馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

上腕骨へのアプローチ

2018-10-16 | 整形外科

では、上腕骨の頭側へプレートを当てるために、どこからどのようにアプローチするか?

これはNixon先生のEquine Fracture Repair に詳細な記述と図示がある。

上腕二頭筋 biceps brachii muscle のやや外側を切皮するのが良いと思う。

上腕頭筋 brachiocephalic muscle は薄くて広い肩を覆っている筋肉なので筋繊維に沿って切り広げて良い。

上腕二頭筋と上腕筋 brachialis muscle の間を分ける。

上腕骨近位部は上腕二頭筋と上腕筋の間から上腕骨にプレートを当てる。

三角筋 deltoid muscle は三角筋粗面 deltoid tuberosity から少し剥がして良い。

遠位部は、上腕筋と橈側手根伸筋 extensor carpi radialis muscle の間を分ける。

ここは丈夫な筋膜で覆われていて、境目がわかりにくい。

上腕筋の遠位には橈骨神経 radial nerve があるので注意。

                   -

もう20年以上前に、こんなに詳細に上腕骨へのアプローチを書いた本が出ていることが驚きだ。

そしてNixon先生は新版を出された。

生涯をかけて馬の骨折治療に取り組んで来られたのだ。

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もう1ヶ月以上跛行しているという2歳馬。

当初は「右腸骨の痛みだった」とのこと。

右の臀筋の著しい萎縮。

右の腰角はひどく下がってしまっている。

左の仙結節はずいぶん高い。仙腸関節が脱臼しているようだ。

跛行は膝蓋骨上方固定様なのだが、原発による跛行とは思えない。

それでも内側膝蓋靱帯切断術をやることにした。

・・・・しかし、右後肢を曲げられるようにならなかった。

腸骨骨折して、大腿の筋肉を使えなくなって、萎縮してしまっているのだろうか・・・

                ーーー

ここのところ、忙しくて時間通り食事にありつけない相棒・・・・と私。

満面の笑顔で迎えてくれるのは、食事がうれしいんだね。

 

 



6 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2018-10-20 07:52:28
 前記事の骨サンプルの小さな穴から、神経のおべんきょしようと思っていたところでした。
 仙腸関節脱臼、整復できるものですか?すでに神経系にもなんらかの変性があるでしょか?辛そうです。
 本にはあるけど、治療して治った症例があまりないのは、難易度高く、あまり成功例がない?
 オラ君、おなかペコペコ?わんわんも特別なことはなくても、健康で、ときどきうれしくて、普通に幸せなのがいいよね
Unknown (zebra)
2018-10-20 08:12:18
絵に感心します。遠位のスクリュー挿入は本当に大変そうですね。

ここまで仙腸がいかれたら諦めそうです。
というか成牛ではそうしました。
不思議と歩いたのは骨折していないせいかも知れません。
左臀部は体重支えてこうなったのですか。
右脚神経学的には生きていたのでしょうか。
萎縮拘縮する理由がありそうですよね。
Unknown (azaodoroki)
2018-10-20 10:53:51
素晴らしいアプローチ法の本ですね。新版は写真とか増えるんでしょうかね。骨盤は直ぐにレントゲン検査ができないところが大動物の難しいところですね。腰角があんなに下がっていて膝蓋骨上方固定様の跛行だとすると仙腸関節脱臼と寛骨臼頭側の骨折で大腿直筋付着部が背側に変位しているのでしょうかね。難しいです。
>はとぽっけさん (hig)
2018-10-21 04:22:13
小さな孔は血管孔ですね。私も上腕骨の血管孔がここにあるとは知りませんでした。

仙結節が飛び出している馬を、ぶら下げているときに仙結節を触ってみたことがありますが、飛び出していませんでした。
人の力で治せると言っている人が居ますが、私は無理だと思います。

相棒はかなり場所を認識しているようです。車で景色を見ていて、知らないところへ行くときはキョロキョロします。旅への渇望はないのかな~
>zebraさん (hig)
2018-10-21 04:25:20
腸骨体が折れているかどうかX線撮影することになりました。骨盤は仙椎からはずれて、傾いているだけなのか、折れて変形しているのか、わかると思います。

>azaodorokiさん (hig)
2018-10-21 04:28:36
腸骨骨折の馬はときどき診ますが、膝蓋骨上方固定を併発した馬は診たことがありません。しかし、可能性はあるだろうと思います。
過去にも内側膝蓋靭帯を切っても、後肢を曲げられなかった膝蓋骨上方固定馬を1例経験しています。あれは何だったのかいまだにわかりません。

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