒新宿追分⇒新宿駅東口⇒新宿駅西口