馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

頚椎症による腰痿

2006-04-10 | 整形外科

P4100008  近くの河口の砂浜を散歩しているときに拾ってきた、たぶん鯨の脊椎。

たぶん左は腰椎で、右は・・・・・環椎だろうか?

鯨にしても結構大きい鯨のものだろう。いつか、調べてみようと思いながらそのままになっている。

大きな穴は脊髄の通る孔で、それが背骨の特徴だ。

               -

 Cvm いわゆる「こしふら」腰痿の馬は実に多い。生産地で馬が駄目になる原因の中で、骨折、疝痛、お産の事故、新生子の問題、とならんで「こしふら」による廃用、淘汰がある。

今の若馬の腰フラは、ほとんどが頚椎の椎孔、すなわち脊髄が通る孔が狭窄していることが原因の神経病と考えられている。

腰フラになると、頚椎のX線撮影をするのだが、極端な例だと右の写真のように、はっきりわかるほど狭窄している。

これなどは第3頚椎と第4頚椎が屈曲し、第4頚椎の頭部が椎腔へ突出し、脊髄が圧迫されているであろうことが想像できる。

脊髄が圧迫されると、脳から「肢を動かせ」という命令は伝達されるが、「今、肢が着きました」という信号がうまく帰ってこなくなる。

で、雲の上を歩くような歩様になったり、肢をひきずったり、逆に大げさに肢をあげて歩くようになる。

P4100010 左は腰痿の馬の頚椎の骨標本。椎体の大きさに比べて、椎孔が狭く、椎頭が下から椎孔へ出っ張り気味。左右の関節突起は骨軟骨症により辺縁が欠けている。

頚椎症の腰痿も、DOD;Develpmental Orthopedic Desease 成長期の整形外科的疾患 の一つと考えられている。

肢が長く、頚が長く、成長が早く、早く走れる馬だけを選抜してきたためにDODはサラブレッドに多発すると考えれられている。

しかし、重種馬にも骨軟骨症のようなDODもあるし、腰痿も発生しているようだ。

腰フラは本当に多い。欧米では頚椎の関節を固定したり、椎孔の背中側を切除して脊髄への圧迫を減らす手術も行われている。

できる限り予防すること。が、うまくいかなかったら、治療するすべも用意しておく必要があるだろうと考えてはいるのだが・・・・・・