質問にお答えして、馬のブドウ膜炎について書きたいのだが、まずその前に獣医師ではない方もいらっしゃるので・・・
-
ブドウ膜、ブドウ膜炎とは?
ブドウ膜 uvea とはvascular layer of eyeball ;眼球の脈管層。虹彩(黒目の部分の絞り)、毛様体(レンズを引っ張っている)、脈絡膜(網膜と強膜の間の血管豊富な層)からなる。
眼球全体を覆っているので形も球状だし、血管が豊富なので赤紫をしていてブドウに似ているのだそうだ。
房水の産生、流れ、眼の栄養、眼の病気の治癒に大きな働きをしている。
簡単で、もっと詳しい解説は、人の眼についてだが、こちら。
馬の眼はブドウ膜のダメージに弱い。
ブドウ膜炎は、ブドウ膜の炎症で、さまざまな原因・要因で起こる。角膜炎、局所・全身の感染、免疫介在性、とくにレプトスピラ症、眼の寄生虫症、etc.
-
馬の回帰性ブドウ膜炎とは?
再発する前部ブドウ膜炎が、馬回帰性ブドウ膜炎 Equine Recurrent Uveitis。
馬回帰性ブドウ膜炎は、レプトスピラ症、トキソプラズマ症、サルモネラ症、Streptococcus,
E.coli, Rhodococcus, その他の細菌の感染、寄生虫症、などで起こることがある。
-
原因と治療は?
馬回帰性ブドウ膜炎の原因は不明なことも多い。
角膜潰瘍に併発している場合があるので、治療には注意が必要。角膜潰瘍があったらステロイドの局所投与(点眼や結膜内投与)はしてはいけない。
馬回帰性ブドウ膜炎の治療の目的は、視力を残すこと、痛みを和らげること、ブドウ膜炎の再発を防ぐこと、である。
馬が眼を痛がったら、角膜炎や角膜実質膿瘍による痛みなのか、ブドウ膜炎による痛みなのかをフロレセイン染色ですぐに判断する必要がある。
コルチコステロイドは、馬ブドウ膜炎の最適な治療法だが、角膜の感染と損傷を急速に悪化させる危険がある。
一般的に、コントロールはできても最終的には視力については予後が悪い。失明したら、痛みをなくすために眼球摘出が必要になるかもしれない。
非ステロイド系抗炎症剤は、ステロイドの抗炎症効果を促進する。角膜炎があるときには、非ステロイド系抗炎症剤で、眼内炎を緩和する。
免疫抑制剤シクロスポリンAが効果を上げることがある。
アトロピンの点眼は、虹彩癒着を防ぎ、毛様体筋の痙攣を緩和することで痛みを抑え、毛細血管を安定化させて血漿の漏出を減少させる。
アトロピンの点眼により散瞳させられるかどうか、散瞳が続くかどうかは、ブドウ膜炎の刺激の強さと、虹彩癒着の指標となる。
抗生物質の局所or全身投与が馬回帰性ブドウ膜炎によく推奨される。
その他、針治療、光線療法、手術(扁平部硝子体切除術)、シクロスポリンA埋め込み、などが行われることがある。
臨床症状が落ち着いたらすぐに、投薬頻度を徐々に減らす。突然やめると再発することがある。
-
terminology(術後、専門用語、術後学)
recu'rrent 頻発する、再発する、周期的に起こる、<神経・血管などが>反回性の(喉なりの原因になるのはこの「反回」神経麻痺)
---
Dr.Brooksの著書 Ophthalmology for equine practitioner には、和文の虎の巻が出ている。
眼科専門用語は難解で、英文を読むのは辛いので、たいへん助かる。
公営競馬獣医師協会と物江先生と翻訳者の方に感謝。
---
一方的に教わるばかりではいけない。
Dr.Brooksはすっかり燗酒が気に入ったようなので、
日本酒の燗をするにはmicro wave 電子レンジが便利です。とお教えしたら喜んでおられた。
こういうのを interactive education 相互教育(教え合い)という(笑)。
-
今日の海はmicro waveではなかった。
寄せては帰すのは、recurrent (笑)。
馬の種類によって効果が違ったりするようですが、扁平部硝子体切除手術という方法もあるようです。白内障や網膜剥離が続発症として高率に起こるようです。
自家血清の点眼は、角膜潰瘍の話ですね。融解を抑えるため併用すべきでしょう。
寓話的ですが、角膜穿孔、虹彩脱しても、無処置で視力が温存された症例もあります。Dr.Brooksもおっしゃっていました。馬の眼は自然治癒力が乏しいと言われることがあるが、そんなことはない。
やはり、治癒は困難ですよね・・・。
姑息的にステロイド&抗生物質の点眼を症状により続けていますが、致し方ないところなのでしょうね。角膜の感染等の悪化所見が出現してくれば、眼球摘出が最も馬を楽にしてやる方法かな?と思っています。
ありがとうございました。
因みに自己血清の点眼ですが、そう著効はないように思います。
やはりどの疾患もそうですが(特に目は)、症状が悪化しないうちにBestを尽くさないと手遅れになってからの処置は、どれもそれなりで緩やかな回復傾向をたどるしかないのですよね・・・。
自家血清点眼は効果があるようですね。角膜を融解させる酵素を抑え、血流のない角膜に抗体ほかの免疫成分を届ける。ということでしょうか。
ご自愛したいです(笑)。
訳本を拝見しまして、角膜潰瘍に自己血清点眼という方法があるということを初めて知りました、聞くからに効果がありそうですね…?
学会のご準備などでhig先生はまたお忙しいことと存じます、どうぞご自愛下さい。