馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

胎便停滞の治療2

2013-05-12 | 急性腹症

胎便停滞の治療について、Equine Neonatal Medicine から。

ひゃ~忙しさにかまけて、分娩時季がおわっちゃう~!!

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浣腸は小結腸の胎便停滞の治療の主要部である。

暖かい水で溶かした液体石鹸(例えばPalmolive)浣腸(500mlの水にティースプーン1/2杯の液体石鹸)は直腸粘膜に優しく、効果的だとされている。

市販のリン酸浣腸(例えばFleet)も用いることができるが、繰り返し使うとリン中毒の危険が増すかもしれない。

最近、アセチルシステイン含有浣腸が仔馬の胎便停滞に非常に治療効果が高いと報告されている。

アセチルシステインが胎便のムコ蛋白分子のジスルフィド結合を分離し、全体の粘度を減らすと仮説されている。

 pH7.6の4%アセチルシステインは、200mlの水に20gの重曹と8gのアセチルシステインを溶かして作る。

30mlのバルーン付きの30FrのFoley カテーテルを直腸に2.5~5cm挿入し、直腸を閉鎖するようにゆっくりとバルーンを膨らませる。

4%アセチルシステイン液を100~200ml自然落下で注腸し、30~45分置いておく。

アセチルシステイン含有浣腸は、12時間以内に78%の胎便停滞を排泄させた。

そして、中には胎便停滞が解消されるまで3回まで繰り返された。

症例によっては、浣腸の繰り返しは明らかに直腸と小結腸の粘膜の刺激を引き起こし、胎便停滞の解消に効果があっても、怒責が続いた。

この持続的な怒責により、治療が成功したのかどうか混乱するかもしれない。

 外科的介入は内科治療が成功しないときに考慮されるべきだ。

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さて、胎便停滞の浣腸にどんな液を使うべきか?

石鹸液がよく使われるようだが、どうして石鹸液なのか私にはわからない。

適度に粘膜に刺激があり、界面活性剤なので硬い胎便も溶かし易いということなのかもしれない。

さらには潤滑剤としての効果も期待しているのかもしれないが・・・・・

弱い仔馬なので粘膜に刺激がある液は避けた方が良いように思うし、

薄い石鹸液が胎便を溶かすのにさほど効果があるとは思えず、

潤滑剤としての効果を期待するならもっと他の液体を使った方が良いように思う。

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アセチルシステインは試してみたい気がするが、胎便停滞の78%が12時間以内に。というのはたいして優れた効果とも思えない。

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さて、外科手術は内科治療が成功しないときに考える。ということだが、私は胎便停滞で開腹手術すべきだったと思った症例は1例もない。

自分の症例だけでなく、毎年死んだ仔馬をたくさん剖検するが、「胎便停滞だけで死んだ。開腹手術するべきだったのではないか。」と思った剖検仔馬に出会ったことも1度もない。

さて、本の記載はどうか? は続きます。

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今日は、引退する種牡馬の去勢。

乗馬転用されて障害馬になるらしい。

芸は身を助ける。

新しい馬生に幸多からんことを願う!

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今日も曇り空で寒かった。

どうなってるんだろう。

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