馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

脛骨近位成長板損傷の内固定方法の変遷  成長板損傷で考慮すべきこと

2019-05-16 | 整形外科

子馬は、長い骨の両側が成長板 growth plate (骨端板 physis )になっている。

そこは本来の骨の組織としては連続していなくて、軟骨で結合している。

盛んに軟骨下骨化が行われ、その部分で骨が成長する。

しかし、弱いので、大きな力がかかると当然、そこで骨折する。

それは、骨折の中でも成長板損傷と呼ばれる。

成長板の破壊の形状によりタイプ分けされている。

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治療する上ではいくつか考えなければいけないことがある。

・子馬はキャスト固定には長くは耐えられない。

子馬を長くキャスト固定すると、屈腱が弛緩し、それが致命的な問題になってしまう。

長くキャスト固定しないで済む治療方法を選ばなければならない。

・子馬は対側肢が変形しやすい。

子馬は、肢に痛みがあって対側肢で長く負重していると、体の下に持ってきて体重をかけているその肢が内反変形しやすい。

成馬とちがって、蹄葉炎にはなりにくいが、早く痛みがとれる治療方法を選びたい。

・成長板損傷の治癒は、緻密骨に比べて早い。

馬が支柱性を失うような骨折をすると、子馬であっても骨癒合するのに2-4ヶ月かかる。

しかし、骨端板がもとどおり軟骨組織で癒合し、周囲の軟部組織で補強されて剥がれなくなるのは、一般的な骨癒合に比べて早い。

・骨折部の面積が広いことが多い。

骨は骨端が太くなっていて、骨端板は骨幹に比べて断面積が広い。これは、内固定する上では安定につながる。

・関節に近く、内固定しづらい。

骨端はまさに骨の端であり、厚さがない。内固定するためのスクリューを複数入れるのは難しい。

・骨端は柔らかい。

子馬が幼若であるほど骨は柔らかく、とくに骨端や骨幹端は柔らかい。ときには骨化していないことがあるほど。

スクリューを挿入しても強度がでない。

・関節包、靱帯、などの付着部を伴っている。

関節の近くであるため、関節包や靱帯の付着部であることが多い。

中には肩甲骨の関節(窩)上結節の骨折が上腕二頭筋腱の牽引による avulsion fracture であるように、靱帯や腱に引っ張られて引き剥がされることで骨折する場合もある。

その内固定では、関節包の損傷や、靱帯や腱の牽引力や、それらの再建について考慮する必要がある。

・骨癒合させてはいけない。

骨端板(成長板)が骨癒合すると、成長できなくなる。骨端板の内側だけが骨癒合すると、内側が成長できないので、肢は内反してくる。

骨端板の内固定は、骨癒合する前に除去しなければならない。

しかし、S-H type5 のように骨端板が圧迫されて成長機能を失ってしまうような成長板損傷もある。

・骨端板の内固定は除去しなければならない。

成長板を片側から内固定しているだけでその側は成長できないので、肢軸は曲がってくる。

骨端板を内固定したら、肢軸異常が重度になる前に内固定を除去しなければならない。

・子馬は感染に弱く、頻回に寝起きしなければならず、痛みが消えると飛び跳ねる。

成長板損傷する幼若な子馬は、とても感染に弱い。皮膚も薄い。

手術後も頻回に寝起きしなければならない。子馬は寝起きしないと哺乳できない。立たせたままにしておくこともできない。

痛みが消えると馬房内管理していても飛び跳ねる。

これらはすべて内固定手術を受ける患者としてはマイナス要因だ。

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やれやれ、いいわけ前置きが長くなった。

サラブレッド生産地の馬整形外科医がもっともよく遭遇する成長板損傷のひとつである脛骨近位成長板損傷の治療について本論に入りたい。

(つづく)

         ////////////

おい

もう成長期じゃないんだから

とうちゃんの薪割りのじゃまして

寝てばかりいると

体重ばっかり増えるぞ

 

 

 

 

 

 

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2 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2019-05-16 06:46:55
 けられたり踏まれたりして折れるのかもしれませんが、産まれてすぐに立ち上がろうするときや。あんなに飛んだり駆けたりしても関節に影響ないものかと思うことも。
 続きが待たれます。

 オラ君、気持ちよさそ。薪はまだ今シーズン分としても必要なのですか?
 大人の犬は寝てること多いですよね。そばに居ようとするし。
 オラ君、たまには薪運びを手伝ってあげたらは?
>はとぽっけさん (hig)
2019-05-17 04:35:59
子馬は骨も関節もやわらかくて、だからこそめきめき成長できるとも言えます。なにせ、骨の端っこは軟骨でくっついているだけで骨は一体になっていないのですから。
後膝あたりは、外からどんっとやられやすいのでしょう。そのときおれるのは脛骨近位成長板のようです。

薪焚きシーズンは終了しました。これらの薪は来シーズン用ですね。でも、できれば再来年用を準備できるようにしたいところなんです。

何かしてると手伝いたいんでしょうね。薪を持って行って囓ったりもします。

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