離婚や別居で子供と会うのが難しくなった親たちが、子供と再会できるよう当事者たちの思いを込めた法律のモデル案が作られ、公表された。離婚時に共同養育計画を作成し、離婚後も両親がそろって成長にかかわることを定めたのが特徴。当事者や支援者らは、具体的な案を示すことで世論の盛り上がりを目指している。(森本昌彦)
◆法律案を公表
「子供にとっては親とつながっていることが大事で、父も母も親だという関係が続くことが必要だ」。モデル案をまとめた中央大学法科大学院教授の棚瀬孝雄弁護士(民法・司法制度論)はこう話す。
離婚後に離れて暮らす親子の面会交流の頻度は、日本では諸外国に比べて少ない。棚瀬弁護士によると、日本では月1回2時間が平均的なのに対し、米では離れて暮らす親が主張すれば、よほどのことがない限り隔週2泊3日での面会交流が認められているという。
こうした現状を変えるためにつくったのが今回のモデル案。約1年半前から当事者の意見も聞きながら作成を始め、今年1月27日の勉強会で公表した。
モデル案では、子と離れて暮らす親が定期的に子供と面会し、成長にかかわる「共同養育」を前面に打ち出している。具体的には、子供のいる夫婦が離婚する際、別居親と子供との面会交流の方法、養育費の額などを決めて裁判所に届け出る。「共同養育計画」として認可されることを経て離婚するという流れだ。
◆当事者も評価
モデル案には、現在子供と会うことができない親たちの意見も反映。当事者らでつくる「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」の代表を務める河邑肇さんは「離婚後、別居後の親子の生活をより良くする内容になっている」と評価する。
2人の子供を持つ河邑さんは平成18年3月に離婚。その際、月に1、2回は子供と面会するという文書を元妻と交わしたが、これまでに会えたのはわずか2回。現在、裁判所に子供との面会交流を求める審判を起こしている。
モデル案では、法律施行前に離婚したケースでも共同養育計画の策定を可能としており、現在子供と別居し、思うように面会ができないケースも対象となる。河邑さんは「(モデル案は)われわれにとって現実を変える手段。この案をたたき台にして、日本や世界の現状とあるべき姿について認識を広めていきたい」と期待する。
法律成立には国会議員の力が必要となるが、1月の勉強会には11人の議員が参加するなど徐々に関心が高まっている。棚瀬弁護士は「立法までの過程では反対論も出てくると思うが、反対の人とも議論をして子供のためを考えた仕組みをつくりたい」と話している。
■子供をめぐる家裁調停件数は年々増加
子供との面会を求め、全国の家庭裁判所に審判や調停を申し立てる件数は年々増えている。司法統計年報によると、平成12年度に新規に受理された審判件数は322件、調停は2406件だったが、16年度には審判が725件、調停は4556件に増加した。
その後も件数は右肩上がりで、19年度には審判883件、調停5917件、20年度では審判1020件、調停6261件に上っている。
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