【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「トランスアメリカ」:東二丁目バス停付近の会話

2006-09-04 | ★田87系統(渋谷駅~田町駅)

都営アパートの下に都バスの車庫があるなんて、しゃれてるね。
人の住まいはバスの住まいでもあるってことね。
都内をぐるぐる走るバスだって、帰るべきところはあるってことだな。
何が言いたいわけ?
「トランスアメリカ」って、何を言いたい映画だろうと思っていたけど、いま、はっきりわかったってことだよ。
性転換で女性に変わる直前の男性が自分に息子のいることを知って、父親ではなく母親として会いに行って親子でアメリカを旅する映画でしょ。
そう。性転換とゆがんだ親子関係がテーマの映画なんて、うさんくさい感じがするじゃない。ところが、観たあとは、やけにさわやかな印象なんだな。どうしてだろうと思ってたんだけど、その謎がいま解けたのさ。
どういうこと?
つまり、「帰るべき場所に帰ろう」というとてもシンプルな話だったんだ。体は男性で心は女性ということに悩んできた主人公は、ほんとの自分に戻るだけ。性転換なんていうとおおげさだけど、自分が帰るべき場所に帰るだけなんだ。息子のほうも最初は母親の姿で現れた人間が実は父親だったと知って混乱するけど、親は親。子を思う気持ちに男も女もないと知って、よりを戻す。つまり、帰るべきところに帰る。だから、後味がいいんだ。
なんかあたりまえ過ぎない?
いや、いい映画のテーマっていうのは実は案外シンプルなものなんだ。それをどうおもしろく見せるかで映画の価値は決まると思うんだ。
たしかに見せ方はおもしろかったわよね。主演のフェリティシィ・ハフマンの何気ないしぐさが本当に女になりたい男そのものって感じで、アカデミー賞は彼、いや、彼女にあげればよかったのにって思うくらいよ。
アカデミー女優賞にするか、男優賞にするかで、もめたんじゃないのか。
まさか。でも、それくらい、ほんとは女なのか男なのか、わからなかったわね。
おまえもほんとは男だったりして・・・。
まあ、失礼な。そういう視線で人を見るなっていう映画だったんじゃないの?
いや、俺はどっちでもかまわないよ。人間、誰にでもひとつくらい欠点はあるもんだ。
それって、昔の「お熱いのがお好き」っていう映画のセリフじゃない。
ばれたか。


ふたりが乗ったのは、都バス<田87系統>
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